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杞憂





頭が痛い。今の感情を漢字で表すなら「呆」だろうか、と考えながらグリーンは頭を抱える。

確かにここはマサラにあるオーキド家のグリーンの部屋だ。
ベッドや机など生活に必要な最低限のものしか置かれていない閑散とした部屋、入ったことがあるのはレッドとブルーくらい。

しかし、招いたつもりはないが何故か今グリーンの部屋には5人の図鑑所有者が集まっていた。

それに全員男。狭い。


「さぁて!グリーン先輩の秘密の書物はどっこかなぁっ!?」
「ああ、それなら確かに本棚の後ろに」
「姉さんが居ながら…」
「色の統一感といい配置といい、すべてが調和している!流石グリーン先輩っ!wonderful!!でも隅に埃が…」


本棚を動かそうとしているゴールド、その本棚の隙間に手を突っ込んでいるレッド、ジトリと睨み付けるシルバー、勝手に掃除を始めるルビー。


「…お前ら何しに来たんだ」


そして頭を抱えるグリーン。
すかさずレッドが答える。


「そりゃあ…」
「グリーン先輩がブルー先輩に冷たいからっスよ!まったく『ノースリーブ、秘密の誘惑』『ミニスカートの恥じらい』なんて破廉恥「黙れ」


グリーン秘蔵である一冊の薄い雑誌とDVDケースをチラつかせながらゴールドが真顔で言うと、言い終わらないうちにグリーンの裏拳がゴールドの顔面にヒットした。


「この馬鹿はどうでもいいっ!俺はアンタだから姉さんを任せたんだっ!!」
「そうだぞグリーンっ!!お前が仕事人間過ぎてブルーが俺に愚痴ってくんだよっ!!」
「実に美しくない!愛は表現してこそ美しいんですよっ!!」
「グリーン先輩はもっとブルー先輩とイチャラブするべきっスっ!!」


マシンガンの如く発せられる言葉たち。
流石のグリーンでも呆気にとられてしまう。


「……シルバー、要約しろ」
「俺の姉さんに手出しやがってマジブッ飛ばす、ってレッド先輩が」
「おまっ!?先輩を売るのかシルバーっっ!?」
「すまない、シルバーに要約させた俺が悪かった」


はぁ、と溜め息をひとつ。グリーンは頭を抱える。


「…俺にどうしろって言うんだ」
「姉さんをもっと大事にしろ」


間髪を入れずにシルバーがグリーンへと突っ掛かる。
大事にしろ、と言われてもグリーンはグリーンなりにブルーを大事にしているし今後のことも考えている。

自分は彼女をないがしろにするような奴だと思われているのだろうか、お前らの前では控えてるだけで実際はしょっちゅう2人であんなことやこんなことをしているぞ。まぁ口が裂けても言う気はないが。


「俺はブルーを大事にしてる」
「僕から見たら放置プレイにしか見えませんが?」
「黙れ発情期、だいたい俺とブルーの問題だろう」
「ブルー姉さんの問題は俺の問題でもある」


ああ言えばこう言う。正にそんな感じだ、特に姉のこととなるとシルバーの突っ掛かり具合が半端じゃない。


「同居してみるとかどうっスか!?」
「たまにはブルーを労って旅行行くとかどうだ?喜ぶんじゃないか?」
「何か贈り物をしてはどうです?cuteなブルー先輩に合うアクセサリーなど」
「あー」


グリーンは机の引き出しから部屋探しの雑誌や旅行雑誌などを数冊、濃い青色をした箱を取り出し4人の前に置く。

そして箱をパカリと開け銀色に輝くリングを見せる。


「……そういう訳だ」


特に照れる様子もなくグリーンは言葉を発する。


「あ、あめぃじんぐ…」
「……俺、ブルーからも何も聞いてないぞ」
「婚前旅行っスか…?」
「…な、な、な、な……っ!」


ばたーん!シルバーが石化したかのように後ろへと倒れた。

しかしグリーンは構わず続ける。


「まだブルーには言ってないが、ジムが一段落したら話すつもりだ。…お前らに心配されるようなことはないからさっさと帰れ、俺もブルーも愛し合ってる。まだ何かあるか?」
「な、何もないです」


グリーンが窓の外を眺めながら言い切る。
次から次へど発せられる威圧にゴールドは顔をひきつらせた。


「…そ、それじゃあグリーン、俺たち帰るよ!」
「ちゃんとシルバーは持って帰りますから!!」
「グリーン先輩!!ウェディングドレスは僕が作りますから!!下手なとこでレンタルとかしないで下さいねっ!」
「分かったからはやく帰れ」


お邪魔しましたーっ、とバタバタ帰る4人を完全に見送りグリーンは窓の方へ話し掛ける。


「おい、どこから聞いていた?」
「……"僕から見たら放置プレイにしか見えませんが"からよ、入って良い?」
「ああ」


カラカラカラ、窓をあけて部屋の中へと入る。
音も立てずに中へ入るとプリンをボールの中へ戻した。


「……ブルー、男同士の会話を聞いてどうする」
「あら、どうもしないわよ。グリーンこそあたしに言うことがあるんじゃないの?」


ブルーがニコリと満面の笑みを浮かべ、左手の薬指を見せる。


「はやくしないと誰かにブルーちゃんのここ、とられちゃうわよ?」
「……話を聞いてたなら分かるだろう。ジムが落ち着いたらだ」
「もぉーっ、待てないわよこの仕事馬鹿!」


罵るブルーだが、その顔はいつになく嬉しそうな表情をしている。グリーンもまたいつもの鋭さはどこかへいってしまったかのように穏やかな表情を浮かべ、一言悪態をつく。


「まったく…うるさい女だ」



杞憂
(…なんつーか、俺たち必要なかったな)
(まったくッスね)







椿さんから頂きました!
やっぱりCP前提の○○トークが大好きです。そんでもってこんな素晴らしすぎるボーイズトークを頂いてしまいました!
素で愛を囁ける兄さん凄い。




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