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信じてみようよ


 

久しぶりに、故郷へと寄ってみた。
いつ来ても変わらない、このマサラの風景があたしはだいすきである。

( みんなも、ね! )

久しぶりに感じるマサラの空気に酔いしれながら、あたしはだいすきなポケモンたちを外へと放った。みんなにもこれを感じて欲しい。そう思って放ったボールたちから、元気よく飛び出したみんなも嬉しそうに笑っている。楽しそうにはしゃいでいる。

それを見て、あたしの心はまた少し、いい気分になった。


「ん?どうしたの?」


自然と笑顔になる中、カメちゃんがある一点をずっと見つめていた。何、どうしたの、と聞いても顔を動かすことなく、ただ一点を見つめていた。けれど、その先にはただ道しかなく、何もなかった。本当にどうしたの?と心配するようにカメちゃんを眺めていると、突然カメちゃんが鳴き声をあげた。

何事かと思い、また視線の先を見つめると、そこには人の姿があった。


「グリー、ン?」


遠くてきちんと姿は確認できていない。けれど、あたしにはわかる。あれは絶対グリーンだ!
高鳴る胸を押さえることができず、カメちゃんたちを全てボールに戻すと、あたしは駆け出していた。


「グリーン!!」


久しぶりねー!と大きく手を振りながら向かうと、やっと気づいたのか、グリーンは小さく笑みを作っていた。
ああ、久しぶりに見るグリーンの笑顔。懐かしくて、あの頃を思い出して、少し泣きそうになった。

以前はあの笑顔を見ているのが当たり前のような生活だったのに( と言っても旅をしているときもグリーンはなかなか笑わなかったけれど )、最近は全く見れていなかったため、とても嬉しかった。


「戻ってきていたのか?」

「ええ、さっきね」

「何かあったのか?」

「え、」


瞬間、ギクリ、とした。まさか久しぶりの挨拶からこんなにも早く核心を突いてくる質問をされるとは思わなかった。

今回帰ってきた理由。
そんなもの、グリーンに会いたかっただけである。本当に、ただそれだけである。
けれど、そんなこと言えるはずもなく。
今回帰ってきた理由にそれ以外のものはないのだけれど、これを本人に伝えることはできない。

しどろもどろするあたしをグリーンは不思議そうに見ていた。


「乙女の秘密、ってところかしら」

「なんだそれは」


フ、と小さく笑うグリーン。それにまたあたしは見とれてしまった。

貴方に会いたかったのよ、なんて、たったこれだけの言葉なのに、うまく伝えられる自信はなかった。まず、声にならない。
緊張でいっぱいで、言葉にすることができなかった。
ただでさえ久しぶりに会い、以前よりもはるかに大人になった、かっこよくなったグリーンを目の前にそんなことを言えるはずがない。


「ほんと、罪な人よね」

「?何か言ったか?」

「いいえ、別になにも」


帰るころには教えてあげるわ、と小さく呟くと、グリーンからはまた笑顔が見れた。



それから少しの間、そこでグリーンと会話をした。今までの話を少し聞かせてあげて、グリーンの話も少しだけ聞いた。

けれど、なにせグリーンはお忙しいジムリーダー様なので、すぐにまたジムへと戻らないといけない時間になってしまった。行って欲しくない、もっと一緒にいたい、なんて言えない願いを心にしまい、あたしはただ笑顔でリザードンの背中に乗る彼を見ていた。


「ブルー、」

「何?」

「オレはお前に会いたかった。だから今日、会えて嬉しかった。」

「え、」

「…行くぞ」


そういうや否や、グリーンはすぐに空へと飛び立ってしまった。

( なによ…、 )

これじゃあ完璧にいい逃げである。本人がいなくなったため、あたしは何も言えずにその場で呆然と立ち尽くすことしかできない。

( ほんっと、罪な人…ブルーちゃん自惚れちゃうわよ )

真っ赤になった顔を隠すことなく、空へと消えていくグリーンの姿をじっと見つめた。






( “もしかしたら”を馬鹿みたいに信じていようよ )




千紘さんからフリリクで頂きました。
今も昔も変わらず素敵な文章をお書きになる…!
有難うございました!





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