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異なる僕らの想い



俺は読書、ブルーも雑誌を読んでいて、俺と同じ顔のあいつはイーブイの毛繕い。

俺と双子の弟であるリョクヤが暇で、3人で居るのは極稀なこと。
とは言っても、同じ部屋に居るだけで各々好きにしているのだが。


「……よしっ、イーブイ完璧!どうだブルー、見ろ俺の腕前を!」

「あ、すごーい!イーブイ可愛い!綺麗になってる!」

「たりめーだろ、俺のイーブイは元々可愛いし綺麗なんだよ!それが俺の毛繕いによって更に磨かれるんだ!」

「はいはい、調子良いんだから。うん、でも本当にイーブイ可愛いわ。」

「へへっ、ブルーが可愛いってさイーブイ!良かったなー!」


イーブイをボールに戻してからも楽しそうに話す2人に、苛つく自分が居た。

正直本の内容も頭に入ってこない。リョクヤが姉さんに毛繕いを教えて貰っていることは知っていたが、まさかコンテストにスカウトされる程だとは思っていなかった。

昔から器用な奴だったしな、と心のどこかで納得せざるを得ない。


「次はどいつにしてやろっかなー……あ、ブルー!」

「は?なによ。」

「お前さ、この前違う髪型もしたいって言ってたじゃん?してやるからちょっとこい。」


なんだそれ、聞いてないぞ俺は。
ブルー、断れ嫌ならはっきり断ってくれ。


「いいわよ、別に自分でもそれなりには出来るし…」

「あーあ、残念だなー。俺ならその雑誌に載ってる髪型、全部かんっぺきに再現出来るのになー。」

「嫌なんて言ってないじゃない!リョクヤ、お願いっ!」

「ふふん、素直でよろしい!」


つられるな馬鹿。
俺がそう思うのも知らず、ブルーはリョクヤが座っているソファーに移動し、当たり前のようにリョクヤの足の間に背を向けて嬉しそうな笑顔で座る。

なんだこの光景、気に食わない。
これじゃまるで、2人が恋人同士に見える。

そう思っていると、リョクヤは俺を見た。それはもう最高にむかつく笑顔で。

何時だったか、レッドに「お前の弟可愛くていいな」と羨ましそうに言われたことを思い出した。
勘違いだレッド、お前の無口で無表情で俺様な弟とはまた違うが、俺の弟にも可愛げなんてもう残っていない。


「んじゃ、まずどれから……あれ、何だよ兄ちゃん。」


2人に近付いて、リョクヤから雑誌を奪う。妙に勝ち誇ったような表情も苛つく。


「……手伝う。」

「卵焼きすらまともに焼けない兄ちゃんの手伝いなんて要らねー。」


解ってる。お前が姉さんと同じくらい料理を始めとした家事全般が得意なのも、俺は家事が全く駄目なことも解ってる。
だが、引き下がったら俺は確実にこいつに負ける。弟に負ける兄なんて格好つかない。


「……邪魔すんなよ、グリーンの癖に生意気だぜ。」

「それはこっちの台詞だと思うがな、リョクヤ。」

「うるせーよシスコン。」


お互い、良いとは言えない目付きがより鋭くなっているのだろう。
俺は獲物を獲るのを邪魔された獣のような目で睨まれながら、俺もあんな顔をしているのだろうかと思う。
だとしたら知らない方が良い。自分が今どんな顔をしているか余計知りたくなくなる。


「…………同じ顔。」

「「は?」」

「あははっ、やっぱりあんた達そっくりね!声まですごく似てる!」


俺達が睨み合っている理由を理解していないブルーは、楽しそうに笑う。
その笑顔に戦意を無くした俺達は、同時にため息をついた。

ため息まで同じ、と笑うブルーに向かい、俺の「うるさい女だな」と、弟の「うるせー女だな」が同時に違う口から発されるのは、ほんの数秒後の話。



白石由様から頂きました!
兄弟で姉さん争奪合戦とか萌え死ねます。
ゲーム版兄さんがスペ兄さんの弟って設定好きです。






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