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甘い愛を囁いて



そういえば、あたしはグリーンに可愛いって言ってもらったことがない。

別にあたしが世界一可愛い!なんて言う訳じゃないけど、少しだけ不安になる。

だって、グリーンの周りには沢山可愛い人や綺麗な人がいつも居るし。
それに、「一番綺麗だと思う女の人は?」ってグリーンに聞いたら、絶対「姉さん」って返ってくることは目に見えていた。自分で言っといて何だけどむかつく。


「…あーあ、あたしって健気。」

「………は?」

「お姉さん大好きでお姉さん至上主義で、自覚なしでモテるあんたの彼女やってるなんてあたし絶対健気だわ。」

「……前半の台詞は、お前の弟に言ってやれ。」


はぁ、とため息をつくとグリーンにもため息をつかれる。
なによ、乙女心がなんにも解ってない鈍感堅物男の癖に。


「ブルー、何でそんなに不機嫌なんだ。」

「別に。」

「…俺が何をした。」

「……むしろ何もしてないからむかつくのよ、ばーか。」


鈍感、ばか。
言いながらふい、っとグリーンに背を向けて、違う方向を見て座る。

後ろで、書類を整理しているグリーンが立ち上がる音が聞こえた。
なによ、今のブルーちゃんはそう簡単に振り向いてあげないんだからね。


「……ブルー。」

「………………。」


だめ、まだ何も言ってあげない。


「……ブルー…。」

「………………。」


そんな風にちょっと格好良い声で呼んだって、動じないんだから。


「…………………ブルー。」

「ひぁ、っ……!?」


黙りを決め込もうとした時、急に後ろから抱きすくめられた。
耳元で、グリーンの低めでどこか色っぽくも感じる声で名前を囁かれる。

突然すぎてなんか変な声が出ちゃうし、グリーンはちょっと笑ってるし。

やだ、あたしが負けたみたいじゃないのよ。


「なっ、何よばかっ!」

「……そんな風に拗ねるな。」

「拗ねてないっ!」

「……我慢出来なくなる。」

「………はぁ?」


さっきより強く抱き締められて、グリーンらしくもない態度に首を傾げる。
あたしの様子を見ると、グリーンまたため息をついた。


「お前な……。」

「何よ、グリーン?」

「………可愛すぎだ、馬鹿。」

「………………………え?」


言うだけ言って、グリーンはあたしからぱっと離れてまたため息をつく。
待って、今、何て?

仕事に戻ろうと背を向けるグリーンに、今度はあたしから抱きついた。


「ま、待ってグリーン、もう一回!」

「二回も言ってたまるか!」

「何で!?減るもんじゃないでしょ、お願いっ、もう一回!」

「断る!」

「何よっ、けち鈍感堅物ばかー!」


ああどうしよう、にやけるのが止まらない!
グリーンに悪態をつきながら、あたしはずっと笑顔だった。

だって、あのグリーンがあたしに可愛いなんて言うなんて夢みたいだわ!


笑うな、なんてあたしを睨んできたグリーンは赤くなっていたけど、負けないくらいあたしの顔も熱い。

だって夢みたいなんだもの、と言うといつもの「うるさい女だ」が聞こえて、唇を塞がれた。


「……今日のグリーン、素直。」

「…お前もな。」


あたしがまた笑ってしまうと、グリーンにもう一度口付けられる。

本当は可愛いってもう一回言って欲しかったけど、今はこれで我慢してあげようかな。

そう考えてちょっと笑いながら、あたしはグリーンに抱きつく力をぎゅっと強くした。




白石由様から頂きました!
兄さんは言葉より行動派で。








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