旧 | ナノ

望むのは快楽


「駄目よ」

部屋から出ようとドアノブに伸ばしかけた手を止められた。
何故だ、と振り返ると彼女と目が合う。
瞬間感じた違和感。
その違和感の原因はすぐ判った。

「お前、」

先程まで真っ青な顔をしていた彼女が、今はけろりとしている。
具合が悪いと言って部屋から抜けてきた筈だが。

「…仮病か」
「良いじゃない」

するり、と腕を首に回されて引き寄せられた。
目の前で妖艶な笑みを浮かべている彼女の唇が紡いだ言葉にオレは固まることになる。

「貴方と、二人っきりになりたかったんだもの」

そしてそのまま唇を重ねられる。
刹那、ふわりと香る酒の匂い。
鼻にかかったような甘ったるい吐息が耳朶を撫でた。
その度にゾクリ、と何かが背中を駆け上がる。
やっと解放されると名残惜し気に彼女はオレから身体を離す。
中途半端に煽られて、身体の中で熱が燻っていた。
しかし、今日の彼女は煽ってお終い、という気分では無かったらしい。
くるりとオレに背中を向ける。

「帯、解いてくれない?」

背中を指しながらそう言う彼女に、オレはくらくらした。
断れる雰囲気ではない、だろうな。
軽い頭痛を覚えつつもきっちりと締められたそれを解く為に彼女に近付く。

白い首筋に何時もは見えないうなじ。其処から漂う微かな甘い馨香。

それらはオレの理性を粉々にするには十分過ぎた。


望むのは快楽


オレを酔わせたのは酒か、それとも。




タイトル→THREE WISHES様。

▽Dearestの蓮様へ。相互記念。
↓持帰用にどうぞ。






prev next