旧 | ナノ

小さい秋見つけた




其処に足を踏み入れた途端視界が明るく染まる。
赤や橙、黄色に茶色。
暗い色に慣れた己の瞳には少し眩し過ぎる色合いだった。

「うわー、綺麗だね!」

少し先で二つ結びの少女がボールから出したメガニウムに話しかけている。
暖色の中でその緑色は良く目立った。
その更に先では帽子を被った爆発頭が落ち葉を集めている。
何となく、嫌な予感。

「おいゴール、」

名前を呼び終わる前に枯葉の山に火が点いた。
やったのはいつの間に出したのか奴の相棒。

「何やってるのよゴールド!」
「何って、焼き芋だけど」

即飛んだクリスの叱責にゴールドは平然とそう返す。
相変わらず突拍子の無い行動に頭を抱えるクリスにオレは溜息を吐いた。

「諦めろ、あの馬鹿には何を言っても無駄だ」
「何をぅ!?」

それが気に入らなかったのかつかつかと歩み寄ってきて胸倉を掴まれる。
それにムッとしてこちらも掴み返すと、クリスがおろおろし始めた。

「ちょっと、二人共止め…」

中途半端なところで途切れた言葉を不思議に思って彼女の方を向く。
向かいの男も同じように思ったのか、同じタイミングでそちらを向いた。
問題の彼女というと。

「…何を笑っている?」

何故か笑いを堪えていた。

「だって、二人の頭の上」

とことこと近寄ってきてオレ達の頭に手を伸ばす。
引っ込められた手に握られていたのは、紅葉と銀杏の葉。

「ゴールドの目とシルバーの髪の色と同じじゃない」

そう言って微笑む彼女に何とも言えなくなってお互いに掴んでいた手を離した。

「…悪い」
「…あぁ」

しかしそこで再び問題が。

「あぁ!」
「っ何だよ!?」

彼女の指差す方向には燃え盛る焚き火、どころか最早火の塊。

「わーっオレの焼き芋!!」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!?水!」

火を囲んで慌てる二人の後姿にもう一つ溜息を吐いて、オレは腰のボールからオーダイルを呼び出した。


小さい秋見つけた


「芋…」
「というか消し炭だな」




ピエロの涙の藍里へ。相互リンク有難う!





prev next