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メルトダウン




冬が近付き夜が明けるのが遅くなったとはいえ、既に薄らと空が青くなり始める時間。
いつもならとうの昔に空になっている筈の寝台も今日は未だ温もりを宿している。
やれやれと溜息を吐いてあたしはその温度の原因を揺さ振った。

「グリーン!いい加減起きて!」

ある程度声は張ったつもりだったが、膨らみはもぞもぞと動いて再び丸くなる。
赤い瞳を持つ同期や別地方の後輩達は彼を完璧人間だと思い込んでいるらしいが、それは大きな間違いである。
実の所、彼は非常に寝起きが悪い。完璧に見えるのはオンオフの切り替えをきっちりしているからだ。
つまり、休日の今日は未だ夢と現の間をうろついている。
しかし彼女という立場にいる身としては普段放っておかれている分休日位構って欲しいというのが本音。
それを声高に叫びながらブランケットの山を叩いていると、隙間から腕が伸びてきてそのまま引きずり込まれた。

「ちょ、何!?」

突然真っ暗になった視界に少々パニックになっているあたしをぎゅうと抱き締める腕が二本。
誰のものだなんて判りきっていた。だからこそ更にパニックに陥る。
そんなあたしの耳に本当に小さな、呟くような声が聞こえた。

「…折角の休みなら、お前とゆっくりしたい」

この状況でそんな事を言われて計らずも熱が顔に集まってくる。だが直ぐに穏やかな寝息が聞こえてきた。
どうやら自分は恥ずかしい勘違いをしていたらしい。更に顔が熱くなった。
そうさせた相手はそんな事知りもせず眠り続けている。彼の体温と身体に纏わり付く腕の感触が酷く心地良い。
そういえば最後にこうされたのは何時だったか。


メルトダウン


こうして毎度流されるアタシは彼に甘過ぎるのだろうなと溶けかけた意識の中でふと思った。







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