痛み分け
無音空間というのはこんなにも居心地の悪いものだったかと頭の何処かで考える。 どちらかというと賑やかな方が好きなので普段なら自分から話題をふるなり何なりして会話を盛り上げる(というか、今迄誰も喋らない状況になったことは無いに等しい)のだが、流石に今この場でそんな行動に出る勇気は無い。 何故か。目の前で手を動かしている人物の機嫌がよろしくないからだ。
「怒ってる?」 「怒ってる」
恐々訪ねた質問にぴしゃりとそう返され、再び黙り込む。 穏やかな人を怒らせるなとは本当なんだな、と己の足に巻かれていく包帯を見ながらそんな事を思った。
「…痛いんだ」
ぽつりと零された言葉に意識が現実に戻ってくる。 視界に入ったのは泣き出しそうな表情をした彼。
「アイリスが怪我してるのを見ると、僕も痛いんだよ」
緑の瞳があたしの手足に向けられる。 褐色の肌の上の真新しい白に目がちかちかした。確かに、痛い、かも。
「だから、」
あんまり無茶しないで、と言いながらあたしの顔に絆創膏をぺたりと貼る彼の指は冷たい。
痛み分け
この時あたしは初めて彼に素直にごめんなさいと言うことが出来た。
▽LOLLIPOP☆STARの李南様へ。遅くなって申し訳ありません…! 改めて相互有難うございました!
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