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過去から今、今から未来




「オレは育て屋、クリスは捕獲の専門家。で、」

お前、とゴールドが言う。
人を指さすなと習わなかったのかこいつは。
そんな言葉を飲み込んで聞き返す。

「…何の話だ」
「いや、オレら将来何になるかなーと思って」

そう言われてやっと状況が理解出来た。
確かに二人のトレーナーとしての能力なら有り得ない話ではない。
というか、クリスに至っては既に職業として成り立っているし。
同時に指をさされた意味も判った。
二人に比べて、オレ自身の能力は使い道が限定されている。

「お前よぉ、何かなりてぇモンとかねぇの?」

流石に悪の王子とかだったら困るけど、とケラケラ笑うバカ面を一発殴った。
安心しろ、それは何が何でも有り得ん。

「シルバーだったら、ジムリーダーとか似合いそうよね」

何処となくグリーンさんと似てるし、とぽつりとクリスが呟いた。
理由が多少気に食わなかったが、ジムリーダーという職業に興味が無いわけではなかった。
しかし、自分はジムリーダーになれるような人柄ではない。
とてもじゃないが、人に胸を張って語れる人生を送ってこなかった。
だからムリだ、と首を振ると、床に転がったまま話を聞いていたゴールドが急に立ち上がる。

「あーぁ、本っ当後ろ向きだなお前」

その言葉にカチンと来たが、否定は出来ないので無言で睨みつける。
それにも怯まずにゴールドは金色の瞳をオレに向けた。

「何もかんも過去の話だろ?大体、その過去だってお前が悪いわけじゃねぇじゃんか」
「だが、オレはワニノコを盗んだ」

腰のボールに収まっている今は最終形態になった手持ちと出会った頃を思い出す。
すると今まで大人しく聞いていたクリスが不意にオレのボールを奪い、投げた。

「おい!」

ぱちんと光が弾け、水色の鰐が姿を表す。
オーダイルを撫でながらクリスが言った。

「シルバーが本当に悪人なら、ポケモンは此処まで懐かないと思うけど?」

ねぇ、とオーダイルに笑いかけるとオーダイルは視線をオレに向ける。
その瞳には、確かに信頼の光があった。
それを見た瞬間、ぐずぐずと悩んでいた自分が馬鹿らしくなる。





「シルバーがジムリーダーになったら水タイプのエキスパートかなぁ?」
「水系多いもんな、あいつの手持ち」

友人達のそんな会話を聞いていたら、ジムリーダーも良いかもしれないとふと思ってしまった。





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