ベクトルは同じ向きを指す
「あら?」
久しぶりに戻った故郷には久しぶりに見る顔があった。 ぶんぶんと手を振ると、向こうも気づいたのか軽く手を上げる。
「珍しいわね、レッドがマサラに戻ってるなんて」
普段呼ばないと戻ってこないくせに、と怒った様に言ってやると、目の前の友人は困ったように笑った。 何かあったのかと思い尋ねるが、「別に何も?」という返事が返ってきた。 何だ、心配して損したじゃない。
「ただ、」
レッドは名前と同じ色の瞳を聳え立つ山の向こうに落ちかかったオレンジ色の塊に向けて呟く。
「帰ってきたくなったから」
その言葉を聞いて知らず知らずの内に微笑が零れた。 するとブルーは?と聞き返される。
「あたしも、帰ってきたくなったの」
嘘ではなかった。 旅をしていても突然帰りたくなる時がある。 そして今日がその時だった。
そう思わせる何かが、マサラには有る。
「でも帰りたくなった日が一緒だなんて、凄い偶然だな」 「そうねぇ…」
もしかしたらグリーンも帰ってくるかもね。 そう言うとそしたら偶然じゃなくなるな、と返された。
ベクトルは同じ向きを指す
トキワから戻ってきたグリーンを見て、レッドと顔を見合わせて笑ったのはそれから数分後だった。
紫陽花園のユキムラ様へ。相互記念。 タイトル:THREE WISHES様
お持帰り用にどうぞ。
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