ボーダーラインを飛び越えた
大騒ぎからの帰り道。 赤い瞳の友達は黄色い少女を送っていって此処には居ない。 並んで歩く本日の主役はちょっと疲れた顔をしていたけど、あたしはお構い無しに喋った。
「ジョウトの皆も久しぶりだったなぁー」 「そうだな」 「そういえばホウエンの子達とも大分会ってないわよね」 「…そうだな」 「クリスマスには皆集まれるかしら!」 「…」
あれ、返事が無い。というか隣に居ない! きょろきょろと見回すと、数メートル後ろに彼は立っていた。 どうしたのと駆け寄るが、返事は無い。 怒らせたのだろうかと不安に駆られていると、不意に名前を呼ばれた。
「ブルー」 「何…え?」
ぽとりと掌に落とされた小さな箱。 箱というよりケースのようだ。
「…今日あたしの誕生日じゃないわよ?」 「知っている」
首を傾げながらそれを開けると、中には銀色の指輪が月光を受けて煌いている。 驚いて視線を上げると、真剣な深緑に貫かれた。
「オレと、」
ボーダーラインを飛び越えた
こくりと頷くと、冷たい感覚が薬指を包む。 ぼやけていく視界の中で若干赤い顔をした彼が笑った気がした。
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