Rainy Blue
「うーん、今日も酷い降りね…」
窓越しに外を眺めていたブルーが呟いた。 何故此処に居るんだという質問は敢えてしないことにする。 代わりに溜息を一つ吐いておいた。 そんな遠回しな皮肉が彼女に通じるわけが無く、これじゃもう暫くは部屋干しね、なんて現実的な悩みを口にしている。 再びノートにシャーペンを走らせ始めると、不意にブルーが質問をぶつけてきた。
「グリーンは、雨嫌い?」 「…好きではないな」
視線を上げずに机の向こうの彼女に返事を返す。 そもそも雨が好きな奴なんているのだろうかという疑問が頭に浮かんだが、それは内心に留めておいた。
「あたしは、結構好きよ」
…早くも疑問が解消されてしまった。 返事を返さないオレにブルーは一方的に話し始める。
「植物が良く育つし、水ポケモンたちも喜ぶじゃない?カメちゃんなんてレッドのフッシーと毎日外で遊んでるわよ」 「それはリザードンには無理だな」
そんなことさせたら生命の危機だ、とオレが言うのにブルーはくすくす笑っていた。
「それから、」
ノートのページを捲った時、ふっと机に影が落ちた。 目の前に彼女が居る。 その程度顔を上げずとも予想出来た。 しかし、その次に聞こえる言葉の内容は予想外だった。
「こうやって、グリーンと一緒に居られる時間が増えるじゃない?」
ポキン、と軽い音がした。
「あら、動揺した?」
楽しそうに言うブルーに、オレは無言のままシャーペンの頭を二回ノックした。
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