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寂しがり屋のブルー


先程から部屋を支配するのは静寂。
時折彼の指が紙をめくる音だけが耳についた。

「ねー」
「…」
「暇なんだけど」
「…」

何を言っても紙をめくる速度は変わらず、視線が自分に向くことは無い。
可愛い彼女が隣に居るのに、何て態度かしら。
怒りを込めてソファの背凭れに倒れ込む。
ばふっと埃っぽい音がした。

少しは怒るかと思えば、先程と変わらず無反応。
ここまでくると何か悲しくなってくる。

あたし、本当に愛されてるの?

「好きって言って」
「…」
「抱き締めて」
「…」
「…キスして」
「…」

あたしの願いは沈黙に溶けて消えた。
次第に視界が歪んでくる。
見られないように俯こうとした瞬間、ふと影が落ちた。

「え…」

視線を上げたのと同時に、最後の願いが叶えられた。
すっかりお馴染みになった苦い香りが鼻を掠めていく。
それが離れてから数秒、やっと思考能力が戻ってきた。

「な、な、なな…」

舌が縺れて巧く喋れない。
でも言いたいことは伝わったらしい。
視線の合った彼が一言。

「気まぐれ」

それだけ言うと再び本に視線を戻してしまった。
完全に脳内パニックに陥ってしまったあたしは何も言い返せずに、唯ひたすら顔の熱が収まるのを待つしかなかった。



さっき泣いた青が、もう笑った



それでも、酷く嬉しいと感じてしまうのは何故だろう。



相互記念。からんと様へ。遅くなりまくってごめんなさい(土下座
タイトル→monica様







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