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縮まらない距離


判ってた、筈だった。

「きゃー!コレ可愛いー!」

雑音の中に馴染みのある声を聞き、振り返る。
そこには思った通りの人物が居た。

「ね、」

姉さん、と呼びかけて、止める。
その横にも良く見知った顔があったから。

「ねぇ見て見てグリーン!」

姉さんが嬉しそうに隣の男に話しかける。
男は煩い女だ、と悪態を吐きながらも何時もの様子からは考えられない程穏やかな表情をしていた。

(…やっぱり、)

姉さんにとって自分は唯の弟でしかないのだと改めて突き付けられたような気分になる。
ぼんやりとした頭で二人を眺めていると一瞬鋭い瞳がこちらを向いたような気がして、思わずその場から逃げるようにして走り出していた。


どの位走っただろう。
気付けば賑やかな塊からかなり遠ざかっている。
結構走った筈なのに呼吸は自分でも驚く程落ち着いていた。

(…空が、暗い)

そう心の中で呟いた瞬間、ぽつりと頬に雫が落ちた。


▽Blue?Magicの梅凪様へ。相互有難うございました!
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