朱い水:SIDE-T

SIDE-T





「泉水んちって、変じゃない?」


「………」




そう言われたのは中一の夏。


変、の意味がわからなくて、何かと俺にちょっかいを出してくるクラスメイトをじっと見る。
今じゃ名前も顔も覚えていない。





折角の休み時間に俺の席まで来て何言ってんだ。
本音。


言わないけど。



座っている俺は必然的にそいつを見上げる格好になる。
ザワつく教室は俺達の所だけ変な空気が漂っている。




「またあいつ泉水くんにつっかかってるよ」
「ほんとバカよね、泉水くんのほうがカッコイイしなんでも出来るからって妬んじゃって」
「でも全く相手にしてない泉水くんもカッコイイよね」




聞こえたか、聞こえなかったか。

いや、聞こえたんだろうな。




「おっ…お前!マザコンなんだろ!気持ち悪い」


「マザコン?」


「はっ!マザコンの意味も知らねーの?父親の事が好きな気持ち悪い人間のことだよ!」


「それを言うならファザコンだろ。マザコンが母親コンプレックスで、ファザコンが父親コンプレックス。俺母親いないもん」


「っ………!!」




クスクスクス



笑い声がこいつをさらに怒らせるわけで。





「俺知ってんだぜ!遊びに誘っても来ない理由、父親に甘えたいから外出しないんだってな!」


「………」



まぁ、誇張されてるけど間違ってはいない。


「否定しねぇ!ははっ!やっぱファ、ファザコン…?じゃねーか!」



使い慣れていない言葉をクラス全員に聞こえるように吐き出すと、腕を組んでまるで俺に勝ったかのように見下ろした。


正直、うざい。




俺ははぁ、と大きくため息をつくと、机に肘をついて頬をのせせ怠そうにそいつを見上げた。



「うち父子家庭で一人っ子だから、家事とか色々する事あるからあんま時間ないだけだよ」


「ふ、ふしかてい?」


「………」




はぁ。



今思えばなんて生意気な中一だって思うけど、家事を分担してるのは本当だし、普段仕事で忙しい父さんの休みの日ぐらい、こんな馬鹿な奴といるより父さんと一緒にいたかった。




「凄いよねぇ、泉水くん。料理もしてるんでしょ?」


「あ、うん」



女子達がやって来た。
めんどくさい。


「なのに頭はいいし運動も出来るし。ほんとうちのクラスで1番かっこいいよねー」


そう言いながら女の子は俺につっかかってきた男をチラリと見る。

女って、怖い。



「でも全然偉ぶらないし、カッコイイー」


「………」




声を揃えてカッコイイと言われても…。
やっぱ女は苦手だ。


俺の褒められて萎縮する性格は、こいつらのせいじゃないか?






その日からつっかかってきた奴は俺に話し掛けなくなった。
後で聞いた話だけど、そいつが好きな女の子が俺を好きだと言ったらしい。
とばっちり。








それにしても、変……か。




考えた事もなかったから、ちょっと胸に引っ掛かる。



「なぁ、聡(さとし)」


「ん?」



ある日の放課後、幼なじみの黒川(くろかわ)聡と一緒に帰っていた。
やっぱり気になって、聞いてみる。




「俺んちって変?」


「は?」



住宅街の道を二人で歩き、夕方だというのにまだまだ暑い太陽を見上げる。

聡は俺の質問を聞き返すと、冗談ではなく本気だとわかったのか一度咳ばらいをした。



「変て?」


「ファザコンで気持ち悪いって言われた」


「あー……」



否定もせず、肯定もせず。
まぁつまり肯定なんだろうな。


何か言葉を探しているようで、濁したまま歩き続ける。

聡の家が見えて来た。
トボトボ靴を鳴らしながら歩くけれど、まだ聡は喋らなくて。

答えにくいこと聞いたかな。
ごめんと謝ろうとしたら急にこっちを向いた。

驚き思わず息を飲む。




「気持ち悪いとは思わないよ。仲が良いレベルだと思う」


「……そうなんかなー」


「智希はお父さん好き?」


「うん」


「即答…。ま、お前んち結構特殊だしさ。それが父親とヤりたいとかなら変だけどー」



ケラケラと笑う。



「……ヤりたい?」




聡はありえない言葉を発しただけだと思う。
でも俺にはその言葉が引っ掛かり聞き返してしまった。




「え、うん……。父親とエッチしたいって思うのは流石に…な」



サラっと笑って聞き流すと思ったのだろう、聡はやや冷や汗をかきながらまた言葉を濁す。

すると聡の家についた。



「あ、智希……」


「ん?」



いつも通り家についたから軽く挨拶をして別れようとした。
しかし聡は俺を引き止めた。

いつの間にか、聡の方が暗い顔をしている。
やばい。


「あの…ごめん俺お前の役に立てなくて」


「あーいやいや。そんな事ないよ。聞いてもらいたかっただけ。気持ち悪いって言われて腹がたったから、さ」


「そっ、か」


「………」



聡はいい奴なんだけど、ちょっとめんどくさい。



「じゃあな」


「あ、あぁ」



でもまだ少し心配そうにしていて、中々家に入ろうしない。

めんどくさい。

はぁと溜息を付きながら足早に家路に着いた。










その時はまだ本当に自分がファザコンであることも、父親に執着している事も異常だと思っていなかった。

確かに中学に上がった時、別にいらないって言ったのに一人部屋を与えられ、ずっと一緒に入っていた風呂も一人で入りなさいって言われた。


俺は父さんと一緒にいることが当たり前だったから、同じ家といえど離れることに違和感を感じるんだ。

でも流石に小6までずっと父さんと一緒に風呂に入るのは変わってるって自覚があるけど。


うちは父子家庭だから。
母さんに甘えたい気持ちが全て父さんにいっただけだと思った。
実際、母親が欲しいと思ったことないし。


いつも父さんが俺を満たしてくれていた。




でもなんだろう。
何かが引っ掛かる。

何か。













「明日の日曜日、どっか行こうか。やっと休み取れたんだ」


「仕事落ち着いたの?」



俺が大好きな時間。
父さんと夕食の時間。


「やっとー。ほんと今週は地獄だったよ。ごめんなー授業参観行けなくて」


箸を置いて肩を落とす。
みそ汁が湯気を出して宙に舞う中、俺はクスリと笑いご飯を口に入れた。



「だから、授業参観ぐらい気にしてないって」


「次は行くよ」


「……ん」



父さんは絶対学校行事に参加してくれる。
小4の時38度の熱があるのに運動会に来た時は流石に怒ったけど。



片親だからって寂しい思いはさせたくないんだ。
沙希の分も愛してあげたいから。



前、父さんが祖父ちゃんに言っていた。




涙が、出た。













大切な、人。

世界一、大好きな人。






その時はそれ以上は感じなかった。
それ以上を知らなかった。



でも、聡の言葉がどうしても気になる。




「で、どこ行く?」


「へっ?」



眉間にシワを寄せながらモグモグご飯を食べていると、急に父さんに声をかけられ思わずだらしない顔になってしまった。
父さんは少しムっとしながらまた箸を置き俺を見る。



「明日。仕事休みだからどっか連れてってやるぞ、って」


「……あぁ」


さっきの続きか。



「んー…」


じゃがいもの煮付けを箸に取りゆっくり口に含んだ。
目を閉じる。


「買い物行く?最近服とか買ってあげてなかったろ」


父さんは麦茶を二口飲み込みふぅと一息つく。
再び箸を持つと同じくじゃがいもの煮付けを口に含んだ。



「や、いいや。折角の休みなんだから一日家でゴロゴロってのもいいんじゃない?」


最後のご飯を飲み込むと、ニコリと笑って提案した。
でも父さんは不服そうだ。



「またそんな事言うー。ほんとにどこでも連れてってやるぞ?」


「じゃあ来週連れてってよ。今週はゆっくりしよ」


「………」




まだ、不服そう。




「………じゃあさ、晩御飯どっか食べに行きたい」


「晩御飯?」


「うん」


「……よし!じゃあうまい店ネットで探しとく!」


「うん」





父親らしくない…と、思われるだろうな。
でも俺には関係無い。
むしろ父さんとは親子というより、対人間として、男として接したかったし、接してほしかった。










次の日。
朝起きて朝食を作っていると、ボサボサ髪の父さんが起きてきた。


「おはよー」


「はよー」



まだ眠いようで、目を擦りながら冷蔵庫を開ける。


「まだ寝てたらー」


「んー。折角飯作ってくれてるし、食べてからもう一眠りする」


「んー」


冷蔵庫から牛乳を取り出しコップに注ぐと、グイと一気に飲み干しプハーと叫ぶ。
口端には牛乳の痕。



可愛い。


ん?

可愛い?




「もう出来る?」


「えっあっ、うん。あとはみそ汁だけ」


「んー」




なんだろう。
見慣れているはずなのに、父さんの仕種を見て微笑んでしまった。


実の父親に可愛いは…ちょっと…な。



また引っ掛かるものがあったけど、でも深く考えず火を止めみそ汁を茶碗に移した。













「ご馳走さまー」


「あ、いいよ洗いもん。今日は俺がやるよ」


「え、でも」


「今週はずっと終電で帰ってたしさ、大変だったんだろ?ほんと今日は一日体休めなって」


「智…」




食器を洗うのは父さんだけど、今日ぐらいゆっくりさせてあげたかった。
片付けようとする父さんの腕を掴み俺が動く。


父さんは嬉しそうにニコリと笑うと、立ち上がり俺の頭を撫でた。



「ありがとう」


「……ん」



目の高さが同じぐらいになったな。
あともうちょっとで追い付く。


俺が大きくなったら、父さんを撫でてあげるんだ。



ん?

撫でてあげる?


それっておかしい?





「?どうした?」


「ううん。もう一眠りするんでしょ?」


「ん、じゃあもうちょっとだけ…寝るわ」


大きくアクビをしながらそう言うと、リビングを出て和室に入る。





「………」




なんだろう。



なんだろう、この気持ちは。








父さんの事が好きなのは認める。
恥ずかしいことだと思ってないし、俺を育ててくれたし尊敬もしてる。



でも、違うんだ。


何か。





何か、親子愛とは違う。






ナニカ。












部屋に戻りボーっと壁を見つめていた。
考え事をしているんだけど、何について考え事をしているのかわからない。





父さん。





好き。








大好き。







愛し……?








「や、だって親子だし」








ブンブンと頭を振ってベッドに顔を埋めた。

シンとした部屋に自分の呼吸と時計の音が聞こえる。




「………」




カチカチカチカチ…




「………」







カチカチカチカチ…







「………父さん」




カチカチカチカチ…








「………好き」








カチカチカチカチ…










「誰にも渡したくない…」






カチカチカチカチ…







「………女の人は…嫌だけど…父さんとなら……」








カチカチカチカチ…







「………やらしい事したいって…思……う?」









少しだけの想像が、取り返しのつかないアクセルを踏んでしまった。













「っ………!!」





呼吸が荒くなる。







「えっ…えっ…」





体温が上昇する。









「えっ…な…に……コレ…」





体が、求め始めた。







「嘘っ……なんでココ…こんな反応してっ…」



仰向けに埋もれていた体が異変を感じた。
下半身が、熱い。

今までこういう現象は朝に起きたらあった。
なんとなく本能と、周りが聞いてもいないのにその事について話してるから、病気とかじゃないことはわかる。

でも今までソコを弄ったことはなかった。
父さんに聞くのもなんだか恥ずかしくて、何より怖くて先に進めない。

朝起きて下着が濡れていた時は、事後だから特に何かすることもない。
こっそりバレないように下着を洗うぐらいだ。


でも今はどうしたらいいのかわからなくて、とりあえず下着の中に手を入れてみた。



「……っ!」



触れた所は毎日触っているところなのに。



「……コ…ココ、こんな熱かったっけ…」



ソコは思ってた以上に熱を持っていて、思わず下着から手を出してしまった。
動悸がまた加速して、汗が流れてくる。

クーラーをつけているというのに背中に流れる汗は止まらない。



「……もう一回…」


再び恐る恐る下着に手を入れると、厚く皮を被ったソコを両手で包んでみた。

小さいながらもソコは反応していて、下着を軽く押し上げている。


やり方が全くわからないから、とりあえず右手で全体を擦ってみる。



「っ………いっ!」



うっかり声が出てしまった。
今まで味わったことのない刺激が下半身に巡って痺れを生じる。

シャツの首周りの部分を噛み、耐えるようにもう一度擦った。



「っ……んっ!」


また、痺れる刺激が。

先ほどより声は押さえられたが、やっぱり出てしまう。
顔は茹ダコみたいに真っ赤で、額にはジンワリどころか大粒の汗が浮かび上がっている。



やめようか。


いや、やめれない。





「んっ…んっ…ふっ」



必死に声が出ないよう押し殺して、喉を鳴らしながらひたすら擦り続ける。


「ふっ…うっ…ふっ」



夢中になりすぎて、音まで気が回らなかった。



クチュッ



「ふっ…え?」



俺はシャツを口から外すと、擦り続けていた右手を取り出した。

掌には、何度か見たことのある白い液が。



「……コレが…精液…」



もちろん、知識はある。
でもしっかりと自分のモノを見るのは初めてで、思わずじっと見つめてしまった。


俺が出した、液。


「っ………」



急に何かとてつもなくいけない事をしてしまったようで、背筋が凍る感覚を覚えた。

ふと、頭に浮かんだのは、もちろん父さん。




「…父さん……ゴメ…ゴメン……でも…止まんなっ……」



手を下着の中に戻し、本能のままにまた、擦る。



「あっ…あっ…んっ…」



厚い皮で覆われていた小さなソコは、気付けば倍近く体積を増し、先端から本体が飛び出している。

しかしまだ本体は刺激に慣れておらず、擦るとピリっと痛みを伴った。



「……すげ…コレが俺の……?いっぱい液が出てくる…」


手を止め下着の中を見ると、ソコは白濁の液でまみれいつもと違う形をしていた。
もう少しで下着からはみ出そうだ。




「………父さんのココも…こんななるのかな…」




ドクンッ



「っ………」



体積がさらに増す。
ココを熱くさせる栄養剤は、

父さん。




「はっ…あっ…あっ」




さらに夢中になってソレを擦り続ける。
先端は触れないから、ただ指で空洞を作り大きく擦るだけなのに。




「はっはっ…はっ……と…父さんの……もっと大きくて……色も…」




ドクンッ




「んーっ…んっ…んーっ!」



足の先が痺れるような感覚に陥った。
ビクビクと太ももが震え呼吸が苦しい。


バタンバタンとベッドの上で寝転がり、暴れる。



なに、なんだ。


なんだこれ。



これから何が起こるんだ。




「はっ…はっあっ……あっ……い……わい……こわ…い……よぉ……父さんっ…!」



でも、手は止まらない。




「はっ…はぁ…はぁ…はっ……あっ…なんか……なんか…キた…あっ…なんかキた…!」



1番の高揚が全身を駆け巡って、あまりの恐怖に涙が溢れてきた。

気がつけば腰を打ち付けていて、背中だけだった汗が胸元まで浸している。




「あっ…あっあっ…キっ…キたっ……あっ………んっ……父さんーーー!」





父さんの笑顔が頭の奥で見えた瞬間、大量の精液を下着の中に吐き出した。




「っーーーー!!」



息を止め体を丸める。手は止めたというのに痙攣が治まらない。


「っ………はぁ…はぁ」



やっと呼吸が出来たけど、酸素不足のせいか頭がボーっとして動けない。

唯一動いた右手を取り出し顔の前に持ってきた。




「……うわぁー…」



ドン引くぐらいの液の量と、独特の匂い。


まだ重い頭を起こし枕元のティッシュを取ると、まず手を拭きすぐに汚れた下半身を拭いた。


もちろん、これぐらいで全部拭き取れるわけなくて。




「………」


のそのそと起き上がると、履いていた短パンと下着を脱ぎ新しいものに履きかえる。


「………」


やっとクーラーが効いてきた。
いや、ずっと効いていたんだけど。


頭が冷静になったのか、シンと静かな部屋で一人、気がつけば俺は。













泣いていた。



















「っ…うっ……うっ」




下着を履き終えベッドに座ると、事後の痕跡である丸まったティッシュが見えた。

地面に捨てられクシャクシャに丸まっている。








俺は気付いてしまった。







父さんへの、歪んだ思いが自分にはあると。










「うっ…くっ……」



これは悪夢だろうか。



「うっ……っ」





気付かなければただ、仲の良い親子でいれたかもしれない。





「っ……うわっ…あっ……あぁーっ」








それが許されない思いだと、わかっている。




一生交差することはないと、わかっている。







でも。




「っ……あぁーっ!!」





好きで好きで、仕方ない。













こんなに泣きじゃくったのは生まれて初めてじゃないだろうか。

見えないこの先に不安と恐怖が込み上げてくる。











頭が痛くなるほど、泣き叫んだ。



















「………智?」



真っ赤な目をしたままリビングに降りていくと、たまたま父さんが起きて来ていた。



時計を見ると12時を過ぎたところ。
昼ご飯でも作ろうとしているのだろうか。

しかし俺の泣きじゃくった顔を見て一気に血の気が引いている。

そりゃそうだ、俺、こんなに泣いたことない。

父さんを困らせたくないから、いつも笑顔だった。



俺が笑うと、父さんも笑うから。




全ては父さんのために。





「おっ…まえ……どうしっ」



「と…さ……」




泣き崩れる。

ほんとに、言葉の通り。






父さんを見つけフラフラした足取りで歩いた。
前は涙でぼやける。

だけど、父さんの姿ははっきり見える。
きっと、目を閉じていても見える。


立ちすくみ驚いたままの父さんの胸に、飛び込んだ。



「どっ…どうしたんだ??」


いつも以上に声が大きい。
きっと、本当に驚いているんだと思う。

「っく……うっ…」


父さんの胸にしがみついて、シャツにシワが出来るほど握りしめた。

涙と鳴咽しか出てこない。




「とっ…智…?…怖い夢でも見たのか?」


「っ……んっ…うん」



コクコクと頷くと、父さんはゆっくり背中に手を回し優しく撫でてくれた。
俺のせいでシャツがびしょびしょになっているというのに、気にする様子もなくきつく抱きしめてくれる。


温かい。


嫌だ、離れたくない。





「……そんな…怖かった?」


「っ……んっ」




先の見えない思い。




「そっか……じゃあ…ちょっとの間…こうしてような」


「……うん」





ぎゅっと強く抱きしめられると、さらに涙が溢れた。

父さんの胸で泣きじゃくり、鼻をすする。



立ったままだというのに、父さんはその後俺が落ち着くまでずっと抱きしめていてくれた。






好き。





大好き。












俺は、本当の父親を、愛している。


















「え、バスケ?」


「ん……」


「……そっかー…。頑張れよ!」


「ん……」


「…どうした?」


「それで……その…部活に入ったら専用のジャージを…買わないといけなくて……」


「……あぁ、お金?」


「うん……」


「そんな、気にしてたのか?遠慮するなよ」


「……ありがとう」


「他には?靴とかもいるんじゃないのか?」


「それはっ…貯めてたお年玉とかで……」


「なんで言わないんだよ!言ったら買ってあげたのに」


「ん……」


「……。でも、嬉しいよ」


「?」


「智、今まであんまやりたい事とか口にしなかったろ。やりたい事あるのに俺に遠慮して言えないのかなーとか、思ってたから」


「そんな事ない!」


「そっか……。じゃあ、やるって決めたんだ。出来る限り応援するし、援助もするから、頑張るんだぞ」


「……うん」













中学1年の夏、俺の世界は動き始めた。







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