朱い水:SIDE-H(おまけ)



SIDE-K




「あいつ、また泉水の事見てる」



好奇心。



どちらかというと嫌いなタイプ。
いかにも弱々しい奴は嫌いだ。

泉水効果で部員はいっぱい入ったけど、憧れだけで入る根性ない奴なんかいらねー。

ま、あーいうひ弱そうな奴はすぐ辞めるだろ。






姫川悠斗。一年普通科。


第一印象、弱そう。


仲良くなることは、まずない。








始めは好奇心だけだった。


女みたいな顔して気持ち悪い。
おまけに泉水の前になると顔を真っ赤にして嬉しそうに喋ってる。



ま、ホモに偏見はないけどね。
勝手に俺が見えないところでやってくれ。









でもそいつは意外にも根性があった。


「あいつ…結構基礎あるんだな」

「誰?」

「姫川」

「……あぁ、丁寧だよな。体格があんまよくないから勿体無い」

「ん」

大谷とパス回しをしながら一年の集団を見ていた。
部活が始まって3週間。
ちらほら部活を辞める奴も出てきている。

でも姫川はどんなに辛い練習でも弱音を吐かず毎日きていた。


「…でも意外」

「……何が?」


大谷のボールを受け取り、的確に胸の位置にパスを回す。
簡単な作業だけど、ずっとこれを続けていると飽きてくる。

で、いつも姫川を見てるわけだ。

大谷は姫川と俺を交互に見ながら不思議そうに眉間にシワを寄せた。


「清が後輩に興味持つなんて」

「……そ?」

「うん。だってお前全然後輩思いじゃないって昔よく今の2年から苦情きてたぞ」


そういえばなんだかんだで仲のいい後輩って泉水だけだな。

「だって俺、年下嫌いだもん」

「だろ、でも姫川のこと結構詳しく見てるみたいだし、それが意外って」

「……そっか。そうだな」



確かに。
今気づいた。

最初は好奇心で見てるだけだったけど、段々あいつを見ているのが楽しくなって気が付けば常に目で追っていた。

だってほんといつも、泉水のこと見てんだもん。


「姫川っていつも泉水見てるよな」

「そうか?」

「え、だってわかるだろ姫川見てたら」

「だから、そんな姫川のこと見てないから普通はわかんねぇって」

「……あ、そっか」



俺、姫川のことずっと見てるからあいつが泉水のこと好きだってわかるのか。





ん?
なんだ?これ。




「もしかして、恋とか?」

「…………」



ボンッ


「っ……てぇえぇ」

「……何してんの、お前」


大谷のパスが俺のミゾオチをクリーンヒットした。
流石キャプテン。正確なパス回し。

大谷は胸を押さえ疼くまる俺を呆れながら見下ろす。
魔王様のようだ。


恋。恋ねぇ。

恋か。



「大丈夫か?何余所見してんだよ。可愛い女の子でもいたか」

「………そうかも…な」

「…はいはい。可愛い女の子はみんな泉水のファンですよ。お前見に来てんじゃないって」

「やっぱ…そうなのかな」

「……なに、まじ気に入った子できた?」

「……かもね」



床に弾いたボールを取って立ち上がると、泉水を見に来た普通科の女の子達……の前で一生懸命汗を流している姫川を見つめた。





なるほど。







楽しく、なってきた。




SIDE-K
END

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