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「わっ。なんスか」


「佐倉君!智希君の彼女ってどんな子?!」


「……知らないスよ」



心底めんどくさそうにため息をつくと、掴まれた腕を振り払い歩き始めた。



しかし負けじと石津恵美はついてくる。


「仲良んでしょ!聞いて!」


「聞いてどうするんスか」


「……絶対奪う」


「………」



馬鹿な女。
あの人には勝てないよ。



フンっと鼻で笑うと立ち止まり振り返る。



醜いな。
こういう女は。



「……お疲れ様でした」


「っ……」




蔑んだ顔で笑い挨拶すると、佐倉はそのまま暗闇の中へ消えていった。


その表情にゾクリとし同時に怒りが込み上げた石津恵美だが、下唇を噛んでぎゅっと拳を握りしめた。





「っ……何よ、高校生のくせに生意気……みてろよ」



プライドを傷つけられたのか。
石津恵美は立ちすくんだままボソリと呟いた。








そんな呪うように見つめる石津恵美などもう忘れたかのように、佐倉は鞄から携帯を取り出し電話をかけていた。


「……あ、ヒヨさん?遅くにごめんね。寝てました?……。あ、うん。俺はバイト終わったー。…ねぇ、今から行っていい?」


ズボンのポケットに手を入れて、さっきまでの冷ややかな表情など微塵もない穏やかな顔で電話をしている。


「……ん、ん。うん。ありがと。じゃあ今から行くねー」


ピっと通話終了ボタンを押し、ニコニコ微笑みながら携帯を鞄に入れた。


「……醜いオーラに当てられたから浄化してもらわないと♪」


足取り軽く、佐倉は鼻歌を歌いながらその人の家へと急いだ。
















「……ただいまー」


いつもより少し小さめの声で言うと、智希はリビングには向かわずすぐ風呂場へ向かった。



「……ん?智希?」


ソファの上で夕刊を読んでいた有志は微かな物音に気付きドアを見ると、磨りガラス越しに人影が見えたがすぐに消えてしまった。

首を傾げながら立ち上がり夕刊をテーブルに置いてリビングを出た。


シャワーの音が響く。



「智ー帰ったのか?」


「んー」



浴室から曇った声が聞こえる。



「ご飯は?」


「今日も弁当持っていってそれ食べた」


「……そうか」




智希は毎週木曜日、授業が終わるとバスケ部の強化練習を遅くまでしている、ということになっている。



最近は弁当を二つ持ち、休憩を挟む時に食べていると嘘を言っていた。



実際は育ち盛りの高校生はペロリと弁当二つ分を食べ、ミーティングが終わるとすぐにバイト先へ向かっていた。



イタリア料理のため匂いが移りやすく、髪の毛まで香ばしくなるため智希は家に帰るとすぐに風呂場へ走った。



しかし、本人の意思など知らず有志はその行動に肩を落としているわけで。



また今日もすぐに風呂か…。
本人は汗くさいからすぐ風呂に入りたいって言ってたけど…。




「……なんか、淋しい」



「え、なに?」


「なんでもない」




有志は小さなため息をつくと風呂場をあとにした。




べつにずっとくっついてたいとか…思わないけど…。

やっぱり帰りが遅い日は少しでも早く顔が見たいと思う俺はうざいんだろうか。




「……はぁ、いい歳して何女の子みたいなこと言ってんだ」


今度は大きなため息をつくと、有志はスプリングを鳴らしながらソファに座り込んだ。



本番は土曜日だけ。

でも実際は金曜日の夜から始まるわけで。







「っ…あっ」


「父さん…もうちょい足開いて」


「んっ…」



有志はベッドに寝転がり足を開いて智希を受け入れている。
週に一度の交わりを待ち焦がれているのは、智希だけではない。

元々あまり性欲のなかった有志だが、ほぼ毎日智希と肌を重ね白濁の液を交換する。


気持ちが、良い。

心から愛する人と重なることが、こんなに気持ちいいなんて。





「…もっと若かったら毎日出来たのに…」


「ん?」


「なんでもない」



世間一般の30代前半はまだまだ性欲が有る方だろう。
有志も、ほぼ毎日精子を吐き出し汗をかいている。



しかし、相手が悪い。




「っ……父さんっ…もっかい…いい?」


「んっ……」



何度達したら満足するのだろうか。

『何回やっても満足なんかしないよ。ずっと父さんと繋がってたい』


聞いたら即答だ。

土曜日の行為も、有志の気が失うまで続けられる。



気が失うまで。

有志は気が失うまで息子のソレを拒まず受け入れる。



「っ…もうゴムがない…」


「っ……」



ズルリと自分のソレを取り出すと、空になったコンドームの箱をカラカラと振った。


「買うの忘れてたー」




うなだれベッドに寝転ぶと、仰向けのまま顔を手で覆った。

まだまだヤりたいのに。


そう駄々をこねる姿を見て有志はやっぱり可愛いなと思ってしまう。


重い腰を引きずり上半身だけ起こすと、寝転ぶ智希の頬に手を這わせた。
うっすらと汗をかいて髪の毛が湿っている。
バスケをしている時とはまた違って、とても綺麗だ。



「……別に…いいよ、ゴム無しでも」


「………」



なんてことを息子に言っているのだろうか。

自覚はある。だが全てが麻痺している。



「…お前のまだ…萎えてないだろ…いいよ……おいで」


「…父さん」



自ら足を開きベッドに肘をついた。
智希を見つめながら再び頬を撫でると、ゴクンと唾液を飲んでベッドに体を預ける。


寝転がった有志を見つめ動かない智希。
下半身は確実に先程より体積を増しているが、何か考えているようでまだ動かない。



「……どうした智希?……ほら、おいで」


羞恥にやや震えながらさらに足を大きく開き自ら蕾に指を這わせ拡げた。

トロトロと有志の穴からは白濁の液が零れてきて、なんとも卑猥なその光景に智希は目眩さえ感じた。



「っ……やっぱダメだ!」


「?」




急にガバっと起き上がると、智希は頭を抱えながら唸り叫んだ。

きょとん、と目を丸くさせ有志も起き上がる。


「……どうした?」


そっと、智希の肩に手をのせ覗き込むけれど、まだ顔は上げない。


まさか、何かカンに障ることをした?

あんな誘い方をして、智希を引かせてしまった?

下品過ぎた?



サーッと血の気が引く音が聞こえる。


年齢は一回り以上違う。
だけど恋愛経験も、セックス経験も、恥ずかしいが息子の智希の方が上だ。

何かしてしまったのだろうか。
わからない。自分では経験値が足りなさ過ぎる。
なんて、情けない。




「とっ智希っ」


必死に智希に振り向いてもらおうと呼び掛けると、すぐに体が揺れ軽い目眩がした。


すぐに、押し倒されたのだと気づく。




「智っ希…ごめっ」


有志は見上げ情けなく謝ると、息の上がった智希はベッドに手をつきゆっくりとキスを落とした。



「んっ…ん?」



なんで、キス?



わからないまま受け入れていると、ゆっくり唇を離し再び有志を見下ろした。


少し、辛そうだ。




「……なんで、謝るんだよ」


「だっ…だって…智希…引いたのかなって…」


「……何に?」


「あんな…みっともなく足開いて…誘ったから…」


「……あのさ、自覚あるならやめてよ…」


「ごっごめっ」



やっぱり引いたのか?あんなことしたから。
嫌われた?呆れられた?


離したくない、離れたくない。

そう思った有志は智希の腕を掴みグイっと体を起こした。

しかし、すぐ智希にまた押し倒される。



「だから、違うって」


「?」



はぁ、とため息。

丸裸の二人は重なりあって、寒さなんて微塵もなくむしろ熱い。


智希は有志を抱きしめ大きく深呼吸すると、ゆっくり頭を撫でた。




「……煽らないでよ」


「…煽る?」


「……ゴム無しでもいいとか…必死に耐えようとしてんのにひでぇ」


「べ、別に耐えなくいいって言っているだろ…!」


「だーかーらー」



ぎゅっときつく抱きしめて、呆れた声でうなだれる。

まったくほんとうに。



「…やりすぎて後で辛いの父さんだろ」


「…なんだよ、今更」



確かに。なんだけど。



「でもやっぱゴム無しでやると中の粘膜傷つくっていうし、中出しすると腹下すっていうし」


「あああああそれ以上は恥ずかしいから言うな!」



確かに、普通より大きめの智希のソレを受け入れるのは困難だ。
行為を終えた次の日に痺れ、痛みをともなったことはあった。


しかし智希は事後の処理も最善をつくしてくれたし、たくさん男性同士の性行為について調べてくれた。

だから、少しの痛みぐらい自分が我慢すればなんてことない。

気持ち良ければ、智希が気持ち良ければそれでいい。



でも智希は納得しないわけで。

それだけ、有志を愛しているから。




「父さんとずっと繋がってたいけど、それが少しでも負担になるなら絶対したくない」


「負担なんか…」



そう言うと、智希は有志のこめかみにキスを落としながらじっと見つめた。

目は、優しく微笑んでいる。



「ありがとう」


「んっ…」



ありがとう、は、こっちのセリフなのに。



そう思いながらキスを受け入れた。


「っ…でも、中途半端だから…最後までさせて」


「んっ…っ」




ゴソっと智希の右手が動くと、萎えず主張したままの有志のソレを掴んだ。

ビクリと有志の体が跳ねる。



「…智希…ほっほんとに…いいんだ…ぞ?」


「っ…煽んなって!」


「あぁっ!」


智希にソコをきつく擦られた。

そんなつもりはないのに。
そう思いながら脳天に突き抜けるような快感に痺れた。


「……ね、父さん。素股して?」


「すっ…え?すまっ?」


聞き取れず聞き返すと、智希はクスっと笑い軽くキスをした。

そしてすぐ有志を起こし座らせる。



「そういや、これした事なかったけど平日はこれがいいかも」


「えっえっナニ、ナニ」



頭にハテナマークをつける有志の腕を引いてあぐらをかいた自分の膝の上に座らせると、ゆっくり抱きしめ首筋にキスを落とした。



「え、え、え?座位?」


「ぶっ、違うって」



思わず吹き出してしまった。
可愛いなぁ、と何度も首筋にキスを落とす。


「…足、閉じて」


「え?」



なんで?
そんな顔で智希を見上げるが、言われた通り足を閉じる。

閉じたものの、有志のソコは天を仰いで先端から液を零している。

限界だ。



「智…」


「……ん」


有志の膝裏を両手で掴みグイっと引き寄せると、同じく限界まで張り詰めている自分のソレを蕾に押し付けた。



「あっ…っ……やっぱ挿れっ…」


るのか?


聞こうとした瞬間ズルリと智希のソレが滑り、有志の太ももを割って突き出てきた。


「あっあっ…なにっ」


「うわっ…初めてやったけど…結構イイかも…」



二人の先走り液が潤滑油となり、智希が腰を突き上げると卑猥な音をたてて二人のソレは重なりながら上り詰めていく。


「っ……父さん…俺にもたれていいから…自分で太もも持ってて」


「んっ…んっ…うんっ」



有志は言われた通り自分の太ももを掴むと、智希の胸にもたれた。


気持ちいい。



智希は有志の腰を掴み、素早く自分の腰を振る。
グチュグチュと二本のソレが擦り合う。



「あっあっ…あっ凄い…凄い眺め…」



有志はすぐ視線を落とすと、自分の股から智希のソレが出たり入ったりを繰り返し、なんとも卑猥で声を唸らせた。


擦れる箇所はどんどん熱をおびていき、どんどん液が溢れていく。


「っ……父さんっ……気持ちいい?」


「んっんっ…きっ気持ちっ…気持ちいいっ」




目尻から涙をこぼす有志。
智希はその涙を舐め、ちゅっと音をたてて何度もこめかみにキスをした。



「も……イこっか」


「んっ…ん!」



重なる二つのソレを掴み、再びきつく腰を打ち付ける。






「あぁっ!」



肌のぶつかる音がさらに大きくなり、有志の声もさらに高くなる。

ベッドのスプリングが飛び跳ね、まるで壊れてしまうのではないかと思うほど暴れている。



「っあっ…智っ智っ…出っ出るっ!」


「っ……んっ」


「あっ…んーっ!」



有志の足が宙に浮きピンと伸びると、ほぼ同時に二人は精を吐き出した。



二人分の精液が、有志の顔にかかる。



「…ごめ…全部父さんにかかっちゃった」



クスリと笑い抱きしめると、まだ呼吸は整わず二人とも肩で息をしている。


「…ん」


鼻にかかった精液がドロリと垂れて有志の口端にたどり着くと、条件反射か有志はその液を舌先ですくい舐めた。



「っ…はぁはぁ…濃い…これは智のかな」


ははっと笑いながら見上げると、智希はたまらなくなり白濁に汚れた有志の唇に激しくキスを落とした。

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