3

「うん、今年いいところまで行けたからさ、学校側が11時まで体育館開けてくれることになったんだ」



ちょっと無理矢理かな。
智希はゴクっと生唾を飲み込み体を有志に向けた。


「だからゴメン、木曜だけ一緒に飯食えないけど…晩飯は朝ご飯と一緒に作ってチンするだけにしとくからさ」


「それは心配しなくていいけど…。あんま頑張り過ぎて体怪我するなよ」


心配そうに智希を見上げると、サラリと頭を撫で頬に手をあてた。
それに答え、智希もうんと頷く。


「頑張るよ。来年こそはインハイで優勝する」


「……ん、応援する」



ズキっと智希の胸が痛んだ。




嘘ってこんなに辛かったっけ。







「……智希」


「ん?」


「今日どっか寄り道した?」


「え?」




突然有志がケロっとした顔で聞いてきた。
さほど気にはしていないようだが、何か引っ掛かるという顔をしている。


「なんか…いい匂いがする」


「……いい匂い?」



智希はゴクリと喉を鳴らすと、わざとらしく袖を鼻にあて匂う仕種をした。


イタリアンだから匂いきついのかな…。
やばい。


「んーなんていうか…」


有志がそう言いながら智希に近づいた。


やばい。



「っ……それって」


「?」



智希は咄嗟に有志の手首を掴み、グイっと引っ張った。



「父さん、欲情してんじゃないの」


「なっ…」



唇がつくかつかないかの寸前で止め、フっと笑いかける。
有志は顔を熱くさせ目を見開くと、目の前の愛おしい息子に釘付けになった。




「そ、そんなんじゃない…!ほんとに智希からうまそうな匂いが…」


「だから、食べたいんでしょ、俺を」


「ちがっ」



でも食べるのは俺だけどね。


そう言うとさらに有志を引き寄せ荒くキスをした。
本当に食べるように激しく唇を動かす。




「んんっ…ふっ…んむっ」


「っ……おいしい?」


「っ…おっおいっおいしっ」



はぁはぁと息が上がった有志の頬に手をあてニコリと笑うと、今度はゆっくりキスを落とした。



「ふっ…はっ…あっ」


どんどん漏れる、甘い吐息。
熱くなる体。


有志の脳は香ばしい匂いのことなど忘れ、息子とのキスに溺れた。



「っ……っ…智っ…す、するのか?」



トン、と智希の胸に顔を埋め、うっすら滲み出した汗を拭うこともせず見上げる。
智希はニコリと笑うと、ゆっくり有志のシャツの中に手を這わせた。




「今日は平日だから挿れないけど…俺が全部やってあげる」


「っ……」



有志の胸の突起を見つけると、軽く人差し指の爪で引っ掻いた。
ピリっと刺激が伴うけれど、それは快楽の刺激で。




「っ……はっ」



体を捩らせ、シャツの中が智希の両手によって奇妙に動く光景をじっとみていた。

下半身が疼き出す。




「もう…胸だけで勃つね」


「っ……お前の手がっ…エロ過ぎるからっ」


「……褒め言葉として受け取っとくな」



クスリと笑い有志をソファとテーブルの隙間に寝転ばせると、グっと力を込めて有志の短パンと下着を膝下まで下げた。



「あっ…」



完勃ち、まではいかないが、揺れて生き物のように動いている。


「っ智希っ…せめて風呂入らせて」


「いまさら何言ってんの。無理」


「…とっ……あぁっ!」


有志の胸から手を離すと、スルスルと下半身へ降りていき両膝の裏を掴み軽く持ち上げた。
そして躊躇うことなく、咥える。



「あっあっ…んっー!」



有志は咄嗟にシャツの襟首を掴んで口に含み噛んだ。
唾液の音と漏れる吐息が広いリビングに響く。



有志のソレを含んだ智希は、舌で転がしながら丹念に愛撫する。
大事に大事に育てていく。



有志は自分の胸倉を掴みフゥ、フゥ、と呼吸すると、目尻に涙を溜めながら見下ろした。
智希が顔を動かす度に、自分のソレが見えては隠れる。



な、なんてエロい光景…



「っ……いきなり大きくなったと思ったら…自分がされてんの見て興奮した?」


「っ………」



智希は突然口を離し顔をあげると、有志とすぐ目が合いニヤリと笑う。
口端は唾液で光り、卑猥な白濁液が智希の顎を伝いポトリと落ちた。


「……父さんでドMだよな」


「そっそんなことなっ」


「そ?」


「あっ」



再び有志のソレを口に含み、溢れていた先走りの液と唾液を手の平に乗せ有志の蕾を人差し指で刺激した。


「ドMでしょ、気付いてる?今すげー恰好してんだよ」




息子の前で足広げてしかも指が入りやすいように少し腰浮かせてたらな…。



少し自虐気味に笑うと、有志は智希の頭に手を乗せた。


「お前だから…やるんだよ」


「っ……」



ゴクン、と智希の喉が鳴る。
さっきまであんなに余裕を見せていた表情が、一気に泣きそうな顔になる。

子供のように。




「父さん…」


「ん……」




有志に覆いかぶさるように倒れ込み、顔を埋める。
有志は智希の背中に手を回し、ゆっくりポン、ポンと撫でた。


ドクン、ドクン。
と、二つの重なる鼓動。



「父さん…好き」


「うん」



聞こえないぐらい小さく囁いたのに、有志は返事した。
また、智希に力が篭る。


「……ありがとう」


「…どういたしまして」



クスっと有志が笑う。
やっぱりまだまだ可愛い子供だ。




「今馬鹿にしただろ」


「してないよ」


「……ふーん」


「っ……あっ」



床に手をついて有志を見下ろすと、照れ隠しなのか放置していた有志のソレを掴み上下に擦り始めた。




「んっんっ……とっとも…のも…智希のもっ」


「俺はいいよ。父さんの見ながら自分で擦るから」


「えっ」



虚ろな目になりながら下半身を見ると、智希はゴソゴソと片手を動かしながら自分のソレを取り出していた。


もう、勃っている。



「今日はほんとに、父さん何もしなくていいよ」


「でっ…でもっあっ」



智希は体をズラし再び有志のソコへ唇を這わせると、もう天を仰ぎ震えていたソレを口に含んだ。

クチュクチュと、自分のソレを擦りながら。




「あっあっ…あっ…ふっんっ」


好きな先端に歯をたてカリっと噛み付くと、身震いし体が大きく揺れる。
有志のソレを咥えながら開いた手で蕾に指を二本入れると、奥のイイ所を浅く突いた。



「あっやっ」



有志の足が宙に踊り爪先がピンと張る。


「あっあっ智希っあっ…やめっソコばっか…突かな…い…でっ」


「ココ?」


「あぁっ!」



浅かった手つきが急にグッと力を込められた。
グチグチと卑猥な音が響き、さらに有志の声も高くなる。



「あっあっ…やっ…智希っ智希ぃ…!もっ…イくっ」


「んっ……」



その言葉と同時に自分を擦る手も速め、口に含む有志のソレを甘く噛み始めた。




「あっやっ…やっ…かっ噛まないっでっ…あっ噛んだらっダメっだっ…あっ!」



先端の割れ目に歯を立てながらきつくすすると、有志の腰が跳びはね一気に智希の口内に白濁液がぶちまけられた。


「っ………」


一瞬苦しい顔をするも、智希はそれを全て飲み込み自分のソレもきつく擦って頂点へ達した。










「はぁ…はぁ…」


「…ごめん、父さん…仕事遅かったのにさらに疲れさせて」



肩で息をする有志の隣に寝転びそっと後ろから抱き着く。
有志はまだ呼吸が整っていなかったが、ゆっくり振り向き優しく微笑んだ。



「っ……気持ち…よかったよ」


「………」




なんだか、泣きそうになった。




「っ…父さんの呼吸整うまでに風呂沸かしてくるね」


「……ん」



急いで有志から離れリビングを出た。
風呂場へ向かいながら頭に手を当てる。




「はぁ……」




やっぱりバイトやめようか。
でも店長さん折角気に入ってくれたし、今辞めるとかすげー迷惑だよな…。
それにクリスマスと誕生日ぐらい、自分で働いた金で祝ってあげたい。






「………はぁ」



風呂場へ行く間に何度も大きなため息をつきながら歩いた。








バイトはとても大変だった。
全てが初めてで、自分の世間知らずさに恥ずかしくなる。

こんなにテンパって、こんなに人に迷惑かけて。
まだまだ未熟。


父さんは高校を卒業してすぐ就職して、俺と母さんを養う為に毎日遅くまで働いてくれた。

やっぱ勝てない。
まだ同じラインにさえ立っていない。

そう思った。






「お金稼ぐのって大変だな…」


「そうですねー」



毎週木曜日、夕方6時から閉店の夜11時まで働くことになった。
最近は佐倉も木曜日に手伝いに来ている。



「真理さんが嬉しい悲鳴だって言ってましたよ。泉水さんのおかげで木曜の夜がすんごい忙しいって」


「………」



ゴホン、と咳ばらいをして目を伏せた。


今は15分休憩をしているところ。
佐倉と智希はスタッフルームにいた。

先ほど5分で食べたまかないのグラタンが二つ、テーブルに並べられている。

さほど広くないスタッフルームの真ん中に丸いテーブルがあり、二人は向かい合わせでパイプ椅子に座っていた。


ギィ、と椅子が鳴る。


智希がバイトを始めてからまだ一ヶ月と経っていないが、すでに智希のファンが出来ていた。

長身、柔らかい容姿、オプションでギャルソンの姿に噂が噂を呼び、このレストランに美少年が働いていると反響を呼んだ。



智希効果は主に30代の奥様、そして女子高生。
智希がテーブルへ行くと微かに黄色い声が漏れた。

木曜日のみいつもの倍混む為佐倉もヘルプに来るようになったのだが、佐倉も長身、整った顔だと奥様達に大人気だった。



「石津さん、絶対泉水さんのこと好きですよね」


「それ言うなよ…」



ホールスタッフには智希、佐倉ともう一人、石津(いしづ)恵美(えみ)という短大生もいた。

茶髪にボブで、クリっとした大きな目が可愛い。



「なんかアクションありました?」


「……ケー番聞かれた」


「狙われてるじゃないですか」



その言葉に智希ははぁと大きくため息をつき、テーブルの上に置かれたペットボトルのお茶を取った。
ゆっくり喉をお茶が通り潤うが智希の表情は曇ったまま。





「…恋人いるからあんま女の子のアドレスとか入れたくないって言ったら泣かれた」


「げっ。石津さんそんな人だったんだ」


「…言うなよ」


「わかってますよ。で、メアド教えたの?」


「……ん」


また一口、お茶を喉に流し込む。



「なんで明日バイトで会うってわかってんのに女ってメールしてくるんだ?」


「自分をアピールしてんでしょ」


「………」




はぁ、とまたため息。
バイトが同じ上に仕事を教えてもらっている関係上、あまり冷たくできない。


恋人がいると言えば寄ってこないと思ったが、逆に火がついたのかさらに猛アタックをしてくるようになった。



正直、本当にうんざりしている。


「あんま酷かったら店長に言ったらどうですか?」


「んー…それってなんか…相手に失礼っていうか…男として情けないっていうかー…」



智希が言葉を濁し背もたれに体を預けると、アラームをかけていた携帯が鳴った。



「休憩終わりですね……ま、頑張ってください」


佐倉が立ち上がりニヤリと笑いかける。
智希も立ち上がりその表情を見ると、またまたため息をついて携帯を鞄の中に押し込んだ。



「…わかってくれるまでとりあえず俺には大事な人がいるって説得するよ」


「モテるって大変ですね」


「嬉しくない」



きっぱりそう言うと、スタッフルームの電気を消し揃ってホールへ向かった。















「お先に失礼しまーす」


「お疲れ様でしたー」


「お疲れ様でした」




本日も無事バイトを終え、レストランの裏口からバイトの3人が出てくる。
智希は自転車の為駐車場の奥にとめたその場所へ移動する。



「智希くーん、今日このあとご飯行かない?……あ、佐倉君もよければ…」






俺はついでかよ。
ってかあきらかにお前断れよって空気じゃん。



佐倉は呟きながら舌打ちした。




聞いていたのか聞いていなかったのか。智希は自転車を取り出しながら何も言わず二人に近づいて来た。



「いや、父親待ってるんで」


「えーそんなのいいじゃん。奢るからさ。ね」



不機嫌、まではいかないが、先程まで客に振り撒いていた柔らかい笑みは消え、暗闇に低い声は馴染んでいく。





わー泉水さんめんどくさそー。


佐倉は内心クスリと笑いながら、それでも引かない石津恵美にある意味尊敬の眼差しを送った。



「すみません、お疲れ様でした。じゃあ佐倉、また明日な」


「あ、はい」


「ちょっ」



石津恵美が智希の腕を掴もうとした瞬間、流石バスケ部エース、簡単に擦り抜け自転車をこいで走り去ってしまった。


ポツン。石津恵美は何か言いたそうだが智希が去る跡を目で追うだけで何も喋らなかった。

悔しそうに口をへの字に曲げると、智希を見送り最寄り駅へ向かおうとした佐倉の腕をガシリと掴んだ。



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