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「……っていうかまだ掃除しなくていいか」
「…えっ」
枕を取り真剣な表情で見つめる。
「じゃ、俺そろそろ復活してきたから第2ラウンドねー」
「ちょっ…もう無理だって!」
「高校生はまだまだイけるんだよ」
「おっ…俺は30過ぎてんだああああ」
真昼間の午後、泉水家で有志の声が鳴り響いた。
「いっ…1回!」
「7回」
「なっ7回って毎日じゃないか!」
「じゃあ我慢して6回」
「に、2回」
「6回」
「…2回!」
「6」
「……さ…3」
「6」
「……4…」
「6」
「………5」
「うん、わかったじゃあ週5回な」
「え、え、え、え、え」
「自分で5回って言ったんだ。ちゃんと守ってよ」
「…………」
は…はめられた。
俺体力もたねーよ…。
セックスを週に何回するか、なんて呆れるような会話をしたあと、気づけば8時を回っていた。
「あ、俺そろそろ学校行くわ」
「ん。気をつけてな」
「はいよー」
いつもと変わらない泉水家。
智希が弁当を作り、先にでる息子のために有志が玄関まで送る。
変わった事と言えば。
「いってきます」
「ん」
チュッ、と唇を重ね合わせる。
数秒で唇を離すと、智希は玄関の合わせ鏡で髪型をチェックし扉を開ける。
本当は、変わっていないのかもしれない。
ただ、今までそれを態度に出していなかっただけ、言葉にしていなかっただけ。
「いってらっしゃい」
今日も智希はいつも通り、
父の、有志の満面の笑みを見つめながら学校へ行くのであった。
END
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