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翌日は晴天となった。
チェックアウト…なんてものはこの旅館にはないのだが、だいたい9時頃には出ると告げている。

昨晩旅館に戻った後こっそり二人で温泉に入り、烏の行水を済ませすぐ部屋に戻り眠りについた。

目覚めると目に染みる程の朝日が飛び込んできて、先に起きた智希は大きなあくびをしながら携帯を覗き込む。

7時を少し過ぎたところ。


昨日寝たの4時過ぎだからあんま眠れなかったな…


しかし良い睡眠だったのか、智希の体は特に疲労なくぴんぴんしていた。
高校生の体だから、でもある。

ふと隣を見るとまだ起きそうにない有志の顔があった。


8時には朝飯来るから、それまでゆっくり寝かせてあげよ。


布団にしがみつき胸を上下する体。
智希は愛おしそうに軽く頭を撫でこめかみにキスを落とすと、もう一度大きなあくびをしながら朝風呂へと向かった。



智希が風呂から上がっても有志はまだ布団にしがみついたままで、起きそうになかった。

先ほどからなかなか大きな音をたてているというのに、指先一つ動かない。


今日から有志の両親が暮らす田舎へと移動する。

昼過ぎの飛行機に乗らないといけないため、観光はできない。

沙希達が眠るこの土地は田舎過ぎて観光する場所なんてないのだが。


身支度を済ませあと10分ほどで女将さんが呼びに来る時間になった頃、ようやく有志の体が大きく動いた。

「ん んーーー」

「あ、起きた?たぶんもうすぐ女将さんが朝食持って部屋入ってくるよ」

「…………なんじ」

「7時50分」

「………おふろ」

「俺は入った。朝ご飯食べて時間あったら行ってきたら?」

「……ん……………」

「こらこら寝ちゃだめだって」

再び布団に潜ろうとする有志の体を起こし強引に座らせる。

グラングランと頭が揺れているようで、重い瞼はなかなか開かない。

「ほら、起きて。女将さんくるよ?」

「……ん……………」

「………ムリヤリ起こすよ」

「……ん…………ん??」

全く聞いていない有志に痺れを切らし、少しはだけた胸元に手を忍び込ませた。

「ちょっ…とっ!」

簡単に見つかった乳首をつまんで、耳の裏をぺろりと舐める。

「ひぃ!」

「起きた?」

「起きた!」

智希の胸に両手をつけて力いっぱい押し返したのだが、1時間前から起きてる現役高校生の腕力と、数分前起きた三十路の力では勝負は見えている。

ビクリともしない高校生の体に焦りを覚え、部屋に付けられている時計を見た。

「起きた!起きたから離して!女将さん来る!!」

「おし。………おはよ」

「…………おはよ」

しつけられている犬の気分だ。

はだけた浴衣を直しながら立ち上がると、タイミング良く女将が入ってきた。


あぶなかったー。もうちょっとでいけない所見られる所だったー。


支度も終え明るく挨拶する息子と、さっき起きたばかりでぼさぼさの髪に緩い挨拶の父親。
これを見られている時点で有志の父親としての威厳はないのだが。



朝食を食べ終え有志がバタバタと用意している中、余裕の智希は鼻歌を歌いながら部屋を出た。
ちゃんとした庭師が手入れしているであろう庭園の木漏れ日が感動するぐらい綺麗で、智希の退職後は有志と二人、田舎で民宿もいいなと思う。


「ダメだ。父さん可愛いから酔っぱらいの親父にセクハラされる」


それ以前に退職後ということは有志は80歳前後の可能性があるのだが、智希本人は気付いていない。



「用意できた?」

「できた!できてないけどできた!あとは向こうで荷造りする!」

向こう、とは、有志の両親、智希の祖父母が暮らす田舎のことだ。

「空港であれないこれない言っても知らないからな」

「………」

うぅ、と項垂れる。
しかし時間は本当に無くて、相変わらず大きな荷物を智希が持ち、先に玄関へと進んでいく。

「智希疲れてない?半分持つって」

「全然。朝からゆっくり風呂も入ったし元気ー」

そんなやり取りを微笑ましく見ていた女将は、満面の笑みでまた来て下さいねと頭を下げた。

また来ます。と、同じく満面の笑みで返した親子は、足早に車に乗り…こまず、墓地へと向かう。



「じゃあね、母さん、おじいちゃん達。また来るよ」

「また来年。智希のお土産話いっぱい持ってくるね」

最後墓に手を合わると、雲一つ無い空を見上げながら深呼吸をして、次の旅へ向かう二人だった。



終わり

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なんとか終わりましたね?(他人事)

毎回うじうじ鬱陶しい有志ですが、今回墓前で二人でちゃんと報告したので、たぶんもう大丈夫でしょう。

有志のEDは治るのか…(!)


この後はアンケートを集計して、次章に続けようかと。

実は次どうしようか悩んでまして…。

ある程度泉水家の書きたい話は書けたので、あとは長編ではなく中編みたいな感じでサラサラと書きたいなーと思ってます。
サラサラと書きたいと思ってます。
サラサラと!


というか今回の小説も長編というより中編寄りでしたもんね…

これからもぬるぬると二人の話は続けていきますので、よかったらもう少しお付き合いください〜^^




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