4



クチュクチュと粘着質な音が大きくなっていく。
下から上へ、上から下へ。高速に動く智希の手にどんどん脳内までも犯されていく。


「あっ智希ぃ…智っ…智っ…あぁっ…あっあっあっ…智希ー!」

「………気持ち良い?」

「うんっうんっ…とっ智希…!気持ち良っ…!」


目を閉じ目尻から涙が溢れ悶えている。


「ごめんな父さん、父さんのココくわえてあげたいけど、イく時の父さん見たいから手で勘弁して…な」

「んっんっ…あっあっ!智希っ!…った!キた!あっ!…っ……あっ…イくっ!!」

「……うん」


ゴクリと生唾を飲み込むと、綿棒を一気に引き抜き激しく全体を擦った。



「あっ…!あぁっ!!んーーーっ!!」

体が強張った瞬間ソファから浮き何度も腰を打ち付けると、白濁の液が有志のソコから高く飛び出した。

「あぁ………」


射精は3〜4回に分かれ吐き出され濃厚な液が有志の胸に溜まっていく。

智希は出たのを確認しながら恍惚な表情をする有志をじっくり見つめ、萎み始めるソコを緩く擦り続けた。
まるでマラソンを終えたかのように有志はソファに寝転びゼーハーと荒い呼吸をしている。

白い肌が若干ピンク色に染まりとても綺麗だと、智希は思った。




「父さん…」

「はぁ…はぁ…」

ソファにもたれまだ荒く呼吸している。
体は薄っすら汗をかきとても熱い。

きっと、体の中も熱いのだろう。
そう思ったらすでに下着の中で開放を望んでいる智希のソレが甘く疼いた。

「……父さん」

「んっ…」


ソファに手をつき有志を抱きしめると、触るとさらにわかる熱さが伝わってきて眩暈がする。

気持ちよくなってくれた。
俺の手の中で。

あまりにもその事実が嬉しすぎて泣いてしまいそうだった。


「…智…服……俺ので汚れる…」

「ん?」


弱々しく智希の肩を掴みぐっと押すと、有志の胸に飛んだ精液のことを言っているのだろう、服が汚れるからと心配した。
正直、もう汚れているのだが。

「…いいよ、これぐらい」

「でも…」

「じゃあ…脱ぐよ」

「へっ」


まだ、有志の目は潤み定まっていない。
力のない言葉が出るなか、智希は立ち上がり着ていた薄手のシャツを脱いだ。

「………」

智希が脱いでいるところをじっと見つめながら呼吸を整えさせ、現れた自分よりほどよく筋肉のついた息子の胸板を見て思わず目を反らしてしまった。

「…なに、上だけでそんな照れてんだよ」

「…だって…そんな…たくましくなってるって…思わなかったから…」


最後に智希の上半身裸を見たのは中学校1年だったろうか。
リビングで着替えているところをたまたま通りかかり偶然見た。



その時から身長は30センチ近く伸び、バスケをしているからであろう胸と上腕のくっきりした筋肉が綺麗についている。
それでも高校生。マッチョまではいかず、まだ痩せている。

しかし自分より遙に良い体をしているため自分の貧弱さに恥ずかしくなり、今更ながら横を向いて前を隠した。



「今更なに隠してんだよ」

「…だって…」

仁王立ちになり溜息をつくと、だいたい予想はつくと半分呆れながら笑った。
でもそこがまた、可愛い。

「お前…なに食べたらそんなでかく…」

「…父さんより大きくなりたかったからね」

「…俺ほんと貧弱で恥ずかしっ……えっ…わっ!!」


不意をつかれ持ち上げられた。
いわゆるお姫様抱っこだ。

「えっちょっ…何軽々持ち上げっ…」

「父さんこそなに食べてんだよ。めちゃめちゃ軽いよ」

「…煩い」

「……父さん」

「…っ」


すねる有志の額にキスを落とすと、そのまま歩いてリビングを出た。


「えっえっ…なに…どこ行っ…」

「俺の部屋」

「………」

「俺のベッド、広いからね」

「………」


察したのだろう、頬が一気に赤くなり、折角整った呼吸がまた荒くなって行く。




階段も簡単に有志を抱えながら登り、ドアの前で一旦有志を下ろしドアノブを回す。
先に有志を入れてエスコートすると、バタンっと扉を閉めた途端後ろから抱きついた。

「っ……ででっ…電気つけないのか…」

「……父さんは明るいほうがいいの?」

「えっ」

「俺は明るくてもいいよ。父さんの体ちゃんと見たいし」

「………」

観念、とはこういうことなのだろう。


「こっちきて」

「あっ…」

腕を引っ張られよろけた足取りでベッドへ向かうと、そのまま押し倒されベッドのスプリングと共に寝転んだ。

窓から受けるわずかな月の光と街灯だけが、二人を照らしている。
智希は数秒間有志を見下ろしながら何もせず見つめていると、先に痺れを切らしたのは有志だった。

「っ……とっ智っ」

「なに」

満面の、笑み。

「な…なんでそんなじっと見てん……だよ」

「…あぁ、ごめん。ちょっと色々思うことあって」

「思うこと?」

「うん。俺ね、本当に父さんが好きだよ」

「智っ…」

首筋にキスを落とされる。
至近距離からの智希の声は下半身を疼かせる、というのを先ほど実証済みだ。
そのためすぐ目を閉じ歯を食いしばった。
だからといって疼きが薄くなるわけではないのだけれど。

「本当に好き…」

「あっ…くっ…」

耳たぶを舐められ低く囁かれる。
そのまま舌を這わせながらまた首筋にいくと、赤い痕をたくさんつけながら愛撫していった。

「…好き…愛してる………だから…」

「……あっ…はっ」








「……だから…これから俺がすることを、罪だとは思わないで」





「…智…希?」


智希の声は、震えていた。


それに気づいた有志は智希の顔を見ようと体勢を変えた。
しかし簡単に腕を掴まれクルリと反転しうつ伏せにさせられる。

「えっ…ちょっ…なにっ」


「父さん、好きだよ」

「智?…智っ…あっ…ちょっ??」


膝を立たせて四つん這いになると、顔をベッドにつけたままのため臀部が高く上を向いている。
そこに軽く口付けをし、双丘を割って蕾に舌を這わせた。

「智希っ!!どこ舐めてっ…ちょっ…と!!」

やっとベッドに手をついて体勢を起こすと、抗議しようと振りかえるけれど圧倒的な力の差で体が動かない。
智希はあぐらをかいた状態で有志の股の間に潜り込み、双丘を掴んで固定していた。

そんな、見られたことも触られたこともない箇所を舐められ羞恥のあまり大きく暴れてしまう。

「やっいやだっ!智っ!そんなところっ……舐めるんじゃ…なっ…んんっ」


指が、一本入る。


「ひっ!!あっ!!…っく…」

「…やっぱきつい…か……。そうだ」

「……ん?」

智希は簡単に有志から離れるとベッドから下り机の引き出しを開けて何か探している。

「…智…希?」

あんなに嫌がっていたというのに、有志は逃げることはせず逆に智希を待った。


「…あったあった。よかったー捨ててなくて」

「…?」


ベッドに戻ってきた。
四つん這いをやめてベッドの上にペタンと座っていると、再び智希に押し倒され四つん這いにさせられた。

「ちょっ…いやだ…って!!智希!!」


「うん、大丈夫、痛くしないから」


「そうじゃなくて…あっ!!」

なにかの先端が有志の蕾に触れた。
とても冷たくプラスチックのようなその素材はとても気持ち悪い。

腰を引こうとした瞬間、細い先端がグイっと有志の中に入り、中に何か注入された。

「えっあっ…なにっ…これ…あっ…あっ!冷たっ……!どんどんっ…中っにっ…あっ…入ってくっる……!!」


粘着質の音と空気が、破裂する音と共にどんどん響く。
有志のその中に透明で粘りのある液が注入されていった。

「まっ…さ…か…これ…っ」

「うん。ローション」

「なんで高校生がこんなのっ…あっあっ…持ってっ…あっ」

「友達に貰ったんだよ。使わないで置いてたんだ」

「あっ…やめっ…どんどん…中にっ…あっ…奥にっ…あっ」


新品だったローションを3分の1ほど注入すると、智希は容器を取りベッドの下に置いた。
蕾から容器の先端が抜かれた瞬間、有志の蕾からだらしなく液が垂れてくる。


「…わーやらしいー」

「あっ…ちょっ…見るっ…なっ…あっ…やっ…出て…く…あっ」


もう拘束はしていないというのに、有志は四つん這いのままベッドに肘をついて悶えている。
後ろからそのなんとも卑猥な光景を見ているだけで、智希のソコは痛いぐらいに膨らんでいた。


「…いててて…俺も脱ぐか」

「…はっ…はっ…んんっ…ん」


カチャカチャとベルトを外しズボンを脱いでいると、その音に気づいたのか有志は目をトロンとさせながら智希の下半身を見た。
全てを脱ぎ取った智希の下半身で揺れる大きなソレを見て、恥ずかしくなりすぐ前を向く。


「…なんで目、反らしたの」

「っ…るさい…」

「ココも…大きくなっただろ」

「ちょっ」

有志の手を無理やり引っ張って自分のソコに当てると、熱く脈打つソレに触れた途端体をビクっと震わせた。


俺のより…大きい。


またカァっと頬が熱くなって、何もかも成長していた息子の体に喜びより羞恥が勝る。


「ごめんな、父さんのもまた大きくなってるのに触ってあげなくて」

「へっ…あっ」


気が付けば、また有志のソコは反応し始めていた。
智希が有志のソコを握り軽く擦ると、蕾の中に入れたローションがトロトロと零れていく。


「あぁ、勿体無い」

そう言いながら中に一本、指を入れる。

「あぁっ!!」


さっきより、反応が甘い。
腰を反らしてベッドに手をつくと、耐えれないのかシーツをクシャクシャに掴んでいる。

喜んでくれている。
嬉しくなった智希は長い指をグルリと裏返した。




「はあぁっ!」

また、背中が反る。

「…父さん…お尻気持ちいいの?」

「あっ…あっ…違っ」

「違う?本当に?」

「あぁっ!!」


意地悪くきつく中を掻き回すと、力が入らないのだろう体勢を崩し顔をベッドに押し付けた。
そのため、ローションで濡れいやらしく光る双丘が高くなる。

「もっとしてって?」

「違っ…あぁっ!」


上半身はまるで土下座するように額をベッドにつけ悶えている。
蕾の位置が高くなり弄りやすくなった智希は指を2本に増やしさらに掻き回した。


「あっ…あぁっ…んんっ…くっ」

増えた体積、ローションの卑猥な音、入る人差し指と中指の動き。
全てに翻弄され頭が真っ白になりそうだ。

「…父さん…父さんの顔見たい…」

「…いやだ」

小さな声で抵抗してみるも、もちろん簡単に腕を引っ張られ起こされた。
あぐらをかく智希の上に真正面で跨いで座らされると、智希のソレと有志のソレがくっつくぐらい腰を押され引っ付く。


「腕、俺の首に回して」

「…ん……」

言われたとおり首に腕を回すと、智希の指が有志の胸の突起をつねった。

「あっ!」

さっきまでローションを触っていたからか、とてもヌルヌルしていて気持ち良い。

「あははっ…父さん、もっと力込めないと。ローション、中から出てきちゃってるよ」

「あっ…いやっ…だっ…あっ…」


快楽のせいで力が緩むと蕾の奥も緩むようで、智希が刺激するたびに中から液が大きな塊で零れていく。


「ちょっと待って…ね、…よいしょっと」

「あっ…わっ」

軽々と有志を抱きかかえ壁に背中を預けると、智希の首に手を回していた有志の腕を掴み今度は二人のソコに手を当てさせる。

「…なに…」

「俺のと一緒に擦って…」

「…えっ」

「ほら、早く」

「あぁっ!」

また、胸をつねられた。
痛気持ち良い刺激に早くも後ろへ倒れてしまいそうだ。


「っ…んっ…はっ…あっ」

たどたどしい手つきで二人のソレを掴むと、自分より息子のほうが一回り、いや二回り程大きいことに気づきショックだった。

それに気づいたのか智希はクスっと笑い有志の唇にキスをすると、中断していた蕾への刺激を再開した。


「あっ?あっ…あぁっ…んんっ」

背中から手を這わせ双丘を撫でて緩み始めた蕾の入り口をつつくと、快感を覚え始めたのかその刺激だけで有志のソコが少し大きくなった。

「…気持ちいい?」

「……んっ…んっ」

智希の肩に顔を置いて荒く呼吸していると、ぐいっと2本、指が中に入った。

「んんっーーー!!」


雄たけびに近い低いうめき声を上げると、中をいやらしく円を描くように混ぜるその動きに思わず腰が動いてしまう。

「んっ…んっ…んっ…」

「…父さん、自分だけ気持ちよくなってないで、俺のも触ってよ」

「えっ…あっ…ごめ…っ…ん」

破裂しそうなお互いのソレを掴み再び擦ろうとするのだが、中を動く指が時折電撃が走ったような刺激を与えるためうまくできない。


「…もう、いいよ」

「あっ…」

智希はクスクス笑って手を止めると、ゆっくり指を取り出し有志を横向きに寝かせた。

「…とっ…智っ…」

「ん?」

「まさか…」

「…うん」

「…入れる…のか?」


不安そうに智希を見上げると、智希も不安そうな顔をしていた。






「…ダメ?」



「…ダメっていうか…俺達」



「…うん」



「…俺達は…血の繋がった親子なんだ…」


「…………」


「こういうことは…禁忌なんだよ…」



「…………」



薄明かりのなか、沈黙が続く。



「…俺思うんだけど」



「…………」



「禁忌って決めたのは、他人だろ」


「…………」



「俺たちは、俺たちのルールで動いたらいいと思う」



「…ルール?」


「…うん。俺は父さんの全てを独占したい。全てがほしい。父さんは?」



「俺も…智希を誰にも渡したくない」




「……じゃあ、それが俺達のルールにしよう」



「えっ…あっ…あっ…」


有志の頭を撫でこめかみにキスをすると、散々待たされた智希のソレを有志の蕾に当てた。




くる、そう思ってしまった有志は強張ってしまって入り口を固く塞いでしまう。



「…父さん…」

「なっなにっ」

震えている。


「…大きく深呼吸して」

「?」

「やってみて」

口調は優しく穏やかだ。


「……スー」

息を吸い、


「…ハァー」

吐いた途端。


「っ…父さんっ」


「?!っ…あっ…はっああぁっ!」


ぐっと力を込めて先端を押し込んだ。


「あっあっ…くっ…智っ…いっ痛いっ…」

「ごめんっ…ゆっくりするから」


智希はベッドに手をついて小刻みに動き始めると、中のローションが手助けして徐々に中に納まっていく。


「あっ…っ…あっ…入って…くっ…あっ…智っ…の…形がわかるぐらい…凄い密着してっ…あっ」

「半分…入ったよ」

智希は汗でびっしょり額を濡らしていた。
それだけ慎重に、壊れないようにしているからだ。


それからまた時間をかけてゆっくり小刻みに動き、お互いの息が荒く重いものになった頃、全て納まった。





「はっ…はぁ…はぁ…全部…入った…俺の…父さんの中に…」

「…う…そ…」

「本当だよ。俺のお腹、お尻に当たってるだろ」

「…ほんと…だ…あんなのが…入るなんて…」

「…ごめん、動いていい?」

「えっ…あっあっ」


溜まりに溜まった長年の想いを、今ここで。



「あっ!あっ!智っ!智希っ!あぁっ…あっ…ちょっ…激しっ過ぎっるっ!」

「はぁ…っ…父さん…父さんっ」

有志に抱きつき下半身だけを動かし突き上げると、あまりの気持ちよさにすぐイってしまいそうになった。
まだ、まだだ。
もっと、もっと。もっと父さんと繋がっていたい。

パンパンと肌のぶつかる音と智希の鼻から漏れるいやらしい吐息を耳元で聞きながら、内壁を擦るように突き上げられるその律動に酔った。
たくましい腕に抱きしめられながら、智希の見えないところで有志は涙を流す。
これは、なんの涙なのか。
有志にしかわからない。


「っ…くっ…っ……ごめっ…父さん…もう…限界っ…イって…いい?」


「んっ…んっはっ…んんっあっ…あっ…うん…うんっ」


「父さんもね」


「あっ!あぁっ!」


触られていないのに破裂しそうになっていた有志のソコを掴むと、律動に合わせながら擦っていく。


「あぁっ!智っ…!あっ…あぁ…あっあっ…イっイくっ!」

「うん…一緒にイこ」


ラストスパートをかけさらに激しく腰を打ちつけると、奥に当たる良い部分と連動して前のソコも振るえ開放を待った。


「ああっ…!あっ!んんっ…んっ…イっ…くぅっーーー!」

「父さんっ…父さんっ……っ……っーー」


有志は叫び声をあげ、智希は低く唸りながら頂点へ達した。





その後有志は気を失った。




「……父さん」

「………」



満足したのだろうか、スヤスヤと智希の腕の中で眠っている。


なんて、幸せなんだろうか。





眠る有志の唇にキスを落とすと、んっと唸り口をパクパクさせて再び眠る仕草に笑みがこぼれ、幸せそうに肩を抱いた。
小さい頃はよく抱きしめてもらったのを覚えている。
今では自分の腕の中に納まり安心して眠っている。


智希は再び有志にキスを落とすと、起こさないようソロソロと起き上がりベットを出た。

床に散らばっていた自分の下着を身につけ部屋を出るとそのまま脱衣所へ向かう。
タオルを取ってお湯で濡らし少し緩めに絞り、有志の着替えもついでに取り部屋へ戻った。



有志はまだ眠っている。
これは当分起きそうにない。昔から有志は一度眠ると次の日の目覚ましが鳴るまで起きないことはもちろん、知っている。

そっと布団を取り再び有志の裸を見ると、つい先ほどまでの出来事を思い出してしまい体が熱くなった。

我慢しろ。そう自分に言い聞かせて汚れた体を丁寧に拭いていく。





「…ごめんな、初めてなのにあんな激しくして」

「…すー…すー…」


小さい声で話しかけたが、リズムよく寝息が聞こえるだけで反応はない。
しかし少し寒いのか、無意識な体は眉を曲げ少し身震いした。

「あぁ、ごめんごめん」

謝りながらも可愛いなと思ってしまいクスクス笑ってしまう。

智希の液とローションで溢れかえってしまった蕾に指を入れ、中の液を掻き出してやる。


「…んっ…」


有志の体が少し動いた。
まさか起こした?
そう思い焦ったものの、有志の顔を見たが起きそうな気配はない。

「…父さん、よっぽど後ろ気に入ってくれたのかな」


また、幸せの笑みがこぼれる。


そのあと智希と有志が汚した白濁の液を全てふき取り持ってきた下着と部屋着を身に着けさせてあげると、智希は溜息を付きながら有志の隣に倒れるようにして寝転んだ。




「ふぅー…」


一通り処理をしてあげたため、少し疲れた。
でもこの疲労さえもとても幸せで、すぐ隣で眠る有志をじっと見つめる。


「…父さん……好き」


何度押し殺したかわからない感情をこんな目の前で言えるなんて。
いや、本人は眠っているのだが。



本当に、幸せすぎて今なら空も飛べるかもしれない。

父さんがあんなに俺のことを思ってくれていて
俺のことを独占したいって言ってくれた
俺が今まで付き合った女の子全員に嫉妬してたって言った
俺を好きだって言った



俺を



求めてくれた








「神様ありがとう…」



神様なんて今まで一度も信じたことなかったけど。
本当に幸せで、眩暈がするほど幸せで。


「ありがとう…ありがとう…」




眠る呪文のように呟きながら、段々その声は小さくなり深い眠りに落ちた。









「…んっ」


窓から差し込む光に起こされ先に目を覚ましたのは、
智希だった。


「……8時…か」

部屋の角にかけてある丸い時計で時間を確認すると、暖かい感触に思わず笑みがこぼれる。
すぐ隣にはまだ深い寝息をたてる有志がいた。


可愛い。


口を半開きにしながらスースーと息をし、無防備なその寝顔を見たのは何年ぶりだろうか。



昨日、俺は、父さんと。
繋がったんだ。

身も、心も。



ぐぅっとお腹がなるのは流石高校生。
しかも昨日の晩あんなに激しい有酸素運動をしたもんだから、腹の虫が地響きを立てている。

眠る有志の頭を撫で名残惜しそうに額にキスをすると、部屋を出てリビングへ向かった。


有志が起きてくるまでに朝ごはんを作ってあげよう。
きっと、有志もお腹を空かせているに違いない。

いつも一緒に食べている朝ごはんだけど今日は特別だ。
きっと照れて目が合わないだろう。
でも、なんていうか…。

今、自分は世界一幸せ者だと思う。




思わず鼻歌も歌ってしまう。

台所へ立ちご飯を炊く。
その間にいつものお味噌汁と玉子焼きを作り、ソーセージを炒め、最後にサラダを作る。

うん、相変わらず上出来だ。
味噌汁の味を確かめ終えると、リビングにある大きな時計を見た。
もう9時だ。そろそろ有志も起きるだろう。


「…起こしに…行くか」


まるで新婚の嫁になった気分で火を止め箸を置くと、少々照れるけれど再び自分の部屋へ上がる。





中に入りまだ寝息を立てている有志にクスリと笑うと、眠るすぐ隣に腰を落とし頭を撫でた。



「…おはよう、父さん。朝だよ、ご飯できてるから」



「………」


起きない。



「…父さん。朝だよ。朝ご飯あるから」


「…っ…んー…っ」


少し不機嫌そうながらも反応を見せ寝返りを打った。
体を丸めさらに小さくなっている。


「父さーん。おきてー」


「んー…んー…」


ユサユサと体を揺らすと、今度ははっきりと意識のある唸り声が聞こえた。
段々楽しくなりまた強く揺らすと、重たいその瞳をゆっくり開けキョロキョロと目を動かした。




「…ん…智…?」

「うん、おはよう…」

「……起こしてくれたの」

「…うん」


いつもより少し低くだるそうな声と態度がまた可愛い。
思わず抱きしめたくなったけどそれはまだ我慢と自分に言い聞かせる。

きちんと起きて、そして目が合ったら、キスをしよう。


「…今何時…」

「9時だよ。早く起きて。もうご飯出来てるから」

「…んー……ん?」

「?」



確実に有志の声のトーンが変わった。
半音高くまるで驚いているようだ。


「どうしたの?」





「…なんで俺、ここで寝てんの」





「えっ」










智希の部屋の布団を握りながら真剣にそう言うと、頭をポリポリかきながら起き上がった。


「…あれ…ここ…智の部屋?」


「……うん」



まさか。
動悸が激しくなる。


「なんで俺自分の部屋で寝てないの?昨日なんかあった?」





「…………」






まさか、まさか。
と、脳内で昨日の出来事がフラッシュバックされている。


まさか。



「昨日のこと…覚えてない?」


「…え…俺…なんか…した?」





「…………」





震えているだろうか。
それさえもわからない。




「うわーなに…こんなん初めてだー」

起き上がった有志はすぐにまたベッドに倒れた。
頭を抱えゴロンゴロンと悶えている。


「…どこまで…覚えてる?」

「……気分良くなってー…。あ、タクシーに乗せられたのは覚えてる」


はっとして再びベッドから起き上がると、あぐらをかきながらうーんと唸っている。



智希は、今にも泣きそうだ。


「そっからは?」

「………わかんない」

「家に帰ってきてからは?」

「……………わかんない」




「……………」




………有志の腕を掴みきつく揺らすと、辛そうにわからないと答えるその顔に自分までもさらに辛くなる。




まさか。




「え、でも俺着替えてる…。凄い記憶ないけどちゃんと着替えたんだー」

「………………」

「うわー記憶飛んだのとか初めてー」

「…………なんで…そんな自棄酒したのかも…覚えてない?」

「…………理由、あんの?」




逆に、聞かないでよ。




胸が痛すぎて破裂しそうだ。








「ってかこれ…うわっ…二日酔い?ってやつかな?凄い頭ガンガンするー」

「…………クスリ、持ってこようか?」


弱々しい智希は、少し目が潤んでいた。


クスリを持ってこようと立ち上がったのだろう、足取り悪く部屋を出ようとする智希に有志は呼び止めた。


「あ、いいよ智希。下行ってちゃんと自分の部屋で寝るー」

「…でもクスリ…」

「大丈夫だって」


有志も立ち上がる。フラフラだ。
それは有志が言う二日酔いのせいなのか、昨日の行為のせいなのか。


「お前のほうが子供なんだから、そこまで見てくれなくていいよ」


「でもっ」


智希を抜かし先にドアを掴むと、有志は振り返りいつもの 父親 の顔で微笑んだ。








「うん、でもそんな頼りがいのある息子に恵まれて、お父さんは嬉しいよ」


「っ…………」


















息が、できない。

















「じゃあ、折角の日曜だしもうちょっと寝るわー」



「っ………う、うん。起きたらご飯、チンして食べて」



「ありがと」




精一杯の言葉を振り絞ったというのに、有志の笑顔は普通すぎて泣き叫んでしまいそうだった。




バタンと、静かに閉まる扉が全ての終わりを告げる音に聞こえた。










「…………」


智希の部屋を出た有志はトントンと足音をたてて階段を降りていくと、そのまま台所から伝わってくるおいしい匂いを感じちらりとテーブルを見る。
智希が用意した料理を横目で見ながら1階にある和室の自分の部屋に入った。


パタン。


襖の閉まる音がする。


「………」


バタン。


有志が膝をつく音がする。



「っ…………」


ガタン。


有志が崩れ落ちる音がした。



「っ………っ………めっ」


必死に声を押し殺し懺悔するように額を畳に押し付けると、低く誰にも聞こえない声でそれは発せられた。









「っごめっ…智希ごめんっ…ごめんっ…ごめん智希っ…ごめんっ………智希っ智希智希っ…ごめっ」









次第に畳に雫が落ちシミを作っていく。


「ごめんっごめんっ…………っ………ごっ…………っく………ごめん」



















誰かが、この声を聞いてくれれば懺悔になるのだろうか。

















「智希ごめっ…ん……」















搾り出すその声はもう、枯れ始めていた。
















「…………あーあ、父さん、覚えてなかったんだって…」


智希は誰もいない部屋でベッドにもたれ、独り言を言いながら天井を見ている。

泣いては、いない。



「あーあ」




その、投げやりな言葉と表情からは、先ほど鼻歌を歌うまで幸せの絶頂だった智希と結びつかない。





「………あー………あ…」





目を、閉じた。






「神様も…ひどいな………」













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