5
時間はどのぐらい過ぎただろうか。
智希は部屋にある時計を力無く見上げる。
11時…。
2時間近く何もせずボーっとしていることに気づき驚いた。
息は、かろうじてしていたらしい。
智希は立ち上がり部屋を出ると、壁に手をつきながら下へ降りた。
有志はもちろん、いない。
リビングへ行くと2時間前、有志のために用意した朝食が並べられていた。
味噌汁は湯気をなくし味噌と水が分離している。
智希は折角作った朝食を全て台所へ持っていき流しに捨てる。
流れる味噌汁を微かに息をしながら見つめた。
作った玉子焼きも全てゴミ箱へ捨て再びリビングへ戻ると、ガタンと音をたてながら倒れるように食卓のテーブルに座り弱々しくテーブルの上に肘を預けた。
はぁ、と大きく溜息をついて有志の部屋、和室に目をやる。
物音一つ聞こえない。
疲れきって寝ているのだろう。
起きたら昨日のことを思い出してくれるだろうか。
しかし、思い出したところであの奥手な有志が受け止めることができるだろうか。
自殺なんかしないだろうか。
「………」
思わずゾっとして席を立ち上がり音を立てず和室の前へ行く。
「………」
でも、その襖を開ける勇気はない。
智希は再び2階へ上がり中へ入った。
何か、しようか。何かしてないと狂いそうだ。
トレーナー、そしてカーゴパンツに履き替えバスケットボールを抱えて降りた。
シンと静まり返る和室の前に立つ。
「……と、父さん…起きてる?」
「………」
返事は無い。
物音もない。
「…俺、バスケの練習してくる。家開ける…から」
「………」
いつもなら、必ず返事があるのに。
「……行って…きます」
「………」
名残惜しく襖に額を当てて目を閉じると、ぐっと歯を噛み締めその場をあとにした。
有志の返事が無いだけで、こんなに苦しいなんて。
「………」
バタン。
扉を閉める音が聞こえた。
智希が外出したようだ。
「…智…」
寝ていると思われた有志は部屋の壁にもたれ目を薄っすら開けていた。
目は真っ赤に腫れ頬には涙のあとがある。
くしゃくしゃになった髪の毛を直す様子もなくただ、目を開け一点を見ていた。
「…智………っ」
また、涙が溢れた。
「……ほっ」
いつもの場所、近所のバスケットコートで汗を流している。
一心不乱とはことのことだろう。
日曜の朝なので子供達が中で遊ぼうと思ったが、智希の威嚇とも思えるプレイに驚き入ることが出来なかった。
黙々と、一人で走ってはシュートを決める。
1時間は経っただろうか。
わざと疲れるような荒いプレー、攻撃的なシュート。
いつもよりシュート成功率は確実に悪い。
「はぁ…はぁ…はぁ」
無心になって何かしようと思っているのに、有志のことが頭から離れない。
一度手に入ったと思った宝物が幻だったなんて。
笑えない。
「…はぁー…」
汗を大量に流しながらコートの上に大の字になって寝転んだ。
今日は天気が良い。だからといって蒸し暑くはなく涼しい風が通り抜けるから快適。
でも心は全く淀んでいるけれど。
携帯も財布も持ってこず、iPodだけをポケットに入れ出てきた。
イヤフォンから流れる洋楽がシャカシャカと音を立てる。
はぁと大きく溜息をつきながら空を見上げると形の良い雲が見えた。
家に帰りたくない…。
一度も反抗期を迎えたことがない智希だが、この日は流石に家出したいと思った。
最後に立ち上がり軽くランニングをしてシュートを決めると、入ると思われたボールはゴールの縁でグルグルと回り、結局中に入らず落ちた。
「……ほんと、最悪」
心の不調は体に出てくる。
ボールを取りコートから出ると、特にどこへ行く予定もないので帰ることにした。
昼の1時か。
家帰って一眠りして勉強でもしよう…。
とぼとぼと家路につき扉を開けると、中からいい匂いがした。
「?」
いい匂い?違うな、ちょっと焦げてる匂い?
まさか。
「っ!!ちょっ…!父さん!」
勢い良く靴を脱ぎボールを持ったまま台所へ行くと、エプロンをつけ眉間に皺を寄せている有志が包丁を持って立っていた。
「あ、おかえり」
普通の顔に戻る。
「なにしてんの!ちょっ!煙煙!」
「へ?ああああああ」
フライパンから黒い煙が立ち込めている。
有志の体を擦り避けて奥のコンロにいき火を止めた。
どうやら、ハンバーグ(らしきもの)を作ろうとしていたらしい。
「あはは、ごめんごめん。いちょう切りってどんなんだっけーって思ってたらハンバーグ作ってるの忘れてた」
「…危ないなーもう…父さんは台所立ったらダメだって言っただろ」
「そんなこというなよお前がどっか行ってたみたいだから昼飯でも作って待っててやろうって思ったんだろー」
「………」
また、大きな溜息がでる。
でもこの溜息は先ほどの溜息とはまた少し違う。
「ハンバーグが食べたかったの?」
「いや、冷蔵庫の中にハンバーグなら作れそうな材料があったから…」
「……奥行ってて」
「え、でも」
「折角だしハンバーグ作るよ」
有志が握り締めていた包丁を奪い台所から追い出すと、バスケットボールをリビングの端に置いて智希もエプロンをつけた。
とりあえず包丁をまな板の上に置いて手を洗う。
「いっいいよ!ちょっと作れるかなーって思って作ろうとしただけだし、智希が食べたいもん作れば…」
有志は追い出されたものの申し訳なさそうに再び台所に戻ってくると、自分より背の高い智希の背中に一生懸命叫んだ。
それでも智希はエプロンの紐を結び、冷蔵庫から玉ねぎを取ると器用にみじん切りを始めた。
「別に、ハンバーグ作るよ」
有志の顔は見ず、今は料理人モードだ。
「でっでも」
「だからいいって、俺もハンバーグ食べたくなったから。父さんはソファにでも座ってて」
「…っ……うん…」
有志は一瞬息を飲んだ。
智希は、こんな男らしく笑う子だったか。
昨日のあの行為が見る目を変わらせたのか、それとも智希が変わったのか。
とりあえず昨日の行為が二人を変えたということは間違いない。
有志はとぼとぼとリビングへ行きエプロンを外しソファにかけると、そのままテレビをつけながらソファに座ろう…とする。
しかし。
「…っ…そういえばここ…」
智希に聞こえないぐらいの声で呟くと、座ることが出来ず立ったままテレビをつけた。
そうだ、ここは。
このソファは昨日、有志が乱れ射精した場所なのだ。
「……カバー…変えてる…」
ベージュだったカバーはむき出しの茶色い生地になっている。
「やっぱ…俺の…所為だよな…」
思わずかぁっと頬を染めて、折角さっき水風呂を浴びて気持ちを切り替えたというのにまた崩れ落ちそうだ。
ソファに座らずもたもたしていると、智希がリビングにやってきた。
「あれ、なにしてんの」
「わっびっくりした」
「…座らないの?」
「…カバーが…」
自分から地雷を踏んでみる。
有志が視線をソファに反らすと同時に智希も視線をソファに移し、取りに来た輪ゴムを取りながらじっと見つめる。
なに、言ってんだ俺は。
自分で言っておいて有志は後悔した。
このあともし昨日の出来事を言われたらもう、知らない振りをし続けれる自信が無い。
ゴクリと生唾を飲み智希を見ると、それと同時に智希も有志を見た。
するとフっと笑いあけたパッケージを輪ゴムで閉じながら有志に背を向けた。
「父さんほんと何も覚えてないんだな」
「…えっ」
また、ゴクリと生唾を飲む。
「………昨日父さんね、そこでお茶こぼしたんだ」
「…えっ」
思わず、半音高い返事。
「昨日べろんべろんに酔っ払って帰ってきて、俺にお茶頼んだのはいいけど口からダラーってこぼしたんだぜ。まじ最悪」
「………」
顔だけを有志に向けクスっと笑うと、向けられた本人は胸が締め付けられるような感覚に陥った。
なんて、辛そうな顔をしているんだ。
智希本人は一生懸命笑顔を作っているつもりだろうが、有志からすれば辛すぎて今にも泣きそうな顔をしていた。
ごめん、ごめん智希。
そんなこと言わせて。
こんな辛い想いにさせて。
智希はそのまま台所へ向かうと、有志はその背中を見ながら一筋の涙が流れた。
泣いたらダメだ。
あの日のことを認めてはダメだ。
汚い大人だと言われても仕方ない。
でもこのままだと必ずどちらかが壊れてしまう。
二人がずっと同じ場所で暮らせる方法はこれしかないんだと、有志はきつく心に押し付けて目を閉じた。
いつもの二人に戻った。
優しく少し鈍臭い父と、しっかりしているがまだ子供な部分がある息子。
朝起きれば智希が朝食と二人分のお弁当を作り、少しして有志が起きて来て新聞を読む。
ぎこちなさは無いものの、ナニかが変わっているのは気のせいではない。
保守的になりがちな大人と、前しか見ない子供の、埋めることの出来ない溝が出来始めていたのかもしれない。
「………」
「…どうした智。来た早々机にうなだれて」
教室につくとすぐ鞄を横にかけ溜息をつきながら顔を机に押し付けた。
朝、有志はいつも通り父親だった。
相変わらずスーツ姿は可愛かったけれど。
そんな智希にすぐ気付いた真藤は駆け寄り空いている前の席に座った。
わずかなスペースの智希の机に肘をつきからかいながらも少し、心配そうに智希のつむじに話し掛ける。
「なんかあった?」
「…………」
なんかあったな。
嘘がつけない智希にとって、否定しないことは肯定だ。
察した真藤は肘を机から離し足を組んで壁にもたれた。
開いた窓からの風が気持ち良い。
「……女関係?」
「………」
机にうなだれながらも首を横に大きく振る。
「………部活?」
「………」
また、首を振る。
「…………親父さん?」
「………」
ピタッと止まった。
やっぱこいつ可愛いな、そう思い少し笑みがこぼれた真藤だったが、足を組み直し腕を組んだ。
「…喧嘩したのか」
「………」
首を振る。
「……大好きなお父さんに再婚相手ができたとか」
「………」
首を振る。
再婚相手とか考えただけで吐き気がする。
「じゃあ何があったんだよ」
「………」
何も言わず動きが止まる。
「言えない?」
「………」
首を縦に一度だけ振った。
「…そっか。まぁ言ってもらえないのは少し寂しいけど、死にたいって思う前に一度思い切って相談しろよ」
「………ありがと」
篭りながらも小さい声で感謝した。
その言葉を聞き取った真藤はニコリと笑い、席を立って自分の席に戻った。
俺ってほんと、子供だな。
さらにまた、へこむ。
場所は変わって一年の校舎。
L字型になっている校舎は、短いLの底の部分が特待生組、長い横の部分が普通科組だ。
5階建の校舎は年々少子化の影響を受け、昔は一年生のクラスだけで4階と5階を使っていたのだが、今では4階だけの上に使っていない教室もある。
2年生は3階で、3年生は2階。
1階は実験室や準備室があり薄暗い。
その薄暗い1階を抜けると、部活動を行う者の為の更衣室がある。
授業を終え部活に行こうとしていた姫川は、その薄暗い1階を一人で歩いていた。
「………それにしてもいつ来てもこの廊下気味悪い」
鞄と部活用のスポーツバックを持って回りをキョロキョロしながら歩いていると、突然声をかけられた。
「姫川」
「っ………」
内心驚いて振り返ったが、薄暗い為顔が認識出来ない。声もあまり聞いたことがなく、眉間にシワを寄せながら姫川の元へゆっくり歩いてくるその人物をじっと見た。
「……姫川今から部活?」
2m程の距離でやっと顔が見えた。
誰だこいつ。
あ、バスケ部で同じ一年だ。
でも名前は思い出せない。
「…部活?」
「あ、うん」
必死に思い出そうとしていたら、再び話し掛けられた。
特待生ではないのはわかるのだが、なんせ今年は智希効果で一年生がたくさん入った。
自分もその中の一人だが、あまり印象のない相手を前に少しひるんだ。
「今日ミーティングなんだって」
「え、まじ」
「うん、さっき監督に言われて急だから連絡出来なくて、一年全員呼びに行ってきてくれって頼まれたんだ」
「そうなんだ。じゃあ秋田とかに連絡…」
まだ相手の名前を思い出せないまま、携帯を取りメールを打とうとした瞬間腕を掴まれた。
「あ、いいよ」
「でも…」
「言った言ってないでややこしくなるから、俺が全部言いに行くから」
「……そっか」
パタンと携帯をしまいポケットに直すと、相手はニコリと笑い姫川に背中を向けた。
「普通校舎の5階、旧1年20組の教室でやってるから」
「ありが…とう」
あんな誰もこない端っこの教室で?
一瞬そう思ったが、スタスタと歩いていく相手の背中を見つめとりあえず行ってみることにした。
「………」
ガラっと教室を開けると、そこには二人バスケ部員がいた。
でもこの二人も思い出せ無い。
「あれ、まだ二人だけ?」
「今日は一年だけでミーティングなんだって、今置田が全員呼びに行ってる」
真ん中の席で机に肘をついて怠そうに喋る。髪は少し長く、いつも部活中は大きめのヘアーバンドをしている奴だ。
もう一人はその男の前の席に座り、ニヤニヤしながら姫川を見るとすぐに携帯で何かを打ち始めたようだ。
スポーツマンらしく短髪だが、なんだか正直感じが悪い。
そういえば置田、あぁさっき声をかけてきた奴か。そんな名前だったな…。
そう思いながらドアの所で立ちすくんでいると、突然背中を押され姫川は教室に無理矢理押し込まれた。
バランスを崩しそうになったがこれでもバスケ部、膝をつく寸前で足を前に出し踏ん張る。
「いって…!何すんだよ!」
勢い良く振り返ると、置田だった。
「よし、始めるか」
「えっ…?」
ピシャンと扉が閉まる音が聞こえると、姫川の腹部に何かが当たった。
その直後、息が出来なくなり眩暈がする。
「お、流石。殴られても倒れはしないんだな」
ケラケラ笑う声が段々薄くなっていくと、置田に腹を拳で殴られたとやっと気付く。
姫川はお腹を抱え持っていた鞄を全て床に落としふらつくと、いつの間にか近くに来ていた二人に両腕を掴まれ捕らえられた状態になる。
まだ話すことが出来ない姫川は、瞬きをしながら自分より20センチ程高い置田を見た。
笑っている。
「菅沼、長谷部、今のうちに椅子に結べ」
「おー」
「了解」
置田、菅沼、長谷部。
智希に話しかけた姫川をよく思っていない3人だった。
「何するっ…」
やっと声が出るようになったが、姫川は椅子に座らされ、両手を後ろに回し固く紐で固定、足も椅子の足に太い紐で固定された。
ニヤニヤしながら姫川を見下ろすと、置田は姫川の制服に手を伸ばした。
「お前ちょっと生意気なんだよ。一年で特待でもないのに泉水さんに軽々しく喋りかけやがって」
「ちょっ…」
抵抗出来ない姫川のズボンに手を伸ばすと、カチャカチャとベルトを外し始めた。
姫川は驚き暴れようとしたが、菅沼に強く肩を押され身動きが取れない。
「で、お仕置きしようと思って。やっぱ殴ったりカツアゲしても、もしバレたら俺等停学か退学じゃん?だったらされた本人が誰にも言いたくないことしたらいいと思ってねー」
長谷部が置田の後ろから顔を出しニヤニヤと姫川の下半身を見ている。
「あっ…頭おかしいんじゃねーの?!」
姫川の形相に、3人は笑うだけ。
姫川は抵抗出来ないまま気がつけば置田にチャックを降ろされ、下着から萎えているソレを取り出されていた。
「やっ…ちょっ…」
「おい、見ろよ」
置田が出てきた姫川のソレを見ると、珍しそうに言葉を唸らせた。
菅沼と長谷部が楽しそうに中を覗く。
「あっはは!姫川まだ剥けてねーの?」
長谷部のその一言に姫川は顔を真っ赤にし震えた。
「……小せぇ。小学生みたい」
怠そうに言う菅沼の言葉を聞きたくない。耳を塞ごうと思うが拘束されているため何も出来ない。
ただ、羞恥に耐えるしかなかった。
「綺麗に被ってんなー」
「っ………!」
厚く皮で覆われたソコを置田に軽く弾かれると、いきなりの刺激に体が揺れた。
それを見て3人が笑う。
「可愛いなぁ姫ちゃんわぁ」
長谷部が腹を抱えて笑っている。
「……お前ら…こんな事してただですむと思うなよ」
「じゃあ言うのか、担任に」
「っ………」
置田の言葉は低いからかやけに重圧を感じる。
「男に縛られて…ココ弄られちゃいましたーって?」
「っぅ…!」
また、弾かれる。
「ココ、揉まれて」
「くっ……」
「どんどん大きくなって…」
「はっ…ぁっ…」
「……泉水先輩にもこんなことされたってバレるかも」
「っ………!」
置田の指は大人の形をしていない姫川のソコを弄ぶ。
何度も揉みほぐし徐々に皮をめくっていくと、ピンクの色をした本体が現れた。
「あはははは!超綺麗ー!」
菅沼が姫川の肩を押さえながら上から覗くと、まだ全く汚れていない姫川のソレを見て大袈裟に笑った。
早くも半勃ちになった姫川は抵抗することが出来ずただ、歯を食いしばり目を閉じているだけ。
泉水先輩にもバレるかも。
置田の言葉がループする。
「お前オナニーとかしてる?まじ真っさらじゃん」
長谷部が近寄り姫川のソコに顔をわざと近づけると、恥ずかしくなりモジモジと下半身を揺らす。
「なんか細くて中性的な奴ーって思ってたけど、ガチでホモだったんだなー」
「ちがっ」
「だって泉水さんの事好きなんだろ」
「それは憧れ…」
「じゃあコレはなんだよ、男に弄られて勃ってきてんじゃねーかよ」
「あっ…やめっ」
そんなの、無理矢理弄られたら勃つだろ!
と、言いたいのに長谷部にソコを擦られ思う言葉が出てこない。
顔を出したピンク色のソコは震え濡れ始めた。
あまり強い刺激に慣れていない為どんどん溢れてくる。
「すっげーやらしい光景」
置田がしみじみ言うと、姫川のズボンと下着を一気に膝まで降ろした。
「やめっ……っ…くっ…あっ」
その間もずっと長谷部にソコを弄られ声が止まらない。
「…菅沼、上もはだけさせろ」
「はいよー」
素直な返事で菅沼は姫川のシャツのボタンを外していく。
「やっ…め……」
無理矢理快楽に酔わされている姫川は、弱々しく抵抗するしかない。
ボタンを全て外しネクタイも取ると、小さく震えている胸の突起に爪をたてた。
「いっ…!」
「おー、でかくなったー」
姫川のソコをおもちゃのようにして遊んでいた長谷部が笑いながらそう言うと、再び菅沼が胸の突起をつねる。
「いっ…痛いっ…やめっ…」
「何がだよ、どんどんでかくなってんだろ」
「っく……うっ…」
「よし、二人とも離れろ」
置田の言葉で簡単に離れた二人は、姫川を置いて教室の端に寄った。
急に刺激がなくなり驚いた姫川がゆっくり目をあけると、カシャっという電子音が聞こえた。
まさか、と姫川が置田を見ると、置田は携帯のカメラで姫川の恥態をおさめていた。
サァーっと、姫川の顔色が青くなっていく。
「なっ…なにっ…なっ」
ガタガタと震え、うまく話せない。
「あーあ、姫ちゃん泣いちゃったー」
長谷部が再び姫川に近づくと、知らない間に流れていた涙を拭き頭を撫でた。
震えながら姫川は長谷部を見上げると、絶望感漂う表情でぽろぽろと涙を零す。
「いっ…今…携帯っ……カメラっ」
「うん、証拠写真撮らせてもらったよー」
子供をあやすように長谷部は姫川の頭を何度も撫でると、笑顔とは裏腹な残酷な言葉を吐き捨てる。
「あの写真、泉水先輩に見られたくなかったら一生先輩に話し掛けないか、バスケ部辞めてねー」
「っ………」
ひくっと、姫川の喉が鳴る。
「……姫川、返事は?」
置田の低い声が響く。
「わかりましたって言ったら紐ほどいてやるよ」
菅沼が怠そうに喋る。
しかし姫川は頷かなかった。
「……へぇ」
置田が、携帯を机に置き、ゆっくりと姫川の前へ歩いてくる。
怖い、正直本当に怖い。
しかし姫川は頷くことは出来なかった。
智希の為にこの高校に入った。智希とプレーしたい。
智希をもっと見たい。
智希と仲良くなりたい。
その想いだけが今の姫川を生かしている。
「じゃあもっと、恥ずかしいことしてもらうか」
「っ………」
渇いたと思った涙がまた、溢れ出した。
「…いきなりは流石にしないから安心しろよ」
「っ………」
震えが止まらない。
椅子の足に結ばれている為必然的に開かれた状態になっている姫川の足を掴み、強引に蕾が見えるよう引っ張った。
「いった……」
引っ張られた瞬間紐が食い込み生理的な涙が流れる。
「ココも随分綺麗だな」
「っ……!」
クスクス笑う置田の視線の先には、誰も見られたことのない姫川の蕾がある。
まさかと思い暴れたが、再び菅沼に肩を押さえられ、長谷部に膝をもたれカエルのような情けない格好になる。
姫川の股の間に入った置田は、ポケットから10g入りと書かれたハチミツの小さな袋を取り出した。
「なんでそんなの持ってんだよ」
長谷部がケラケラ笑う。
「家の冷蔵庫の中にあったんだよ」
置田はそう言いながら歯で袋をちぎると、出てきたトロトロのハチミツを手に取り姫川の蕾の入口に軽く塗った。
「っ………!」
くすぐったくで、身をよじらせる。
「おーすげー。パクパク言ってる」
長谷部が下品に笑うと、菅沼も見ようと姫川の股を覗き込んだ。
すると想像以上に卑猥だった為、ゴクリと喉が鳴る。
「すげー姫川…。女みたいにトロトロじゃん」
「…っ……っく」
聞きたくない。
だけど耳を塞ぐことは出来ない。
「中に指入れるぞ」
「やめっ…あっ……っく!」
置田の中指がゆっくり中に入っていく。
「おー。入っていくー。エロー」
指の付け根まで入ると、そのままグルリと一回転させた。
「あぁっ!」
「何今の声、女みたい」
「すげー今ので姫川のココ勃ったぜ」
中をえぐられた途端、爪先から頭まで電撃が走ったように痺れた。
思わず出た声に1番驚いているのは姫川本人だ。
「もっ…やめっ……」
「お前やっぱホモかよ。こっちが気持ちいいんだろ」
「あぁっ!」
置田が中をグリグリと掻き交ぜ姫川の快感を無理矢理引っ張りだす。
ハチミツの量を増やし中をほぐしていくと、簡単に指が二本入りそれと共に卑猥な音も鳴り響いている。
「っ…っ…っく…うっ…」
「姫川もうイきそうなんじゃね?全然触ってねーのにココビンビンだー」
ピンク色した姫川のソコは完全に上を向き、先端からトロトロと白濁の液が溢れている。
置田の指は何度も出し入れをしながら回転をつけ速度を上げていく。
初めて味わう未知の快感に、姫川は失神寸前だった。
「そろそろ写真撮るか」
「……やっ…」
朦朧としながらも、写真という言葉に反応し抵抗する。
「そうだな、でもやっぱ突っ込んでる写真の方が良くない?」
長谷部の言葉に、姫川は凍り付いた。
「お前、出来んの?」
置田が笑いながら指を離すと、手についたハチミツを拭き取り机に置いた携帯を取りに行く。
まさか、と姫川が愕然としていると、長谷部は嬉しそうに姫川の向かいに行きベルトを外し始めた。
「俺、これならいけるわー」
ニヤニヤと姫川を見下ろす。
「やっ……め…」
ガクガクと、体が震える。
「あー待って長谷部。手がベトベトだからトイレ行って手洗ってくる」
「えー」
置田が教室を出ようとすると、長谷部が口を尖らせベルトを外す手を止めた。
菅沼はケラケラ笑っている。
「早く戻ってこいよー」
「了解」
ピシャンと扉が閉まる音が聞こえ、姫川は少しだけ安堵した。
しかし時間が少し延びただけで、これから犯されることに変更はない。
「もうちょっと待ってな」
長谷部が姫川の頭を撫でる。
しかし撫でられるたびに不安は募り涙は溢れる一方だ。
「うっ……っく……」
「お前が悪いんだよ。泉水先輩のこと諦めるって言ったらこんなことにならなかったのにさー」
何度も、何度も撫でる。
……泉水…先輩……。
置田がトイレに行く10分程前、バスケ部では。
「あれ、姫っちがいない」
「あ、ほんとだ」
ストレッチをしながら清野は姫川がいないことに気付いた。
ペアを組んでいた智希も気付き回りをキョロキョロと見渡す。
「姫っち真面目だからいつも最初からいるのに」
智希の背中を押し前屈をしながら寂しそうに言う。
直球を投げる姫川は、清野にとって良いおもちゃなのだ。
「そういえば姫川、いつも一番にきて体育館の掃除してるのに来てなかったっすねー」
清野と智希の会話を聞いていた一年生が話し掛けると、智希は上体を起こし少し考える。
「……学校には来てたか」
「あっ、はい。今日食堂で見ました」
「………」
確かに、あんなに頑張っている姫川がサボるなんておかしい。
智希は考えながら立ち上がった。
「他に来ていない部員は」
「えっあっちょっと待ってくださいね!調べてきます!」
近くにいたマネージャーに声をかけると、マネージャーは顔を真っ赤にしながら出席簿を取りに行った。
「………モテますねぇ、智希くんは」
「清野さん……」
ニヤニヤと見上げてくる清野に溜息をついた。
「あっあの先輩!」
「ん?あぁ」
マネージャーが出席簿を持って戻って来た。
「今日は姫川くんが無断欠席で……。えっと、置田君と菅沼君と長谷部君がそれぞれ家庭の事情やクラスの仕事とかで休んでます」
「………」
誰だ。
正直一年をまだ全員覚えていないため名前を言われてもわからなかった。
しかし姫川が無断というのはおかしすぎる。
「……そっか、ありがとう」
「はっはいっ」
マネージャーは嬉しそうに一礼すると、智希に背を向け出席簿を置きに走っていった。
なんか、気になる。
なんか、胸騒ぎがする。
「……どうかしたんですか」
佐倉だ。
「あのさ、姫川が無断で休みらしいんだけど、なんか知らない?」
「?知らないです。でもあいつが無断ってなんかおかしいですね」
「だろー」
回りがまだストレッチをしているなか、智希はうーんと唸り腕を組んだ。
後輩の一人が休みだからって、こんなに悩まなくてもいいのに。
佐倉はクスっと笑い微笑ましく思う。
「無断は姫川だけなんですか」
「無断はな。あとは置田、菅沼、長谷部って3人が休みだけど、こいつらは無断じゃないらしい」
「置田…菅沼……長谷部?」
佐倉の顔が、一気に険しくなる。
「……なんだ、何かあるのか」
「…………」
まさか、と佐倉は先日の出来事、置田達が姫川に何かしようと話していたことを思い出した。
「佐倉、なんだ。なんなんだ」
佐倉の肩に手を置き軽く揺する。
その空気が少し尋常ではなかった為、回りの部員が一気に動きを止め二人を見ていた。
「じっ実は………」
「…………」
「お待たせ」
「おせーよ」
置田が帰ってきた。
ビクっと姫川の体が揺れる。
「オッケー。カメラの用意出来た。あとは長谷部のやりたいようにやれ」
「やったー」
長谷部はチャックを降ろすと、姫川を見て勃ち始めていたソレを取り出す。
「っ………」
目の前にソレを出され息を飲むと、恐怖のあまりまた震え始めた。
「大丈夫大丈夫ー。優しくしてやるからな」
「っ……やめっ…やめ……」
長谷部は怯える姫川の腿を掴み持ち上げると、ハチミツで濡れたソコを見つめる。
「入れた瞬間撮るからな」
横から置田がカメラを持って構えている。
菅沼はニヤニヤと笑っている。
「はーい、入れまーす」
「っ…やっ…」
先端を蕾に押し付け、ゆっくりと捩込んでいく。
「っ…!いやだいやだいやだ!!やめろおっ!!」
「ちっ…菅沼、こいつの口塞いでくれ」
「了解」
あまりの恐怖に叫び始める姫川。菅沼は口にタオルを押し込む。
「ふっ…ぐぐっ!」
「じゃあ仕切直しでー」
「っーー!!」
粘着質な音をたてて長谷部の先端が入りかけた、その時だった。
「姫川!!」
「っ!!」
「わっ!」
「えっ」
「…………」
全員が驚きドアを見ると、智希が息を切らせて立っていた。
「やべっなんで泉水先輩がっ」
長谷部は急いで出していたソレを中におさめ慌ててチャックを上げる。
「お前ら何してっ……!」
姫川の姿が智希の目に飛び込んできた。
あまりの姿に、言葉を失う。
「っ……行くぞ」
「でっでも」
「早く」
置田は菅沼と長谷部の背中を押し無理矢理教室を出て行った。
「……姫…川」
「っ……っく…くっ」
智希に見られた。
その事実に声を殺して泣き崩れる。
「姫川っ!」
智希は逃げた3人を追わず姫川の元へ走った。
すぐ口のタオルを外し、紐を解いてやる。
「姫川っ…」
「っく…せっ先輩ー」
「ひっ…め…かわ…」
体が自由になった瞬間、姫川は泣き叫びながら智希に抱き着いた。
何度も鳴咽を漏らしながら子供のように泣き叫ぶ。
「……姫川……」
「っく…先輩っ…っく…うっ…くっ……こわっ…怖かった……怖かったよー…っ」
「………」
胸の中で泣き叫ぶ姫川を、智希はぎゅっと抱きしめた。
「…ただいまー…ん?」
有志が家の中に入ると、見たことのない靴が置いてあった。
智希より小さいスニーカーは、丁寧に玄関の端に置かれている。
「あ、おかえり」
智希がエプロン姿のまま出てきた。
靴を見ながらまだ玄関で立っていた有志は、少し驚いて見つめる。
「…お、おぅ。友達?」
「うん、飯食わしてやってもいい?」
「それは全然構わないけど…」
有志は靴を脱ぐと靴箱に直し、鞄を脇に抱えてリビングに行った。
すると行儀良く正座をしてお茶を飲んでいる栗色の髪をした少年がいた。
姫川だ。
「あ、あああ。おかえりなさい。すみませんお邪魔しています」
有志に気づいて急いで立ち上がると、少したどたどしくお辞儀をする。
「いいよ、くつろいでてー」
「あ、ありがとうございます」
「後輩?」
「うん」
「あ、姫川って言います!」
「姫川くんね。なんも無い家だけどゆっくりしてって」
「はいっ!」
有志はニコっと笑うとそのまま部屋へ入った。
「………」
姫川は緊張している。
「正座なんかしなくていいからくつろいどけよ。父さんも言ってたろ」
「父さん??」
姫川の少し高い声が響いた。
きっと和室にいる有志も気づいているだろう。
「…若いだろ」
「お兄さんだと思った…」
智希はクスクス笑いながら台所へ戻り料理の準備を再開する。
智希が姫川を助けたあと、監督に事情を説明して(性的イジメを受けたことは言わなかったが)部活中であったが姫川を早退させ、さぼりではないことを話した。
聞くと家が共働きな上に本日両親は夜勤のため帰って来るのが明日の朝になるらしい。
姫川は大丈夫だと言ったが、智希には微かに震えているその体を離すことが出来なかった。
姫川を家に呼んだものの、今まで有志との時間を誰にも邪魔されたくなかった為友人を家に呼んだことがない。
ゲームなどをしない智希はとりあえず晩御飯を一緒に食べることを提案した。
「そうだ、家の人に連絡したか」
「あ、はいさっき携帯に電話して」
「いいって?」
「いいけど迷惑はかけちゃダメって…」
「そっか」
「俺いくつだと思ってんだよ…」
「親なんてそんなもんだろ」
本日の夕食、オムライスを作りながら微笑ましく笑う。
数時間前、震えてあまり喋ることが出来なかった姫川だが今では表情が戻りつつあった。
俺の、せいだ。
智希は自分を責めた。
今日起こったことを聞いたら誰も智希を責めないだろう。
実際、姫川も智希に対して怒りなど微塵もない。
自分を慕ってくれている後輩があんな目にあったことを許すことが出来なかった。
止めることはできたか?
答えは、NOだ。
ただ、こういう事態に起こる可能性があったことを知っていた人物がいる。
佐倉だ。
佐倉はあの3人の話を聞いていた。
では智希は佐倉を責めたか。
責めない。
この事は公にしてはいけない。
そう智希は思っている。
話を追求すると、姫川が何をされたか言わなければならないからだ。
姫川もそれは望んでいない。
今はただ、何もなかったようにご飯を食べて一緒にいてあげる。
それが最善だと思った。
「……お。いい匂い」
「あ、どうも」
「……どうも。父親らしくない父親でごめんねー」
「…ごごごっ……ごめんなさい…おっ……僕失礼なことっ…」
有志が着替えてリビングにきた。
長袖のTシャツに膝まであるハーフパンツだ。さらに父親に見えない。大学生ぐらいに見えると言っても過言ではない。
やはり先ほどの会話を聞かれていたのだろう、からかいながら姫川の隣に座る。
「…でもちょっと驚いた」
「?」
まだ正座をしている姫川に足をくずすよう言いながら自分もあぐらをかいて座ると、透明テーブルの上に置いていたリモコンを取りテレビをつける。
「智希さ、全然友達とか連れてこないんだよね。だからちょっと驚いた」
「え、そうなんですか?」
「うん。なんでだろうね、今まで一度も連れてきたことないよ。友達いないと思って担任の先生に相談したことあるしね」
息子の考えも知らぬまま、ケラケラ笑いながらチャンネルを回していく。
「…君のこと…」
「?」
「大事な子って思ってるのかな」
「……?」
姫川は思わず息を飲んだ。
有志があまりにも辛そうに姫川を見たからだ。
「出来たよ、テーブルにきて」
「はいよー」
「………」
智希がエプロンを外しながら呼びに来た。
その瞬間有志の顔も元に戻り、姫川は少しほっとする。
気のせい…?
少し心に何かモヤを感じながら食卓へ向かった。
「これ、全部先輩が作ったんですか?」
「うん」
「1から?」
「?1から」
前に並べられたレストランで出てきそうなオムライスとサラダを目にし、お腹の空いていた姫川は何度も唾を飲んだ。
正直、今時の高校生が作れるようなものではない。
「先輩って凄いんですね!バスケも出来て料理も出来て!」
「…そ、そうかな」
いつもの姫川だ。
興奮すると普段から大きい目をさらに大きく開き、音量も上がる。
褒め倒す姫川は普段苦手なのだが、この時正直智希は安堵した。
もちろん、今日のことを忘れることができるわけがないだろう。しかし前向きにいこうと思っていくれているのだと感じ嬉しかった。
「……智希ってモテるの?」
「なっ…!」
智希と姫川のやり取りをじっと見ていた有志は、オムライスを口に含みながらボソリと言った。
まさかそんなことを聞かれると思っていなかったため、智希はスプーンを置いて驚く。
「モテるなんてもんじゃないですよ!」
「…姫川!」
「普通科の女子達からキャーキャー言われてるし、先生にも好かれてるし、他校の女の子が練習見にきたりしてるし…」
「姫川!…そういうの恥ずかしいから親の前で言うなよ…」
「………」
「あ、ごめんなさい」
シュン、とあからさまに肩を落とし落ち込むと、智希はフっと笑い止めていた手を動かしオムライスを口に含む。
「落ち着いて食べろよ、冷めるぞ」
「は、はいっ!」
「………」
姫川は顔を赤くして勢いよく食べ始めた。
ONとOFFが激しいところがまた可愛い。
思わず姫川を微笑ましく見てしまった。その表情を、有志はじっと見つめる。
モテる…か
姫川くんも智希のことが好き…なんだろうな。
「?どうした?不味い?」
「えっあっいやいや。若いっていいなーって思って」
「なにそれ」
「先輩のお父さんも十分若いです!」
「…ははっ。30過ぎたおっちゃんだよー」
「………」
有志は小さく溜息をつくと、スプーンを持ってゆっくりオムライスを口に運んでいく。
何か、様子がおかしい。
智希はそう思った。
しかし姫川もいるため深く突っ込むことが出来ない。
この表情は…。
落ち込んでる?
なにに?
俺が、モテるって聞いたから?
「っ………」
「どうした智希?」
「?先輩?顔赤いですよー」
「…あ、あぁ、大丈夫。ちょっと熱くないか?窓開けてくる」
智希は立ち上がり奥の換気扇を回し小さい窓を半分開けた。
ダメだ。
意識してしまう。
あの日の有志を思い出してしまう。
『嫉妬…したんだ』
思った以上に有志の嫉妬心は強くて、それがまた可愛くて愛おしいと思った。
ダメだ。
ダメだダメだダメだ。
閉じ込めるんだ、自分の感情を。
大きく深呼吸をし、再び食卓へ戻った。
「そんな熱かったですか?」
「ん。ちょっとだけ」
「……ご馳走様ー」
有志はチラっと智希を見たようだったがさほど気に留めず、さっさと食事を終え皿を流しに持っていきリビングへ向かった。
「あ、姫川くん、お皿とかは全部テーブルの上に置いておいてね」
「はっはいっ!ありがとうございます!」
「あと、遅くなる前に帰るんだよー」
「はいっ!」
ニコっと笑う姿は目尻に軽いシワがあるものの、智希のような大きな子供がいるように見れない。
ラフな格好をしたその姿は二人の高校生を残して消えていく。
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