Chick【R-18/清野×姫川】(1)

今まで付き合った女の子は6人。
俺から告白したのは2人。
告白されたのは4人。

2ヶ月以上続いたのは、0人。







「ひーめー」


「はい」


「今週の土曜の夜から日曜までさ、俺の親ばぁちゃんち行くから家にいねぇんだ。土曜から泊まりにこなーい?」


「………」



…。黙りこむ。
こういうやり取り、もう何十回目だ。


「泊まりは…まだ親がダメって…」


「………そっか」


全然納得はしてないけど、納得したように頷き姫川の頭を撫でる。


終わった夏、インターハイ。
3年はみんな引退し、受験に勤しんでいる。
俺はなんとか大学から推薦を貰い、何も問題がなければ普通に入学ができる。
大好きなバスケもまだできる。

ま。簡単に言えば暇ってことだ。



だからほぼ毎日、引退したもののバスケ部に顔を出し自分も汗を流しつつ後輩の面倒を見てやっている。
新キャプテンになった泉水はなんだか腹が立つ程良いキャプテンだ。

俺が目を離したら姫川のやつ、やっぱ泉水がいいとか言うんじゃないか…
っていうのは、半分冗談。半分な。



今日も練習の後、水道場で顔を洗っていた。
姫川が遅れて水道場に来ると、一礼して自分も水を出して顔を洗う。

で、俺が日曜日泊まりに来いって言って、断れたわけだ。


まぁ、別にヤらせろって言ったわけじゃないど、ちょっと直球過ぎたかな。
焦ったらダメだってわかってるんだけど…。



「……すみません」

「いいって。じゃあ日曜どっか行こうぜ。映画とか」

「はい!」

「………」


可愛い。
水しぶきに揺れて輝く目。
濡れる長い睫毛、顎から首筋に滴る水。

俺はコンクリートの縁に手をかけて、ゆっくりかがみ唇を差し出した。

姫川は大きな目をさらに大きくさせる。
息を吸い込み胸に手を当てながら周りをキョロキョロと見渡す。

そのまま、ゆっくりと俺の唇に答えた。


「っ……ふぅ」

「……さ、帰るか」

「はい」



3秒程の軽いキス。
今時の小学生だってもっと凄いのすると思う。

でも不思議だよな。
全然これで、満足なんだから。







「……1…2…4…うわ、5ヶ月。来月で半年だ」

「何がですか?」

「付き合うようになって」

「……」


昼休み。食堂を歩いていたら泉水に会った。
泉水も一人だったから一緒に昼飯を食べることに。

俺はカレー、泉水はラーメン。
と、お互いパンを二つずつ。
たぶん足りなくてこの後もう一個別のパン買って教室で食べるだろうけど。

食べながら姫川と付き合う事になって何ヶ月になるか数えてみた。
今11月で、付き合い始めたのは6月の終わりからだから、もう5ヶ月。

交際歴最長記録をとっくに突破してた。
そして付き合ってからヤるまでの期間記録も同時更新中だ。


「…清さん恋人いたんすか」

「ん?んー…」


そか、言ってないか。
んー言うのめんどくさいなー。どうしようかなー。


「ってかどうせ姫川でしょ」

「どうせってどういう意味だよ」


正解だけど。


「知ってたの?」

「だって清さん常に姫川にセクハラしてたから」

「セクハラ〜?」


思い返してみる。
ま、してたっちゃーしてたかな。

ガヤガヤと煩い食堂の中で、俺は食べ終えたカレーの皿を端に置きパンに手を伸ばした。
こしあん。ある意味食後のデザートだ。


「清さんさ、全然後輩に優しくないでしょ」

「自覚はある」

「あるの?」


ケラケラ笑う泉水もラーメンを食べ終え、コーヒー牛乳を飲んでいる。
ちなみに泉水はブラックコーヒーが飲めないらしい。
普段は大人以上に大人っぽい奴だけど、こういうギャップが可愛いと思う。


「俺年下嫌いだもん」

「俺は?」

「最初は嫌いだった」

「今は?」

「好きー」

「きも」

「お前先輩に向かってなんだ!」

「あははっ」


こいつと話すといつも話しがそれる。


「お前がただバスケがうまいだけなら嫌いだったよ。一緒に昼飯も食べようと思わない」

「……どうも」


泉水は照れたのか、視線を外しゴクゴクとコーヒー牛乳を飲み干した。
同じくパンを取り出す。こいつはつぶあん。

「で、その年下大嫌いな清さんが一番苦手そうな姫川を可愛がってたからさ、好きなのかなーって」

「ほうほう」

「ぶっちゃけ姫川がいなかったら引退した後も部活に顔出してないでしょ」

「うん」

「即答っすか」


不服そうにブーと泉水が唇を突き出したので思わず笑ってしまった。


「うそうそ。全く顔出さないとかはしねーよ。それでも週2は顔だしてたかな」

「毎日ですもんね」

「だって暇なんだもん」

「恋人と一緒にいれるし」

「ね」


茶化すように首を傾けて可愛く言うと、泉水は俺が照れていることがわかったのか怪しく微笑んだ。
なんか悔しい。


「うまくいってるんすか」

「まぁ、ボチボチ」

「あ、もしかして体の相性良くないとか?」

「………」


ピリっと、空気に亀裂が走った。
1つ目のパンを食べ終えギロリと泉水を見上げると、泉水はしまったと顔に出して焦っている。

そう、そうなんだ。
俺が今悩んでいること。


「経験豊富な泉水くん。僕の相談乗ってくれるよね」

「えー絶対清さんの方が経験豊富だって」

「姫みたいなタイプは絶対お前の方が経験あるだろ」

「あ、それはそうかも」


泉水もパンを食べ終え、同時に2つめのパンを袋から取り出した。
俺はジャムパン。泉水は焼きそばパン。

「なんで締めが焼きそばパンなんだよ。その組み合わせなら普通焼きそばパンいって、あんパンだろ」

「いいじゃん色んな味楽しみたいの」

「なにそれ」


食堂のでかい時計を見て時間を確認すると、周りの目を気にせず泉水の手を握りしめた。


「泉水!」

「うわっなんすかっ」

「どうしたらいい?」

「とりあえず手離してください」


後輩におもいっきり嫌な顔をされゆっくり手を引き戻すと、ゴホンと咳払いをして真剣に泉水の目を見る。

「どうしたらいい?」

「んー……あーいう天然モノの小動物はとにかくビビらせたらダメです」

「うんうん」

「思い当たる節は?」

「いっぱいある」

「………」


今度は呆れた顔をされた。
どうしようもねーなーこいつ、みたいな顔。


「キスは許してくれるし、向こうからもしてくれるんだぜ。でもそれ以上進もうとしたらブロックかかる」

「なにしたの」

「一回うちに遊びに来た時、我慢出来なくて押し倒して服の中に手を突っ込んだ」

「じゃあ?」

「じゃあ、ビンタされて逃げられた」

「ぶっ…ははは!!」


あの時のことを思い出して左頬をさすった。
いや、わかってる。わかってるよ。
あの時は俺が悪かった。

だって姫川が俺の部屋にいるって思ったら興奮したんだもん。


「で、その後避けられたの?」

「次の日普通に話しかけたら、普通に返してくれた」

「特に避けられなかった?」

「そうだな。でもそれから俺んちに来てくれなくなったけど」


はぁ、と項垂れて、モグモグ勢いなくパンを頬張る。
ジャムパンうまい。


「うーん…。たぶん姫川は全てが初めてで、色々戸惑ってるだけだと思いますよ」

「ほんと?俺とはしたくない、とか…」

「……。まじでヤる事拒否ってるんなら、清さんが暴走したあと1〜2週間口聞いてくれないと思いますよ。あーいうタイプは」

「でも普通に喋ってくれるってことは…」

「……先に進みたいけど、まだ気持ちの整理がついてないんじゃないっすか」

「………じゃあやっぱ…待つしか…」

「ですね」


モグモグ。
なんだかさっきより喉にすんなりパンが通って行く。


「どのぐらい待たないといけないですか先生」

「…1年?」

「いっ……!……干からびちゃうよお」


モダモダモダ、と。
すると泉水はヘラっと笑い、すぐに真剣な顔になった。



「あいつは……」

「………」


わかってる、その先の言葉は。

置田達にやられたあの事件が、姫川のトラウマを生んだんだろう。
泉水は俺がそのことを知っていると知らない。
言う気もないだろう。

俺も別に知ってると言う気もないし、嘘ついて知らないと言う気もない。


姫川は体を触られるのが怖い。
上から見下ろされるのが怖い。

だから姫川から恐怖心がなくなるまで我慢しようと思ってた。



でも…

「干からびちゃうよお」

「参ってますねー」

テーブルに体を預け大げさに落ち込むと、上から苦笑いする泉水の声が聞こえた。

ただ、ヤりたいってだけじゃないんだ。
そりゃヤりたい盛りの高校生ですけど。

色んな姫川の顔が見たい。
俺の下で喘ぐ姫川。
姫川の全部を俺のものにしたい。


「……あ、やべ」

「?どうしました?」

「チンコ勃った」

「バカですか。予鈴鳴ったんで教室戻りますよ」

「あ!泉水!待って!もうちょっと俺の話し聞いてくれよ〜」

「また今度ね」


泉水はため息をつきながら立ち上がり、予鈴が鳴った為席を後にする生徒たちに紛れて本当に俺を置いて食堂を出て行った。


ひどい。
俺先輩なのに。



ま、待ちますよ。
我慢しますよ。

こんな気持ち、生まれて初めてなんだから。














日曜日、姫川との待ち合わせ時間は朝11時。
適当に昼飯を食べて、その後映画を観ようということになった。

いつもの公園に11時ちょうどに着いたというのに、まだ姫川はいない。


「おかしいな。いつも姫川が先なのに」


着信がないか携帯を見ても、なにも表示されていなかった。

なにかあったのか。
雲一つない青空を見上げ、とりあえずもう少し待ってみることにした。


すると5分もしないうちに姫川が走ってきた。

「せっ先輩!!」

「?おー姫川ー」

はぁはぁと汗をかきながら必死な顔をして走ってくる。
姫川には悪いけど、必死な顔がまた可愛いと思ってしまった。


「すっすみませっ…はぁ…はぁ」

「5分遅刻ー」

「すみませんっ…はぁはぁ…」


流れる汗、額に張り付く前髪。

ダメだ、真昼間から欲情しちゃう。


「で、どうしたんだ?」

「え?あー…、ちょっと寝坊して」

「?」

なんだか空気が一瞬濁った。
なんだ?嘘をついてる?

姫川は嘘を付くのが下手だからな…。

でも、ま、いっか。



「よし、じゃあ飯行こう」

「はい!」


まだ少し荒い息を抑えて、ゆっくり俺の隣につく。

あー、今すぐ抱きしめたい。

我慢、我慢だ。



その後近くのレストランで昼飯を食べ、映画館へ向かった。
すでにチケットは買っていて、財布の中から姫川の分を出すと何故か嬉しそうに俺を見上げた。

「?なんでそんな嬉しそうな顔してんの?」

「や、なんか先輩ってカッコ良いなぁって思って?」

「チケット持ってるだけで?」

「準備してくれてる所が!なんか大人だなーって」

「そうかー?」


そんなこと当たり前だし、みたいな顔をしたけど、ちょっとカッコ良いって言われて嬉しかったりする。
姫川はいつも直球だ。

脆いようだけど、意志は強く崩れにくい。
俺はお前より意志弱いからな。我慢出来ず襲いそうになるし。

ついでに飽き性だ。
だから付き合っても2ヶ月以上持たない。




「お前の方がカッコ良い」

「嘘ばっか」

「ほんとだって」

「……俺なんか…子供ですよ」

「?…姫?」

「……俺、トイレ行ってきます」

「ん、あぁ」


上映10分前。
なんだか姫川の目に曇りが見えた。
トイレに行くと俺に背を向けた姫川の後ろ姿をじっと見る。

怒らせた?



「…難しいなぁ」

気がついたら声に出していた。




トイレから戻ってきた姫川はいつも通りだった。

わからない。


「あんま人いないですね」

「この映画マイナーだからな」

「えー前作はすっげおもしろかったのにー」

「なー」


思いの外姫川とは趣味が合った。
今日観に来た映画はSF物の第2弾だ。

1がおもしろかったから2も期待。
2からは恋愛も絡んでくるみたいでさらにおもしろそうだ。

なのに、客はそれほど多くなかった。



俺達は後ろの席から3列目の真ん中に座った。
両隣、前後には人がいない。

ま、静かだからいいんだけどね。


それに…。



「っ…!」

「暗いから誰にも見えないよ」

「………はい」



座った瞬間、右隣に座る姫川の左手をギュっと握る。
姫川は一瞬ビクっと体を震えさせたが、すぐ握り返してくれた。


うん。映画最高。


「…先輩」

「ん?」

「……映画、いいですね」

「……ね」


何これ超楽しい。
これから始まる映画よりも今姫川と手を繋いでる事の方が楽しい。

俺結構乙女だったんだな。



そして映画が始まり、物語は終盤を迎えた。


やっぱり1同様、2も凄くおもしろくて観に来たかいがあったと思った。
しかも最後に、思いを確かめ合った主人公と恋人が抱き合うシーン。
出演者の演技も、音楽も映像も演出も、全て素晴らしかった。

エンドロールが流れ初める。
まだ席を立つ人はいない。

ふと姫川を見ると、なんと、泣いていた。


「…姫、泣いちゃった?」

「えっあっうわっわっ」

「くくっ…」

「すげ…恥ずかしい…」

「最後の抱き合うシーン、凄くよかったな」

「…はい……」


ぎゅっと、暗闇の中手を握り合う。
なんて心地良いんだろうか。

映画を見て綺麗な涙を流す姫川。
きっと心も綺麗なんだろう。

うん、決めた。俺頑張る。
姫川から俺を求めてくれるまで、我慢する。

今はこうやって手を繋いでいるだけで幸福だ。







と、一大決心したばかりだったのに。




「うそーどしゃ降りじゃんかー…」

「………」


映画館を出ると、あんなに快晴だったというのに空は薄暗く雨が降っていた。
行き交う人達は傘もささず走っていたので、急に降ってきたのだろう。

でもこの雲、分厚すぎる。

「当分止みそうにないなー…。せっかくこの後公園行って体動かそうと思ってたのにー」


俺は空を見上げ天気に怒った。
するとさらに雨脚が強くなった、気がした。


「ごめんな、天気予報全然見てなかった…」

「あっあの、全然!大丈夫です!」

「そっか、じゃあどうすっかなー。とりあえずその辺の店でも入ってお茶するか」



キョロキョロと周りを見渡し、小さなカフェがあるのを確認した。
雨が当たらないように地下を通ろう、と言おうとした時、急に腕を引っ張られた。


「先輩、すみませんちょっとだけ走って」

「へ?」

「行きます」

「ちょっ!わ!わわわっ!」



突き刺さるような雨の中突然俺の腕を掴んで走りだした。
視界の悪さに目を細めながらよろけ、たまに躓きながら後をついて行く。

数分してなんだか見たことある景色が現れた。

あれ、この辺って…。


パシャパシャと水しぶきを蹴って二人は走り続ける。
姫川は俺を見ようともせず、ひたすら走り続けた。


あ、やっぱりここって…。


「…はぁ、はぁ…。はい、どうぞ」


「……どうも」



ここ、姫川の家だ。


一度だけストーカーみたいなことをした。
姫川の家の住所を調べ行く、という下手したら通報されるレベル。

前は柵までだったけど、今日はうちに入れてくれるのか。

ん?



おいおいおいおいやばくないか。
さっき姫川が俺を求めるまで待つって言ったけど、急に家で二人っきりになったりしたらどうなるかわかんねぇ!

そっか、あれか。
姫川だってまだいやだよな。それなのに俺を呼ぶってことは、親がいるってことだよな。


「あの、遠慮せず上がってください。……親、明日の朝までいないんで」

「………」



思わず生唾を飲み込んでしまった。




え、OKサイン?







そのまま3階に連れて行かれ、姫川の部屋に案内された。
いかにも姫川らしい、バスケのポスターやバスケ漫画、バスケ映画がずらっと並んでいる。
壁にはユニフォームが貼られ、有名選手のサインが書かれていた。


「ほんとバスケ好きなんだなー…」


姫川はというと、俺にバスタオルを渡しそのまま部屋から消えてしまった。

ちょっと待っててください、とだけ残して。

読めない。
どうしたらいいんだ。

「あ、このタオル姫川の匂いする」


ちょっと変態じみた発言をして、自分で自分に笑った。


数分すると姫川が戻ってきた。髪の毛は濡れ、服もびしょびしょだ。
ま、俺もなんだけど。


「あの、風呂沸かしてきたんで…入ってください」

「えぇ?そこまではいいよ。タオルあればすぐ乾くだろうし」

「でもそのままだと風邪引いちゃうかも…」

「俺はいいよ、着替え無いし。それよりお前風呂入ってこいよ」

「……先輩がいいなら、俺もいいです」


…。
読めない。


「………」

「………」


何この沈黙。
部屋は寒くないけど、微かに聞こえる雨音が寒く感じる。

俺は強引に髪の毛を吹き、そのまま濡れた上半身を吹いた。

「ほら、姫もとりあえず着替えろよ。びっしょびしょだろ」

「………」

「…姫?」


姫川はバスタオルをギュっと掴んだまま、ドアの前から動こうとしない。
下を向いて何か考えている。

あ、もしかした今更後悔してる?俺を家に入れたこと。


「……俺、帰るな」

「えっ」

「傘貸して?明日学校で返すからさ」


ドアの前で立つ姫川の肩にポンと手を乗せると、にっこり笑いタオルを返した。
そのままドアノブに手をかけ、ドアを開けようとした瞬間。

「嫌だ!」

「ちょっうわっ」

「ダメです!いやです!折角…折角…!」

「え、姫川?なに?まじどうしたんだ?」


「俺、先輩に抱かれたいです!」


「………」


瞳孔が開いた。



「姫っ……」

「先っ…んんっ」


さっきの我慢宣言は撤回。
だって、これって姫川が俺を求めてくれたってことだよな?


姫川の腰に手を回しグイっと引き上げると、やや乱暴に唇を奪った。
すると足元にパサっとタオルが2枚落ちる音がする。

「っ……はぁ…はぁ…先輩…」

「姫…ほんとに…いいの?」

「……はい。先輩になら…何されてもいいです」

「おまっえ……」

「んんっ」


もう一度強引にキスをする。
濡れた髪の毛がちょっと気持ち悪いけど、すぐ熱で乾かしてくれそうだ。


「…姫…おいで」

「は、はい」


俺は自分の部屋の様に姫川を手招きすると、角にあるベッドへ連れて行った。
まず俺が座り、姫川を見上げる。


「……もっかい聞くけど…いいの?」

「…うん」


コクン、と頷く。
頬は赤くなり、心拍数も早くなっている。

俺は姫川を立たせたまま、ぎゅっと腰に手を回し抱きしめた。

服は濡れていて気持ち悪いのに、この安心感はなんだろう。
姫川から聞こえる鼓動もまた、俺の安心感を倍増させる。

「…そのまま立ってて」

「は、はい」

緊張してるようだ。
体が強張っている。


「服、脱がすよ」

「はいっ」


元気だ。
笑いそうになる。


スっと姫川のTシャツに手を入れ、ゆっくりめくり上げた。
見えた先には、きめ細かくて白い綺麗な肌。

「はい、ばんざーい」

「っ……」



緊張がほぐれるよう、わざと子供を扱うように服を脱がせる。
上半身裸になった姫川は、恥ずかしそうに目を伏せ唇をかみしめた。


「…すげ、すべすべ」

「……っ…俺…全然筋肉つかなくて…」

「えームキムキの姫とか嫌だー」

「で、でも薄っぺら過ぎて…全然…こんなの見て欲情しないでしょ?」

「どこが。全部うまそう」

「うまそうってっ…あっ!」


綺麗な色をした胸の突起を口に含んだ。
口の中でコロコロ転がしてやると、感じるのか俺の頭に手を回し甲高い声をだす。

これこれ。
見たかった姫川のやらしい姿。
俺しか知らない、姫川の顔。

片方の突起も親指でグリグリ押してやると、一層声が大きくなって身震いした。

感度良好。最高だな。


「……姫」

「はっははっ…はいっ」

めちゃどもってる…。可愛い。

「下も見ていい?」

「しっ……」


急にシュンっと肩を落とした。
恥ずかしい、というより、なんだか辛そうな顔をしている。


「……し、下見ても嫌いにならない?」

「なにソレ。意味わからん。ついてるもん一緒じゃん」

「………お、置田達に…無理矢理…されそうになった時…。見られて……。まだ…俺のアソコが子供だから…すげ……笑われて……」

「………」



今すぐ置田達をぶん殴りに行きたい。


「…先輩にも見られた…嫌われる…と思って……そう思ったら…その…怖くて……」



だから俺を拒否ってたのか。


「……姫、見せて」

「で、でもっ」

「見せて」

「……うん」


姫川は顔を真赤にしながらズボンのベルトを外し、ゆっくりチャックを下ろした。
微かに雨音が聞こえる中行われる行為。

なんだか神秘的だ。

ズボンをバサっと床に落とすと、履いていたトランクスに手を伸ばした。
ためらっている。

「………」

姫川は一瞬揺らぎ、俺を見た。
俺は真剣な目で見つめ返す。

「………っ…」


勢いをつけて、下着が下ろされた。


「……っはっ……恥ずかしくて死にそう」

下着もパサっと音を立てて床に落ちた。

今、姫川は全裸だ。



姫川のソコは揺れていた。
反応を初めていて、小さいソレが皮を被ったまま前を向こうとしている。


き、綺麗すぎる…!
思わずゴクンと喉を鳴らした。
俺にもこんな時代があったのか…。


「せ、先輩…!そんなジロジロ見ないでください」

「あ、ごめんちょっと見とれてた」

「っ…!バカにした!」

「してねぇよ」

「あっ」


揺れるソコの先端を摘んでみる。
反応した。じんわりと中から液がしみ出している。


「でもちょっと嫉妬してる」

「嫉妬?」

「うん。だってこれ、置田達は見たんだろ。誰にも見せたくねーし」

「………」


しかも弄ったんだろ。
まじ置田の奴、今度会ったら殴る。


悶々と嫉妬に燃えていると、姫川が俺の肩に手を置いた。


「…先輩」

「ん?」

「俺も…先輩の見たい」

「……いいよ」

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