[--]　ようこそいらっしゃいました。お2人とも、今日はよろしくお願いします。
「はあ」
「気の抜けた相槌を打つな」

[01]　お名前をひとりずつお願いします。
「鈴原きよらです」
「……」
「こっちは奈良坂先輩です」
「指を差すのはやめろ。年がら年中顔を合わせてるのに、苗字しか覚えてないのか」
「覚えてますよ。奈良坂透先輩です。ならさかとおるです」
「なら良い」

[02]　どちらが師匠ですか？ また、年齢差はどのくらいですか？
「多分私が弟子です。二歳離れてます」

[03]　お2人はどのような師弟関係なのでしょうか？
「破たん寸前」
「まあ、そんなところだな」
「認めるんならもうほんと縁切りませんか」

[04]　お互いを何と呼んでいますか？
「奈良坂先輩」
「きよら」
「先輩、初っ端から呼び捨てでしたね」
「年下なんだから構わないだろう」

[05]　お2人は出会ってからどのくらい経ちますか？
「一年半ぐらい？」
「章平が高校に入る前だから、そのぐらいだな」
「その、古寺くん基準で生きるのやめてくれません？」

[06]　初めて会った時の、お互いの印象をお聞かせください。
「あの人の周りだけ人いないのマジモーゼ」
「照準は合ってるのに着弾が狙いより上にズレてる。肩に余計な力が入りすぎてるし、何より向上しようという意志が見受けられない」

[07]　お師匠さんは何故、お弟子さんを取ることにしたのですか？
「なんでですか？」
「流れで」
「じゃあいつまでも古寺くんと幸せにやってればよかったのに……」
「今更しょうがない」

[08]　お弟子さんは何故、このお師匠さんを選ばれたのですか？
「選んでないです。ご機嫌で訓練してたら横から色々言ってきて、そのまま流れで」
「ほら、流れだろう」
「その流れ作ったの先輩ですけどね」
「入ったばっかりだろうＣ級隊員が隣のブースでミスショットを連発してるんだ、放っておけなかった」
「そんなんだからモーゼなんすよ」

[09]　お2人の仲はよい方だと思いますか？ また、ケンカはなさいますか？
「可もなく不可もなく」
「顔合わすと九割口論になるのにどこに可があるんですか」

[10]　何か出会い始めの思い出を聞かせてください。
「ない」
「ないすね」

[11]　以前と変わったな、と思うところはそれぞれありますか？
「一年ちょっとで変わるも何もないしな」
「奈良坂先輩は五十年後も全く変わってなさそうですね」

[12]　お師匠さん、お弟子さんのよいところを述べてください。
「ない」
「想定内でした」

[13]　ではお弟子さん、お師匠さんの尊敬できる点を述べてください。
「向こうが“ない”つってんのに私だけ言ったら完全に間抜けじゃないですか」
「……あるのか？」
「自分の胸に手を当てて考えたらどうです。ないです」

[14]　お2人のお住まいは一緒ですか？ 一緒の場合、それぞれの家事の分担を教えてください。
「違う」
「奈良坂先輩とだけは一緒に暮らしたくない」
「如何いう意味だ」
「そのまんまですよ」

[15]　何か日課になっていることはありますか？
「口論？」
「日課とまではいかないだろう」

[16]　相手のここが許せない！
「章平章平五月蠅い。古寺くんのこと好きすぎ。学校で友達とかいなさそう。空気一応読める癖に場の雰囲気に配慮しようとしない。こっちが一応話してて気まずくならないよう気を使ってもそういうの一切察しようとしない。私生活のことにまで口出されて鬱陶しい。髪の毛長い隊員なんて他にもいるし、ちゃんと狙撃する時とかは一つに纏めてるのに切れ切れって五月蠅い。頼んでもないのに家庭教師しなくて結構です。自分が頭良いからってこっちの理解お構いなしに話進めて、何度も“それってどういうことですか”って聞いてるのに一切答えず自分が満足するまで喋りきってからの“他人の話を聞いてるのか”とか棚上げすぎて本当に腹立つ。清々しいまでに自分の価値観で動いてて凄い。顔以外全部許せない」
「とりあえず髪を短くしろ。話はそれからだ」
「嫌です」
「……顔は許せるのか」
「顔が許せなかったら出会った時点で防犯ブザー鳴らしてます。顔だけです。顔は許します。ほんと顔だけは好きでした。遠くから鑑賞だけしていたかった」

[17]　ここだけの話、相手の弱味や秘密を握っていたりしますか？
「握りたいけど、今のところ握られてるだけな気がする」
「おまえに弱みや秘密なんて高尚なものが存在するのか？」
「私だって誰にでも自分の成績吹聴して回ってるわけじゃないんですけど」
「そうか」
「そうです」
「それじゃあ、次に赤点を取ったらロビーに成績を貼り出すから真面目にやれ」
「多分先輩が施設管理の人に怒られるだけだろうし良いっスよ」

[18]　師弟関係が逆になることはありますか？
「ない」
「天地がひっくり返ってもあり得ないことだな」
「は？　わかんないじゃないですか先輩が女装癖に目覚めたけど今の流行が分からなくてどのワンピ買うか困るみたいなことがあるかもしれふぁい」
「天地がひっくり返ってもあり得ないことだな」
「わーひゃから、はふぁひてくらふぁい」

[19]　この師匠でよかった、この弟子をとってよかったと思うことをそれぞれ教えてください。
「後悔しかない」
「ストレス耐性がついた」
「へー。先輩如何にも凄い“心狭男”って感じですもんね、良かったじゃないですか！」
「皮肉も解せないのか」

[20]　最後に、お2人でメッセージを交わしてください。
「明日補習なんで本部来ないです」
「こっちがライン送ってるのに数日未読のままで、顔を合わす直前に“忙しくてスマホ弄ってなかったです”とかあからさますぎる嘘を飛ばして帳尻を合わせようとするのはやめ……まさか“帳尻を合わす”の意味も分からないのか？」
「それが分かるなら、なんでもっとレベルを下げた言葉で喋れないんですか？」
「ラインぐらい即時反応しろ」
「スマホがよく水ポチャするんですよ」
「屁理屈をゴネるな。屁理屈の意味は分かるな？」
「奈良坂先輩の特技の一つってことは薄らと分かりました。ご丁寧にどうも」

[--]　お疲れ様でした。
「あざす」
「……ちゃんとした言葉で喋ったらどうだ」

質問配布元：あなぐら


　★誰もいないところで互いの良いところ、尊敬出来る点を聞いてみた。

「狙撃に掛ける根気と狙撃センスはある。変に捻くれたりしてなくて、素直な反応を見せるから分かりやすい。良くも悪くも単純、というタイプの人間は嫌いじゃない。嬉しいとか楽しいとか、そういった感情が露骨に顔に出るのは可愛いと思う」

「まー、安定して高水準の狙撃をこなす点は普通に尊敬してます。当真さんからは“万年二位”って言われてるけど、当真さんが一位なのは、運っていうとあれだけど、あの人自身の才能によるところが多いと思うし……もちろん凄いし、カッコいいけど、でも純粋なスナイプの腕では奈良坂先輩のが上だって、私はそー思ってます。あとまあ、たまーに何言ってんのか意味わかんないことあるけど頭は良いです。それと、鬱陶しいばっかだけど面倒見も良いし、カッコイイし、ガッコーではさぞかしモテるんだろうなーって思います終わりです尊敬はしてないし良いところもないです」

師弟関係の2人に20の質問

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