乱文倉庫
(師弟の寄りを戻した後らへんのやりとり)

奈良坂くん「……謹慎処分で一週間訓練室出入り禁止って、一体今度は何をしでかしたんだ」
きよら「万年ドベに万年ドベって言ったら向こうが手ぇ出してきたんで応戦しただけです。他の人の訓練邪魔しちゃったのは悪かったなーっておもってます。でも忍田さんに反省文も出したし、説教は十分です。先輩にはかんけーないです。じゃあと二日後にあいましょーさよなら」
奈良坂くん「章平が一部始終見てたぞ」
きよら「……そら、へーえ。奈良坂先輩にゆー前に、ラインででもなんか声掛けてくれたらよかったのに。古寺くんってほんと何かってーと先輩に言いますよね。それで、私あと二日は訓練出来ないんで、帰って良いですか」
奈良坂君「章平のことをチクり魔みたいに言うのはやめろ。ラインも未読無視するし」
きよら「未読無視って人聞きの悪い……スマホが水没したんすよ」
奈良坂くん「その手にあるものはなんだ」
きよら「通信機能の備わった金の延べ棒……?
奈良坂くん「おまえは知らないかもしれないが、それを人はスマートフォンと言うんだ。兎に角おまえは失踪癖があるし、連絡がつかない以上は他人に聞くしかないだろう。それで章平が教えてくれたんだ。第一、おれに関係する話をおれが探って何が悪い」
きよら「地球上に存在する人類の全てと他人ですみたいな顔してる癖にしつこい」
奈良坂くん「どういう顔だ、それは……おれが二位なのは事実だし、所詮おれの前では何も言えない有象無象の軽口を本気にして突っかかるな。馬鹿馬鹿しい」
きよら「そーです。馬鹿です。馬鹿はおうちに帰ります」
奈良坂くん「そもそも万年二位でパッとしない仕事ぶり、だなんておまえも口にするだろう。自分が当真さんより劣ってるとは思わないが、客観的に見てあの人のほうが目立つのは確かだ。ただスナイパーの仕事は派手だから良いというものではないし、おれは自分の仕事ぶりに自信を持っていて、結果も出している。格下に何を言われようと気にならない」
きよら「だから、私がむかっ腹立ったんです! 先輩は関係ないんだって、最初から言ってるじゃないですか」
奈良坂くん「……きよら」
きよら「私が先輩を馬鹿にするのは良いんです。だって、私は自分より先輩のが凄いって分かってるし、先輩だって、当真さんだって、そうです。私が先輩のこと馬鹿にしても、誰も、私自身だって本気にしません。でもあいつ、ほんとーに先輩がマグレで二位に上がったみたいな口ぶりだったんですもん。私よりずっとポイント低くって先輩の足元にも及ばないくせにって、ムカついたの。命中率競ってもまだギャーギャー五月蠅かったから、手だしてくるように仕向けて、床に転がしてやりましたよ。足払いでマウント取って、顔面スレスレに床殴ったらビビッてやんの。狙撃の腕でも、単なる喧嘩でも、どっちも女で年下の私に負けるなんてバカみたいねって言って、スッとした」
奈良坂くん「……喧嘩でも、勝ったのか」
きよら「勝ちました。あんなん何度やっても勝てますよ。私が黙らせてやりたかっただけなんで、先輩にとってそれが馬鹿馬鹿しかろうと如何でも良いです。てゆーか、そう思うだろうなとか分かってましたし」
奈良坂くん「そうか」
きよら「――っだから、先輩のせいとかじゃないから! 端からイライラしてたんです! 二日目だったの! 先輩のことダシにする形になって、それは悪かったなって思います。でも私、自分が悪いことしたとは思ってません」
奈良坂くん「おまえはわけがわからない奴だな」
きよら「それ一番先輩に言われたくない奴っすね」
奈良坂くん「きよら」
きよら「はい?」
奈良坂くん「女で年下の自分に負けるなんて……のあとに、先輩は自分よりもっとずっと凄いんだ、単なるスナイパーとしてなら誰よりも先輩が一番有能だとか言ったらしいな。章平の聞き間違いでなければの話だが」
きよら「あ、そっれ、キキマチガイッスワーホントコマルーコデラクンミミワルーイ」
奈良坂くん「トリオン体の時に聞き間違えがあるようだったら、そもそもボーダー隊員にはなれない」
きよら「……よけーなお世話だって、言って下さいよ。お前に言われるまでもないとか、一週間も訓練しなかったらどれだけ腕が鈍るか分かってるのかとか、そーゆーおせっきょーするタイプでしょ。先輩は」
奈良坂くん「忍田さんに二時間説教された上で、半日かかりで反省文書かされたんだろう。東さんにも、荒船さんにも叱られてる。説教は十分だと、自分で言ってたはずだ」
きよら「呆れるでしょ、フツー。みんな呆れてたし、奈良坂先輩とか、口実にされた分よけー怒っていーのに。言っておくけど、私はんせーしてませんから。でも次は、誰もいないとこで、誰にもバレないよーにやります」
奈良坂くん「次が楽しみだな」
きよら「何が? 弟子が刃傷沙汰起こすことの何が楽しいの?」
奈良坂くん「おれが貶されて嫌だったと、おまえがそう思ったのは素直に嬉しい。また、そうやって庇ってくれるんだろう?」
きよら「庇ってない! ムカついただけ。ストレス発散。大体、奈良坂先輩はひぼーちゅーしょーとか全然気にしないし、無駄骨でしかないのに庇うわけないでしょ」
奈良坂くん「そうか」
きよら「そうです」
奈良坂くん「それなら構わないが、あまり危ないことはするなよ。やたら恨みを買って、生身のところを狙われたら困ったことになるだろう」
きよら「……きをつけまーす」

奈良坂くんと不肖の弟子


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