「サスケー! サスケー! サスケェ!!」
「……トバリ、そうはしゃぐな。みっともない」
「な、ん、なんで」
「うーわ」
「誰だ、あのねーちゃんとにーちゃん」
「サスケくんの家族?」
「――っ知るか、どっちも他人だ」
「その割に、お姉さんのほうサスケくんに手を振ってるけど」
「こんにちは、はたけ上忍。少し見学させていただいてよろしいですか」
「……なーにやってんの、君ら。アカデミーじゃあるまいし、父兄の見学なんて前代未聞だよ」
「いえ、カカシさん。これもれっきとした任務です」
「そう。私たちもいずれば上忍として若い忍を教え導くでしょう。にも関わらず、」
「トバリにはコミュニケーション能力が不足している……しかも説明下手です。相手のレベルに応じた柔軟な対応が出来ない。何でも自分でやってしまう。指導者としての才能が全くない」
「それは君も以下同文! ということで、猿飛先生が『カカシ率いる第七班を見学してこい』と」
「ほんとは?」
「ほんとも何も、全て猿飛先生の寛容かつ思慮深い判断です」
「トバリが受付窓口にて『これ以上大名共の護衛を任されるなら、いっそ妾として囲って貰ったほうが効率がいい』と呟いた結果兼ねてより希望していたアカデミーの教諭職の適応力があるか如何か試すだけ試す運びとなり、オレは三代目直々にその付き添い兼監視をと依頼されました」
「よし、素直なのは良いことだ! でも絶対君らには無理だろうから、かえんなさい!」
「イタチと一緒にするのは止めてください。私は本気で教職を目指しているんです」
「オレはその気がないだけで、やる気があればトバリよりかはまともな結果を出せます」
「何その“オレはまだ本気出してないだけ”みたいな言い草。如何して君らは二人セットになると途端に子どもっぽいこと言いだすんだろうねえ。そういうトコ結構好きなんだけど、今は邪魔」
「はたけ上忍の草刈りの邪魔は決してしないと約束します」
「写輪眼のカカシが果たして如何様にして効率良く草刈りをするか、勉強させて貰います」
「夏を目前に青々と生え盛る雑草を思うに、ビンゴブックの賞金がまた上がってしまいますね」
言っておくけど、オレ草刈らないからね。刈るのこいつらだからね。今すぐ帰れ
「よっ火の国一の草刈名人」
「トバリちゃーん……冷やかすのなら、せめて真顔で言うのやめてくれない?」
「だから同じ冷やかすにしろ、僅かなユーモアのこもった草刈正雄にするべきだと言っただろう」
「なにそれ。オレが知らないだけで君ら世代で流行ってるギャグか何か?」
「いえ、初耳です。しかしイタチが言うからには、そこには海よりも深い思慮があるのでしょう」
「特に深い意味はない。常日頃からお前とカカシさんは良好な関係を築けていないようだったから、わけのわからない発言を漏らすオレという仮想敵を得ることで仲が深まるのではないかと」
「なるほど、やはり君の親切心には感じ入ってしまうな。感謝する」
「昔から長幼の序の何たるかをわきまえていないお前の世話は慣れっこだ。気にするな」
「……だからね、君ら全然笑わないからふざけてるのか真面目なのか判別つかないんだってば」
「ねーちゃんもにーちゃんも、サスケに似てるけど、全然サスケに似てないってばよ……」
「さっきから、他人だって言ってるだろうが……このウスラトンカチ」
「なーに照れてんだよ! 様子見に来てくれる優しい兄貴と姉貴がいて良いじゃねーか」
「兄貴でもねえし、姉貴でもねえ。てめえの耳は飾りか?」
「ほら、揉めだしたでしょーが。どーすんのコレ。いちお、今からお仕事なんだけど?」
「そういう間の抜けた喋り方は、やはり児童を意識したものですか?」
「他人の話をスルーした上で貶せるのって、ほーんと木ノ葉広しとは言えトバリぐらいだよね」
「そんな……平時における任務成功率百パーセント、写輪眼のカカシと称される高額賞金首だけど実際には写輪眼を使うより普通に雷遁を使ったほうが軽傷で済むのに、うちは一族でないにも関わらずわざわざ定期的に写輪眼を使って病院送りになることで木ノ葉のみならず周辺各国にまで勇名を轟かせると同時に選民思想の強いうちは一族から総スカンを食らい、2n-2nで五年連続抱かれたい忍一位を獲得していながらその有能さ故に男女交際に耽る暇がないのは誰の目にも明らか。それでも堂々と十八禁小説を読みふける胆力を誇るはたけ上忍にそう言って頂けるとは光栄です」
「トバリってぶっちゃけオレのこと嫌いだよね」
「そうですね。やはりイチャイチャパラダイスが悪いのかと思われます」
「いや、オレがイチャイチャパラダイスに目覚めるより前からもう風当たりキツかったよ」
「興味深い学説ですね」
「どこらへん? どこらへんが学説と言うに値する内容だった?」
「そもそも私ははたけ上忍のことを心から尊敬しているのですが……一体私の言動のどのあたりに険を感じるのでしょう。これはまた日を改めて、ゆっくり話し合う必要がありそうですね」
「やだよ。そんなメンドクサイ話してたらガイまで湧いてきちゃうでしょーが」
「で、結局、今日はねーちゃんたちも一緒にやんだろ。もー掛け合いは良いってばよ」
「流石カカシさん、自らが反面教師になることで部下たちが個々で今後の見通しを立てられるよう考えて自堕落に振る舞っているわけだ。トバリ、メモを取れ。お前に足りないのはこれだ」
「私にはメモを取る必要はない。君こそお節介の暇があるならメモを取ったらどうだ」
「(帰りたい)」
「さ、サスケくん、大丈夫……?」
「てゆーか、どうせ見学するならアスマの第十班を見に行ったほうが良いんじゃないの。イタチは兎も角、トバリはオレよりアスマのが付き合い長いし、あいつが何を考えて指示を出してるとか分かりやすいでしょ。大体、可愛い弟が“アイツ良い年して過保護な身内が草刈り任務の見学に来たらしいぜ”とかしょーもない噂を立てられたら可哀想だとは思わないわけ?」
「そんな詰まらない噂を立てるような人間に下忍試験を突破出来るとは思いません」
「右に同じ。そもそも中忍になれば身内と任務を務めることもあるだろうに、照れて実力を発揮できませんでした、私情を忘れきれずに素直に協力出来ませんでしたなんて言い訳は通用しない」
いや、君らが見学するのって、そういうのとは全く事情が違うよね?
「クソが……!」
「ほら本人『クソが』ってゆってるし、アスマんとこ行きなさいアスマんとこに」
「まーもーいーーじゃん!!! 火影のじっちゃんが見学するよーにっつってんだろ?!」
「それがそもそも問題っていうか、職権乱用ってーか……駄目な大人っていうか……」
「兎に角火影のじっちゃんの指示で来たってんなら、カカシ先生やサスケがグチャグチャ言ってもしゃーないって……オレ、うずまきナルト! ねーちゃんたちは?」
「そうか、ナルト。素直な良い子だ。私は千手トバリ、こっちの彼はうちはイタチ。サスケ――」
「このウスラトンカチ、何勝手に話進めてんだ。どうせ、いつも通りトバリがつまらないことでゴネただけなんだからカカシの言うとおり追い返すのが一番なんだよ……さっさと帰れ」
「サスケ……いい加減同班の仲間をウスラトンカチ呼ばわりするのは控えろ。お前も下忍となったのだから、仲間を重んじ、互いに信頼関係を築くことが出来ないとは言わせない」
「……兄さんには関係ない。大人に囲まれて育った兄さんとオレとじゃ事情が違うんだよ」
「そうか……ウスラトンカチ」
「は?」
「トバリ改めウスラトンカチ、サスケはこんなことを言ってるが、同班の仲間でなかったにしろ同年代にあたるお前はオレから“ウスラトンカチ”と呼ばれてみて、今どんな気持ちになった」
「上手く言葉に出来ないけれど、なんだか貰い事故にあった感じがして辛い」
「まー実際貰い事故だしね」
「ウスラトンカチ自身もこう言ってる。お前はウスラトンカチと呼ばれた相手にも、彼らを大切に思う人間がいるのだと何故察することが出来ないんだ。そうだろう、ウスラトンカチ」
「わかるとも……ドキザクソ正論出しゃばり野郎、君はいつも正しい」
「……誰がキザで出しゃばりだと?」
「君が先に私をウスラトンカチとか言ったんだろう。イタチ改めドキザクソ正論出しゃばり野郎」
「サスケを説得するため、“サスケから見たナルト”に条件の近いお前相手に言っただけで、別にお前の頭が薄ら惚けててトンカチレベルに頭が固いと詰ったわけではない。そのクナイを仕舞え」
「そうスラスラ出てくるってことは、多少なり私に対する悪意があったということだろう。自慢の弟の前で無様な姿を見せたくないなら、まずお前が忍刀の柄から手を離せ」
ナルト、今回ばかりは全面的にオレが悪かった
「いや、オレも……ちっとお前の気持ちを無視しすぎたってばよ」
「二人とも、思ったより教職向いてるのかもね。じゃれ合いに夢中で気付いてないだろうけど」
「……この人たち、いつもこうなんですか?」
「いや、二人とも単体だと割とまともなんだけどねー? たぶん」
「そこから一歩でも動いてみろ。やられる前にやるのが忍というものだ」
「やられる前にやると明言する時点で矛盾が生じる。相変わらず、お前は口数も多ければ、血の気も多いな。それこそ忍としてどうなんだ。二代目火影が草葉の陰で泣くぞ」
「私の有り様はおじいさまと関係ない」
「どうするんだってばよ、これ」
「……ほっとけ、この馬鹿どもはシスイさんかイズミさんの仲裁が入るまでこのままだ」
「んじゃ、折角だからここに置いてこっか。ほらサクラも、早くしないと置いてっちゃうよ」
「え、あ……はあ……でも、サスケくん、ほんとに良いの?」
「忘れろ。オレたちは集合に手間取っただけで、誰にも会わなかった。いいな」
ふたりはなかよし
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