「カカシ、これがトバリだ! 愛想はないが素直な奴だ、よろしく頼む」
「ほんとーに表情筋がピクリともしないね。生きてるの?」
「そんでトバリ、これがカカシだ!! 凄いだろ? くノ一にモテモテでプラプラそこらを歩くだけで女子供にキャーキャー言われて鬱陶しいのなんの! すらっと長い手足に不健こ、いや透き通るような白い肌に銀髪、片目隠してるあたりが神秘的でカッコイイだろ? な?」
「そこまで褒めちぎられると何か怖いんだけど」
「うすい」
「そう! 色素が薄いんだよ!! よくわかったな、全体的に儚げで綺麗だろ?」
「ちょっとなんか、ごめん距離取っていい……何、ほんと怖い」
「待て待て待て!! 怖くねーから! な、どうだ、トバリ! カッコイイだろ? カカシお兄ちゃんみたいなハンサムを見つめてるだけで胸がドキドキしてこないか? そう、それが」
「まるでドキドキしない」
「はあ?」
この人、全体的にうすっぺらくてよわそう
「蹴ったら毬みたいに弾んで消えてっちゃいそうなガキのくせ、言ってくれるねー」
「トバリ、よく考えろ。オレに言わせれば、お前は何も分かってない。これがスタンダードイケメンなんだよ!! こいつが!! この薄っぺらい体と如何にも人生舐めてそうな気だるげな表情と陸に打ち上げられてから五時間経った深海魚のような瞳が“セクシー”って奴なんだ!!」
「……何となく趣旨は悟ったけど、急に喧嘩売る必要ないよね」
「せくしい」
「そう、よく覚えたな。よしよし、良い子だ。これが全国基準の“セクシー”だ。カッコいいってのは、カカシとか、オレのことを言うんだ。お前はガイのがいいかもしれんが、忘れろ」
「お前、いつどこの誰にカッコいいとか言われたの?」
「この人より、ガイさんのほうが“どんき”として使えそう」
「そうだな。でもイケメンは鈍器として使えるか否かじゃないんだ。わかるな?」
「オレはね、イケメンと鈍器を結び付けてる時点で矯正不可能だと思うよ」
「本当に、この人のようなひとがカッコいいの?」
「さっきから黙って聞いてれば、十歳も年上の人に“この人”呼ばわりはないよね」
「カカシ、頼むから変な絡み方するなよ。お前はただトバリの学習教材としてそこに突っ立ってろ。お前の不用意で喧嘩っ早い言動のせいでますますB専になったらマジで殺すぞ」
「ハイハイ。ね、トバリちゃん。オレの名前はさっき、ちゃーんと紹介されたでしょ? そしたら“この人”じゃなくて、名前で呼ぼうね。礼儀知らずのトバリちゃん」
「何も分かってねえだろうが……四歳の子どもに名前呼ばれないだけでキレんなよ」
「キレてないって。不愛想で無口で礼儀知らずな子どもの躾に協力してるんじゃない」
「……はたけ上忍」
「はたけ上忍?」
「三代目からの“でんぶん”とはいえ、ご高名は存じ上げていますので。はたけ上忍とお呼びするのが一番良いかとはんだんしました。ごふまんでしたら、どうお呼びするべきかお教えください」
「ん、良いよ。それで。カカシさんでも、はたけ上忍でも、好きに呼んでちょーだい」
「ありがとうございます。ぶしつけなたいどを取って、本当にすみませんでした」
「そう気にすんなよ、コイツは誰にでもこーなの。口を開くとねちっこい嫌味がネバ〜っと出てくるんで、滅茶苦茶モテるのに未だに恋愛経験ゼロの悲しい男なんだよ。許してやってくれ」
「アスマはさっきからオレを上げたいのか落としたいのか、はっきりしてくれる」
「そらトバリは不愛想で無口で礼儀知らずだけど、でもお前にコケにされる謂れはないからな。ったく、ちっとばか気に食わんからって、お前には年上としてのプライドはねーのか」
「年上だからこそ、この不愛想ちゃんには縦社会のキビシサを教えるべきでしょ」
そんなのは、アカデミーで嫌でも学ばされんだよ!! 今はただその無駄に良い容姿をフル活用して、トバリにベタベタに優しくして惚れさせろ! トバリがガイと結婚したらどーすんだよ!!! トバリの子どもにガイのあのこっゆい太眉が遺伝するだろ!? 最悪トバリがあんなミョウチキリンなファッションに染まったら、テメエ、末代まで祟ってやるからな……!!!
「それこそオレ関係なくない? 念書取ったらいーじゃないの。億が一トバリちゃんが可愛く育っても、ぜったーいに手は出しませ〜んって。ま、こんなコケシ誰が手出すんだって話だけど」
「ふざけろ」
「はたけ上忍は……いやに」
「待て、トバリ。待てマジで待て、ほんと、コイツはいつも誰にでもこうなんだよ! お前が特別嫌いで嫌味言ってるとかじゃなくて、今ちょっと虫の居所が悪いからツンツンしてるだけで……あっほら、髪の毛もツンツンしててワイルドでかっこいいだろ〜? もーオレなら速攻惚れるね」
「そんなにオレが好きなら、オレを妙な用事に付き合わせないで欲しいんだけど」
「良いから、もうお前は黙って」
「いやに細々とした“してき”をくださるだけあって、その“かんせい”も“せんさい”そう」
「トバリ、急に如何した?」
「はたけ上忍はじょせいに人気があるとのことですが、それだけありとあらゆることに“びんかん”な“かんせい”を有している方は中々いないように思います。それにとても“かしこい”ようですから、まず他人の“こうい”を真正面から受け止めるなどといった“ぐこう”も冒さないでしょうね。“いせい”だけでなく、だれからでも、だれも自分のなかに立ち入らせないための“きょせい”は見ていて参考になります。そうやって“したしみのある悪意”で線を引いておけば、ぶえんりょに関わってくるひとをいくらかふるい落とせるんですね。さすがは木ノ葉のほこる上忍、はたけカカシ」
「トバリ、ちょっと、あの、ほら……こいつも、悪気はないんだよ?」
「わたしも情を交わす相手はふやしたくないので、はたけ上忍を見習おうと思います」
「凄いだろ、敬語バッチシだろ? な、カカシ! トバリジョ〜ク! なんつって、あの、ほら」
「べっつにー? オレは君と違ってコミュニケーション不全人間じゃないけど」
「“じかくしょうじょう”があってごまかすなら、それは少し問題ですね」
「あのね、小生意気ちゃん」
「悪気はないんだよ、カカシ。思った事がスルッと出ちゃうだけで、相手は四歳の子どもだぞ」
「ガキんちょにはわかんないだろーけど、大人は大変なの。わかる?」
「それはそうでしょうね。そもそもがわたしたちは“しょたいめん”ですし、はたけ上忍がいかなる人物であるか全く“りかい”していません。アスマの言う通り、そして先ほどはたけ上忍もおっしゃっていましたがわたしには“こみゅにけーしょんふぜん”のきらいがあるようです」
「トバリ、そんなマジで謝らなくていいから。な? 頭上げろ?」
「わたしの“みじゅく”ゆえに、ふかいな思いをさせて申し訳ありませんでした」
「……ほんとーに悪気がない、ただの子どもってワケ」
「当たり前だろ。お前なあ、四歳の子どもに頭下げさせて罪悪感とかないのかよ」
「いやトバリちゃんが勝手に下げただけだし、不可抗力でしょ」
「そこまで追い詰めたのはお前だろうが。どーしてくれんだよ、トバリがますますブ男に走るようになったら!! 世の中のイケメンは皆が皆お前みたいに捻くれた奴だって深層心理に植え付けられたトバリは年頃になるや当然の如く独り身のガイに擦り寄って“あっつくてこゆ〜い青春”を過ごすハメになっちまうだろ! オレが必死に面倒見てきた妹分の未来を如何してくれる!!
アスマのほうがカッコいい
「え」
「わたしは、はたけ上忍よりアスマのほうがカッコいいと思う。大多数がはたけ上忍のほうがカッコいいのだと思っていても、私にとってはアスマのほうがカッコいい」
「トバリ……?」
「こういう考えは、ダメだろうか」
「何この流れ」
「アスマはどうしてもはたけ上忍を芯から好きになってほしいのかもしれないけれど……やはり自分の気持ちにうそをつくのはむずかしい。それでも、はたけ上忍がいっぱんてきに人気があるのだとは学んだ。はたけ上忍も予定がつまっているのだろうし、このあたりでゆるしてほしい」
「サラっとオレのことは嫌いだって宣言してるよね?」
「わたしの風変わりな“かんせい”のせいで、二人をふりまわして申し訳なく思う」
「トバリ……お前――大人になったな!!」
「ねえ、やっぱりこの子全部分かった上でオレに嫌味言ってんじゃないの。ねえ、ちょっと」
アスマとカカシと初対面
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