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▼ バレンタイン

「え?カード送ったの?!」

「しーっ! カリーナ声おっきい!」

カリーナは口を抑えているがもう遅い。
カリーナの声に周囲の目が集まった。


曖昧に笑みを返せばまた各々トレーニングを再開し、私はカリーナに向き直る。

「会社宛だし、ほかのファンのプレゼントに紛れ込むだろうし私の名前は書いてないから多分気づかないと思うけどね」

「えー何それつまんない」

「これでいいの」

そう、これでいいのだ。
いくら思いを寄せる相手が同じ場所でトレーニングをするヒーローだとしても、
彼の人気を知らない訳では無い。
カレの彼女の座を勝ち取ろうなんて微塵も思っていない。
私はいちファンとしてただイベントに乗っかったに過ぎないのだから。

「カリーナこそタイガーさんに何か「あんなヤツにあげるものなんかあるわけないでしょ!!」

「そ、そう」

否定はして見せてもカリーナの頬に朱が差している。
そろそろ自分の気持ちに正直になればいいのに。

「で、どんなカード送ったのよ」

「普通のカードだよ。コンビニで買った白いやつに箔のプリントっぽい」

「ハァ? コンビニ? あんたホントに好きなの? バーナ「ちょっとカリーナ!!」

今度は私の声でみんなの視線が集まる。
ぱちり、とバーナビーと目が合った。

なんでもないよ、と意味を込めてまた笑みを返すと彼はトレーニングを中断してこちらに歩み寄ってきた。

「カリーナのバカ」
「あたしのせいにしないで」

小声での応酬。
うわーどうしよう何の用ですか直視できないよまさかバレたんじゃ

「さっきから楽しそうですね」

「あ、ごめんね、うるさかったよね」

「いえ、何の話をしているのか気になりまして。
カードを誰かに送ったんですか?」

ふっ、とカリーナがふきだした。

最近彼女が気にしている脇腹でもつまんでやりたいが、バーナビーの前でするわけにもいかない。

「えーと、うん。ひ、日頃の感謝を込めて……」

ちょっと苦しい言い訳。
ふふ、とまたカリーナが笑った。

「あたしマンスリーヒーローの撮影あるからそろそろ行かなきゃ
また明日ねリツ」

「ちょ、ちょっとカリーナ?」

バイバーイと手を振って彼女は行ってしまった。
バーナビーと一対一は困る。
嬉しいけど困る!

「日頃の感謝をどなたに?」

「え、えー? 」

「あなたからカードをもらえる男性が羨ましいです」

「え?」

そう言ってバーナビーはまた戻っていってしまった。

「え?え?なん……、え?」

これはきっとただの雑談で社交辞令。
そう言うことにしておこう。
でないと私のチキンハートが破裂してしまいそうだ。





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