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「いつまでも休んでいられないよね」
ヒーローTVの中継を見ながらつらつらと考えていたことが思わず口をついて出た。

あ、折紙サイクロンが見切れた。

ルナティックの犯罪者殺害は苛烈を極め、ダークヒーローなどともてはやす輩も出てきた。
一方、同じネクストであるヒーローへ畏怖の念を抱くものも現れ、なんとかヒーローの信頼を取り戻そうとレッツビリーブキャンペーンなるものも行われている。

「そろそろ復帰しますか?」

「うん……とりあえず主要なビルは頭に叩き込んだし、登録してある住所から引っ越したらお仕事に戻ろうかと思います。
最近はあの組織の名前も聞かないし」

ルナティックはどうやらウロボロスを狙っていた訳では無いらしかった。

レッツビリーブキャンペーンでタイガー&バーナビー、そして折紙サイクロンがヒーローアカデミーに赴いた際、
脱獄した元ヒーローアカデミーの生徒をルナティックが狙ったらしい。

もちろんヒーローアカデミーに在籍していた彼はウロボロスに関係あるはずもなく、
ルナティックは証拠不十分で処罰されていない犯罪者など罪を償っていないものを狙っていることが分かった。

「……ルナティックの事は、まだ怖いですか?」

「ううん、怖くないよ。早とちりだったしね」

「そうですか」
じ、とユーリさんの視線が刺さる。
「え、どうしたのユーリさん」

「いえ、何でもありません」

いや、あの視線は何か言いたげだ。
私の仕事が決まってからは離れて暮らしているがそれまでずっと一緒だったのだし、
何を言いたいのかは分からなくても何か言いたいことがあるのは分かる。

「復帰してもルナティックから犯罪者を守ろうなんてことは考えてはいけませんよ」

「え?」

「それはヒーローの仕事です。あなたが体を張ることはありません」

それもそうだけれど、いざ目の前でそんな状況になったら私はどうしたらいいのだろう。

私はヒーローでもレスキュー隊員でもない。
確かに現場で成り行きで人を助けることもあるけれど、ほかのヒーローのように現場に飛び込み誰かを助けるようなことはしない。

でも殺されそうな人を横目に逃げるのは……
「……うーん、私は私なりの正義でその時の状況で判断するかな……?」

「リツ」

「正義って程のことじゃないけれど、やっぱり目の前で殺されそうな人を放っておくのはちょっと……」

「助けた 犯罪者にこれ幸いと人質に取られたらどうするんですか?」

「もーユーリさんの意地悪!」

「どんな事態になるのか様々なパターンをシミュレーションしておくべきです。
現場では犯罪者はもちろん、ルナティックにも近づいてはいけませんよ」

「私が現場に出る時は火災とか災害とか派手に壊れてる時であって犯人の確保が必要な事件の時にはあまり出番ないよ?」

「それでもルナティックと犯罪者には近づいてはいけませんよ」

「……はーい」

完全に保護者だ。
犯罪者はともかくルナティックは大丈夫な気がする。
彼も彼なりのポリシーがあるようで、何もしていない私がたとえ触れられる距離にいたとしても何もしてこない気がする。

そんなことを言えばきっとユーリさんは怒るだろうから絶対に言わないけれど。

反論しなくなった私を見てユーリさんは微笑んだ。

「では引越し先を探しに行きましょうか。念には念を、ですから」




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