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バーナビーさんを帰し、ユーリさんのために紅茶をいれる。
彼の好みではないかもしれないが、ホテルのサービス品なのでそこは勘弁願いたい。

「リツ、いくらヒーローだからといって夜に男性を部屋に……ましてホテルの部屋に招くのはほめられたことではありませんよ」

「ごめんなさい。でもすぐに直接話したいって言われて……バーナビーさんは全部の事情を知らなかったし仕方ないかなって」

「何もされませんでした?」

「!」

何を言っているのだこの人は。

「何かあるわけないでしょ!」

バーナビー・ブルックスJr.とどうにかなるわけがない。
万が一いや、億が一どうにかなりそうになってもハンドレッドパワー相手ならギリギリ勝てると思う。
バーナビーさんを細胞レベルでスプラッタにしてしまう可能性があるのでしないけれど。

「そうですか?」

「そう!」

「ああ、あなたはスカイハイが好きなんでしたっけ?」

え。
どうしてそれを!

「リツの部屋にスカイハイのグッズがやけに多いと思いまして。その顔は図星でしたか」

カマをかけられたのか。

ニヤリとユーリさんが笑う。普段は冷静沈着で表情もあまり変えない彼がこうして笑う程のこととは……考えれば考えるほど恥ずかしさに苛まれる。

「……トップシークレットでお願いします」

熱を持った頬をおさえる。
ああもうこの兄は何でもお見通しか。

「リツ、おいで」

ソファに座るユーリさんが両手を広げる。誘われるままに彼の腕の中に入った。

「そのうち恋人ができたらこうして私の所に来てくれなくなるんですね」

「気が早いよ……」

「そうですか?」

「当たり前でしょ」

スカイハイとどうこうなれるなんて思っていない。
彼の大きな博愛はシュテルンビルトすべてを包み込む。その中の端っこにひっそりと私がいる、それで十分だ。

「大きくなったのにあまり身長差は変わりませんね」

「子供扱いしないでよ。ユーリさんが育ちすぎなの」

ふと目が眇られた。
「昔のようにユーリと呼んでくれないのですか?」

「ユーリさんだってお仕事モードみたいな丁寧語じゃない」

初めてユーリさんに出会った時、銀の髪がとても綺麗で、伸ばせばいいのにと思った。背伸びをしても彼の髪には手が届かず、こっそり寝ているユーリさんの髪を触りに行った。

ユーリさんの髪をひと房とる。

波打つ銀糸のきらめきはあの時と変わらない。

「いいなぁユーリさんの髪は綺麗で」

「リツも綺麗な黒髪でしょう」

「そーお?真っ黒なだけだよ。ユーリさんみたいなのがいいの。
本当の兄妹だったら、同じ色だったのにね」

「それは困ります」

「ええー?」

「……あなたの黒髪、好きですよ」

グシャグシャと頭をかき混ぜられた。
ああもう鳥の巣だってこんな酷くないのに。

「そろそろ帰ります」

「え?泊まっていかないの?」

「若い娘が男を誘惑するんじゃありません」

そういう意味じゃない、と頬を膨らませて反論すればまた笑って今度は手ぐしで髪を整えてくれた。

「今日は帰ります。明日仕事ですし、何も準備していませんからね。
明日午後から休みを取ってます。一緒にいられますから
……どうしても耐えられないようなら連絡下さい」

ひとつ、おでこにキスをされた。

「さ、おやすみなさい。」





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