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▼ 好きを君に

「ねえタイガーさんこの後ひま?」

「見てわかんねーか、始末書終わんねーの」

いつものオバチャンの転勤。そして後釜におさまったのがこの子、リツ・ニノミヤ

「まだ終わってなかったんですか。仕方ありませんね、私が今から言うとおりに」
「甘やかしたらダメですよリツさん」

「あれ、バーナビーさん早いですね。今日は遠くで撮影あるからオフィスに来ないんだと思ってたわ」

「貴女に逢いたくて」
リツに会いたいがためにスピーディに仕事を片付ける男、バーナビー・ブルックスJr.

対して俺はリツと一緒に居たいがために仕事を終わらせない男。

「リツさんこのあとのご予定は?」

「見ての通りタイガーさんのお世話」

「その後は」

「退社」

「その後のことです」

「買い物して帰って寝る」

「買い物付き合いますよ、荷物持ち「私こう見えても腕力あるからお気になさらずに」

いつもの事だ。バニーの誘いをリツが躱す。

キングオブヒーローになったバニーなら女なんて選り取りみどりだろうに、どうしてリツを狙うんだ。

「今日はご飯何作るんですか?」
「疲れたから作らないわ」

リツは学習している。何かを作ると言うとバーナビーの「僕も食べたいなぁ」が始まるのだ。

「じゃあどこかに食べに行きましょう」
「私アレルギーが多いから外食しない主義なの」

嘘だ。リツは何でも食べる。エビもカニも蕎麦もピーナッツも小麦も平気だ。

「……」

さあ黙ったぞ。ここまではいつも通りだ。

「じゃあシェフにアレルギー除去して貰って」

「バーナビーさん、私、今日は疲れているのでまた次の機会に」

笑顔で言い放つ。
オリエンタル出身の俺ならここまで言われて次は誘えない。
また今度、は社交辞令で真意はNoだからだ。

「じゃあ何が食べたいか考えておいてくださいね」

「ええ、考えておくわ」

「予定もあけておいてくださいね」

「そのうちね、善処するわ」

バニーは機嫌よく帰っていった。

「かーわいそー」

「なにが?」

「また今度、考えます、善処しますって全部Noじゃねーか」

「あらそう? オリエンタル育ちの悪いクセね」

くすくすと笑う彼女にため息が出る。

「ところでタイガーさん。はやく始末書書いてください。お腹すいたしどこか食べに行きましょーよ」

「買い物して帰って寝るんじゃなかったのか?」

「やーね、これだからおじさんは。いけずーやもめーおっさんー」

「うるせー。……うち来るならチャーハンだけど、どうする?」

「断る理由がないわ」


この時だけはちょっとだけ、相棒に対する優越感

「はやく終わらせてよね、虎徹!」

こればっかりはお前のサポートしてやれねーわ





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