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▼ 明けまして

「初詣?」

「そう。バーナビーはどうする?」

初詣。仕事でのパートナーがオリエンタルタウン出身なのでそちらのイベントや風習は結構知っている方だと思う。

「去年一年ありがとうございました、今年もどうぞ見守っていてくださいって拝みに行くの」

「お願いごとをするんじゃないんですか?」

「んー、受験生とかは必死にお願いしたりするけれど、初詣だし一年の感謝とご挨拶くらいかな」

そういうものなのか。そこまで信心深くない自分からしてみれば季節ごとに神社に詣でる彼女に感心する。

「人混みすごいと思うからバーナビーは家で待ってる?」

「一緒に行きますよ」

せっかく一緒にいられるというのに。
年末は年始のためのTV番組の収録やらなんやらでクリスマスもリツに会えなかった。

「あ、でもバーナビーは変装してね……」

「もちろん」

ファンは大切だ。だけれど彼女との時間を割いてまで対応するのは辛いものがある。


髪を一つにまとめ帽子をかぶりマフラーで口元を隠す。

アクセサリーもすべて外しテーブルに置く。

「行きましょうか」

「……」

リツの反応が悪い。

「どうしました?」

「地味な格好してもイケメンオーラがにじみ出てるなーって」

「イケメン?」

「ハンサムって意味」

にひ、と彼女は笑った。









「お〜中吉!」

オミクジを開きあらわれた文字に表情が明るくなる。

「バーナ……バニさんは?」

バニさん……名前で呼ぶと周囲にバレてしまうとはいえこれはひどい。

「読んでもらえますか?漢字はちょっと」

「すごいね、ハカタハナマ……じゃなくて大吉だって!一番いいヤツだよ!」

ダイキチ。

「ええと、仕事運はバッチリだね。順風満帆新しい仕事が次々と舞い込む。健康運もいいよ。病は癒える。れん……」

れん?

「なんですか?」

「あ、や、まあ、とにかくいい一年になるんだって。大吉だから持って帰ろっか」

「リツは持って帰らないんですか?」

「うーん、基本的に大吉以外はホラ、あそこの縄とか木とかに結ぶんだよ」


リツの指さした先には確かに沢山のオミクジが結び付けられていた。

それから屋台を冷やかし、久しぶりにゆっくりとしたデートを楽しむことが出来た。










「恋愛……成就する。既に相手がいる場合は結婚の運びになる可能性大……」

読み上げようとして詰まってしまった。
自分で言うのはかなり恥ずかしい。

「結婚かあ……」

なんのまぐれか彼はヒーローだ。過剰な期待はしない。

せめて自分のおみくじも同じならばよかったのに。

木に結びつけたおみくじを振り返り、中吉という半端な運勢に苦笑いが漏れた。



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