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「やあリツ」

リツがエレベーター内の被害状況を確認していると聞いてなにか役に立てればと天井の穴から入る。

彼女のヘルメットに付けられたライトのおかげですぐにリツを見つけることが出来た。

「お疲れ様ですスカイハイ」

彼女のすぐそばで停止する。

「どんな感じだい?」

「意外と綺麗ですね。外で爆発したので大きな被害はこの穴くらいです」

「もう帰れそうかい?」

「ええ、このまま天井直してしまいます。そしたら帰ります」

驚いた。もうアポロメディアと話がついているのか。

「まあ、お礼も兼ねて今日はボランティアです」

「?」

「スケートリンクビルの件で、彼らが解体を手伝ってくれたおかげで早く帰れましたから」

そういうことか。

「では私がリツを上まで運ぼう。さあ!」

私が差し出した手をリツはおずおずと握る。
そのまま引き寄せて彼女の体を抱きしめ上へと飛ぶ。

「ありがとうございます、スカイハイ」


ずっとこうしていたいと願っても、あっという間に目的地についてしまう。

彼女は集めた破片を近くにばら撒くと、チョークで線を描き始めた。


「その線にはどういう意味があるんだい?」

「範囲を明確にするためです。線を書かなくても直すことは出来ますが、精度がちょっと……」

なるほど。良くわからないが線を書けばうまくできるということか。

リツはチョークをしまうとポーチのベルトに挟んであった紙を広げた。設計図だろうか。
しばし見つめた後リツは線の上に手をついた。

青い光とともにメキメキと音を立ててオブジェが再生していく。


いつ見ても見事だ。


彼女なら材料と設計図さえあれば家の一軒くらい建てられるのではなかろうか。

メキメキという音からパキパキ、パリパリと軽い音に変化していく。

青い光が収まり、彼女が立ち上がる。

「これで大丈夫です。塗装は無理だったのでこれは業者さんにおまかせですね」

大きな球体を見上げる。
確かに修繕された箇所は色が違う。

「では帰ろうか」

「すみません、またお願いします」

彼女を抱えて飛ぶ。あっという間にフォートレスタワービルが小さくなる。

「あ!ダメですスカイハイ、私バイクで来てるんです!」

そうか。残念だとても残念だ。

くるりと方向転換をしてフォートレスタワービルに戻った。
バイクを見つけてそのそばに下ろす。温もりも伝わらないヒーロースーツ越しとはいえ、もっと彼女の体を感じたかった。
離れてしまえばなんとも言えない寂しさに見舞われる。

「じゃあ気をつけて」

「スカイハイも。お疲れ様でした」

彼女の体を黒いバイクを見送る。
このままパトロールをして帰ろうか。










「まだ帰らないのかい、リツ」


パトロール中にジャスティスタワーの近くを通った時、眼下にリツのバイクを見つけた。もしやと思い会社で着替えた後寄ってみれば案の定リツがいた。

「あ……お疲れ様ですスカイハイ」

テーブルで書き物をしていた。横に置かれた封筒を見るにアポロメディア宛のようだ。

「今日の修繕についてです。メールや電話で終わればいいのですが何事も形式ばった文書にしたためなくてはいけなくて……」

リツはちらりと時計を見る。
23時56分もうすぐ今日が終わる。

「スカイハイ」

リツの手招きに応じて隣に座る。
そっと手をリツの柔らかい両手で包まれた。

「パトロールお疲れ様でした。おすそ分けです」

青い光が彼女の体から溢れ私もその光に飲み込まれる。

「ヒミツですよ?」

暖かい。体が軽くなる。そんなに疲れていないと思っていたが、この差を感じるにそこそこ疲労がたまっていたようだ。

光の中で彼女はいたずらっぽく笑う。つられて私も笑ってしまう。

「ありがとう、リツ」



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