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「私は彼に言いたい!ありがとう!そしてありがとう、と!」

アニエスさんに呼び出されトレーニングセンターに顔を出せば、HERO TVの特番の撮影をしていた。

ヒーロー一人ずつのコメントを撮っていたようで、ワイルドタイガーのコメントに対しアニエスさんが怒っていた。

「私の企画ぶち壊す気!?もっとましなコメントあるでしょ!」

「スカイハイだってあのコメント……」

「え?」

「彼はいいの!天然が持ち味なんだから!」

「えっ?」

「じゃあ次はリツ!」

いきなりカメラを向けられる。

「えっと、バーナビーさんに対して?」

「そう!なんでもいいわ一言ちょうだい」

一言……特に彼に関わったことはないし何を言おう。

「あー、彼は素晴らしいヒーローですね。彼「も」ハンドレットパワーということで私の仕事が二倍になるかも知れないと危惧していましたが、彼の器用さに安心しました。
これからの活躍を期待しています」



無難にこんな感じでいいだろう。

彼もハンドレットパワーということでワイルドタイガーのようにあちこち壊しまくるのではないかとひやひやしていたのだ。

だが結果的に彼の破壊率は他のヒーローとそんなに変わらない。むしろ優秀なほうだ。

ブー垂れているワイルドタイガーをチラリと見る。

ハンドレットパワーだから仕方ないと思っていたが、バーナビー・ブルックスJr.という比較対象が現れたおかげで彼の破壊率が異常なんだと再確認した。


「ルーキーさんはお偉いこって」

「そうですね」

「! リツまで……」

「少なくとも彼はタイガーさんの半分以下ですよ、破壊率」

「だっ!仕方ねーだろ……」

あはは、と笑ってやる。
ちゃんと知ってます。ワイルドタイガーが真剣にヒーローやっていることぐらい、ね。










『ボンジューヒーロー』


お風呂上り、ペタペタとスキンケアをしているとアニエスさんから連絡が入った。

完成したばかりのフォートレスタワービルに爆発物が仕掛けられたらしい。

取材で現場に居合わせたワイルドタイガーとバーナビー・ブルックスJr.が爆発物の処理を行っているらしい。

急いで着替え仕事道具を引っつかみバイクにまたがる。

バーナビー・ブルックスJr.のみならずワイルドタイガーが完成したばかりのビルにーー?

悪い予感しかしない。




現場に到着すれば既に他のヒーローたちが一般客や従業員の避難誘導をしていた。


「全員避難完了したよ!」

ドラゴンキッドが最後のひとりを送り出し、こちらに寄ってきた。

「お疲れ様ですドラゴンキッド」

「こんばんわリツさん!あのね、中の二人がヒーロースーツがない状態で爆弾を解体してるみたいなんだ」

「!」

そうか、取材中だったから。
生身で至近距離から爆発を受けたら確実に命はない。

「……無事を、祈りましょう」

フォートレスタワービルのてっぺんを見上げる。
特徴的なオブジェがライトアップされていて、その周辺をヒーローTVや警察のヘリが飛んでいる。

私はヘルメットをかぶり直した。


「!」


いきなりオブジェが爆発した。
否、爆発というには規模が小さい。まるで勢いよく突き破ったかのような

「まさか!」

一瞬遅れて何かが飛び出した。

飛び出した黒い何かは空高く上がり爆発した。

衝撃がビリビリと地上まで届く。

「やっぱり……」

私はこめかみを抑えてフォートレスタワービルの中に入った。










「お疲れ様ですタイガーさん、バーナビーさん」



エレベーターは使えない。非常階段を登っていくと降りてきた二人に遭遇した。


「よ、リツ!俺の活躍見たか?」

「ええバッチリ。天井とオブジェを壊したのはタイガーさんであってますか?」

「だっ! 仕方ねーだろバニーが」

「人のせいにしないでくださいおじさん」

やいやいと喧嘩を始める二人にため息が出る。息があっているのかいないのか。
彼らの上司のロイズ氏は苦労しているんだろうな。




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