のべる | ナノ


▼ 12

「みんなで楽しもう!そしてレッツエンジョイ!」

バーナビー・ブルックスJr.の歓迎会だとワイルドタイガーに誘われ集まった。
私はヒーローじゃないからと辞退しようとしたが、やけにノリノリなスカイハイに半ば強制的に連れてこられた。

肝心のバーナビー・ブルックスJr.はまだ来ておらず、ドラゴンキッドはロックバイソンの能力を間近で見てはしゃいでいる。

あんなにカチカチになるのか。
確かに殴ったらこちらが怪我をしそうだ。

「悪い悪い」

「遅いぞ虎徹!」

階段からアポロンメディアの二人組が現れた。

「こんばんはハンサムアタシはファイアーエンブレム。本名はーー」


バーナビー・ブルックスJr.は変装もせず堂々と現れた。
半個室のような場所だが顔出しヒーローなのに度胸がある。

ロックバイソンさんが自己紹介しようとした時

「もう結構です」

ロックバイソンの言葉をバーナビー・ブルックスJr.はピシャリとさえぎった

「じゃあ帰ります。こんな時間を過ごしても無駄なので」

あれ、もしかしてバーナビー・ブルックスJr.は空気読めない子?
ワイルドタイガーがフォローしようとあたふたしているが、嘘が発覚し空気はさらに悪化した。

「最低」

「ちょっと待ってくれ話が全く理解出来ない。どういうことなんだい?」

あれ、状況が読めないスカイハイさんも1人……。

「仲良く?バッカじゃない。私たちはライバルなのよ」

ブルーローズのグラスが凍りついた。


ブルーローズとバーナビー・ブルックスJr.の帰るという言葉に他の面々も何かしら理由をつけて席を立つ。

スカイハイが立とうとしたその時、一斉にPDAの呼出音が鳴り響いた。


『ボンジューヒーロー』


『シュテルンメダイユ地区で重大事件発生!強盗は時価数億シュテルンドル以上の……とにかくすぐ向かって!』










「…………あの、どうして走ってるんですか?」

「歩くより早いだろう?」

ああ、折り紙サイクロンは知らないのか。
スカイハイの能力そのままでは本人はふわりふわりと浮遊するくらいしかできないと言う事を。


ふたりを見送り、私はバイクにまたがる。



スタチューオブジャスティス



Mrレジェンドが昔凶悪犯から取り戻した平和のシンボルだ。

金ピカ女神の像は厳重なセキリティに守られているのではなかったか。



『ヒーローに対する市民の信頼が失われたってことよ!だから必ず取り返して!必ずよ!』

ヘルメットを被り腕にワイヤー射出装置をつける。

腰にポーチを付け中身を確認する。
白い硬めのチョークが4本、メモとペン、そして双眼鏡。

これらがあれば仕事はできる。

「よし 」

夜の冷たい空気を頬に感じながらシュテルンメダイユ目指してバイクを走らせた。










「リツ・ニノミヤです。シュテルンメダイユ到着。3回使用可能です。自己判断による使用が司法局から認可されました。何かあれば指示ください」

司法局からの通達を受けてアニエスへ通信を入れる。

『OK!とりあえずタイガーを見張ってもらえると嬉しいわ』

「了解」

双眼鏡を覗きこみながらアポロンメディアの二人組を探す。

彼等のチェイサーはよく目立つ。

「!」

ヒーローTVのヘリが二人にライトを当てた。

その先にローラースケートのような物で逃走する犯人がいた。

「あれじゃ簡単に捕まりそう」

ブルーローズが二人を追い越した。

なんだ、私の出番はなさそうだ。

ブルーローズが凍らせて確保、だろう。

「!」

急に犯人の姿が消えた。
代わりに佇むのは買い物帰りのおばあちゃんだ。

ワイルドタイガーのバイクは海に落ちてしまった。

「……バイクの修理……かな?」


私はため息をついた。







予測に反して犯人はよく逃げる。バイクはアポロンメディアが回収するらしいので能力の使用は見送った。



犯人は遊園地に逃げ込んだらしい。
連絡を受けて私も遊園地に向かう。

ゲートの係員に事情を話して中に入れてもらうと、
既にドラゴンキッドとロックバイソンが到着していてようでドラゴンキッドが先制攻撃を仕掛けた。

このふたりが捕まえるだろう。
取り出したチョークをポーチにしまおうとしたその時、ドラゴンキッドの攻撃はロックバイソンに直撃した。


「え?」

「バイバァーイ!」

犯人の陽気な声が響いた。

直撃を受けたロックバイソンがよろけオブジェの柱をなぎ倒した。

一本、二本とドミノ倒しのように次々と倒れていく。

……うそでしょう…………

私は思わずこめかみをおさえた。

ロックバイソンは壊し屋の二つ名を襲名するつもりなのか。


「そこまでだ!」

空からスカイハイが現れた。
キングオブヒーローならチャチャッと事件を片付けてくれるだろう。

彼が来たなら安心だ。

とりあえず倒れた柱を戻そうとチョークで線を引き始める。結構広範囲なので時間がかかりそうだ。

「スカァアアアイ……」


「ハァァアアイ!!ーーーーうぐぅっ!!」


うぐぅ?


変な声に空を見あげればスカイハイが姿勢を崩し落下しそうになっていた。

「逃がすものか!」

すぐにスカイハイは大勢を立て直し、アトラクションのワイヤーを外し犯人を見事檻の中に閉じ込めた。


うぐぅ、という声が気になるが終わりよければすべてよし、捕獲完了でメデタシメデタシ、だ。


「さあ、大人しくスタチューオブジャスティスを渡してもらおうか!」


「!」

犯人はニヤリと笑ったかと思うと、次の瞬間仄青い燐光が体を縁取り、檻の外へと出ていた。

「ネクストか……」

檻の中には代わりにスカイハイが閉じ込められていた。



prev / next

[ back to top ]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -