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アポロンメディアの二人のおかげで解体作業はかなり進んだ。工事の人の話だと今夜にも私の能力を解除しても大丈夫になりそうらしい。

たった5分とはいえ、人間の100倍の力を出せる男が二人も来てくれたのは嬉しい誤算だった。

能力の回復を待ってさらに2回彼らは働いてくれた。
バーナビー・ブルックスJr.はヒーローTVに映るわけでもなくポイントになるわけでもない今回のことは不承不承といった感じだったが、お礼に
今度アポロンメディアに差し入れでもしようと思う。
いや、差し入れよりもボランティアでワイルドタイガーが壊したものを修繕した方が喜ばれるかもしれない。

きゅう、と腹部から情けない音が聞こえた。

食べると眠くなるので避けていたが、安心感からか急に腹の虫が騒ぎ出した。


「お疲れ様」

「ーーブルーローズ」

「カリーナよ」

ヒールの音に振り向けば私服のブルーローズが立っていた。

「そこから動けないって聞いて。ご飯食べた?」

彼女の手にはドーナツとカフェオレがあった。

「まだだよ。このとおり、両手が使えないから」

「もし食べるなら……た、食べさせてあげるけど」

まるで睨むような目つき。それでも頬は赤くなっていて照れ隠しなのだろうなんとも微笑ましい。

「じゃあお願いカリーナ。もうお腹ぺこぺこで」

カリーナの指を食べないよう気をつけながらドーナツをほおばった。

声をかけるまで時間がかかったのだろうか。すっかりぬるくなったカフェオレで流し込んだ。










「修繕さーん!」

ヘルメットをかぶったスーツ姿の男が駆け寄ってきた。

「もう解除しても大丈夫です!」

ぐちゃぐちゃと書き込みのされた紙の束を見せてきた。

「ここまで終わりました。お陰様で安全に進められましたよ」

「では解除します。解除後1時間は現場にいますので何かありましたらーー」




チョークの線から手を離し能力を切る。
その場から離れずしばらくスケートリンクビルを見守るが、特に異常はないようだ。

立ち上がろうと力を入れれば、
ずっと同じ姿勢だったせいか関節からパキパキと小気味よい音が鳴る。

ぎくしゃくと無理やり歩く。
流石に疲れた。

案内されたワゴン車に乗り込み、
手渡された毛布にくるまり目を閉じた。







人の気配がする。
もっと寝ていたい。けれど工事の人かもしれない。なにかトラブルがあったのかも。

気合を入れてまぶたを開ける。

「?」

ポセイドン……ライン?

目に飛び込んできたのは企業名。ややあってから、スカイハイのヒーロースーツなのだと理解した。

「スカイハイ?どうしました」

「リツ、もう帰ってもいいそうだ。迎えに来たよ」

髪を梳かれる。心地良い刺激になんとか押しやった眠気が勢力を増して私を苛む。

「大丈夫、一人で帰れるから」

「私がリツを送りたくて来ただけだから。気にしないでくれ。このまま運んでも?」

このまま、と毛布で私をくるみ直す。日もくれた夜のシュテルンビルトの空は冷える。

私の返答も聞かないままスカイハイは私を抱き上げた。



バイクは明日取りに行こう。

体の浮く感覚に私は目を閉じた。




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