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「羊がいっぴーき、羊がにひーき、羊がさん……」

「しっかりなさいリツ!それでは意識を保つどころか寝てしまうでしょっ」

早朝、ジョンの散歩を終え様子を見に来てみれば、リツの傍らにファイアーエムブレムがいた。

「だってファイアーさん、古今東西知らないンだもん」

「オリエンタルの文化はタイガーとしなさいな」

「眠い……」

「しっかりなさい」

「寒い……」

「寒いのね、今火を……あらん?スカイハイ?」

リツの周りを控えめの火で囲み、ファイアーエムブレムが手招きをした。

「アンタも様子見にきたの?」

「そうさ!リツが徹夜だと聞いていたからね」

徹夜なのはリツだけではない。解体作業や復旧作業をしている人たちも同じく徹夜で作業をしていた。

「とりあえず8時に工事の人たち交代だから、その時にネクスト1回切って休憩します……」

「ちょっとスカイハイも励ましてあげて!このままじゃリツ倒れちゃうわよ!」

「頑張れリツ!そして応援しているぞ!」

はは、とリツは乾いた笑いを返してくれた。

青い燐光がリツをふちどっている。

一晩中途切れなく能力を発動させているなんて想像を絶する苛酷さだろう。

「倒れる時は言ってくれたまえ!救急車より早く病院に運んであげよう!」

今日はこれからずっとヒーロースーツのままでいようか。その方がリツを助けられるかもしれない。

寒いと言っていたのでジャケットを肩にかけてやる。両手は常にチョークの線に置いているので袖は通せない。
落ちないようにそでを結ぶ。

「これで少しましになるだろう?マフラーもとってこようか?」

「ありがとうございますスカイハイ。大丈夫ですよ、とってもあったかいです」

リツの青ざめていた頬に朱が差す。
眉尻を下げ微笑む彼女はやっぱり可愛くて美しい。










「きたぞ!ワイルドタイガーだ!」

「お引き取りくださいこれ以上仕事を増やさないで」

フラフラになりながらもスケートリンクドームを支えていると、壊し屋の異名を持つワイルドタイガーがヒーロースーツを着込んでやってきた。

冗談じゃない。これ以上仕事を増やされたら私の魂が安息の地を求めて旅立ってしまう。

「っだ!手伝いに来てやったんだよ!」

「嘘だ……きっと解体しなくていいところまで壊す気なんです……」

「おじさん信用ないですね」

ダブルチェイサーから赤いヒーロースーツのバーナビー・ブルックスJr.が降りてきた。

「あー、えっとバーナビー・ブルックスJr.……?」

「どうも。きちんと挨拶をするのは初めてですね。バーナビー・ブルックスJr.です」

手を差し出されるがあいにく両手はふさがっている。

「リツ・ニノミヤです。すみません、手を離すといろいろと問題が起こるので握手はまた今度で」

そう言えば軽く目を見開き、バーナビー・ブルックスJr.は手を引っ込めた。

ハンサム、女なら誰でもきみに夢中なわけじゃないんだヨ。


「んじゃ、ちょっくら中行って手伝ってくるわ!バニー行くぞ!」

バーナビー・ブルックスJr.の返事も聞かずにワイルドタイガーは能力を発動させてガラス張りのドームの中へ消えた。







案の定彼はリサイクルするはずの資材まで破壊した。







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