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▼ クリスマス

今日はキラキラとした飾りを楽しみ、いつもよりちょっと美味しいものを食べて、
家族や恋人と過ごす日。

プレゼントを送ったり、愛を囁いたり。

無垢な子供の頃はサンタクロースにおもちゃをねだったこともある。

そんな浮かれたこの日は彼の両親の命日だったりもする。

今年初めての雪が降るかもしれないというラジオを聞きながら、私は車の中で彼を待つ。

私の慣れ親しんだオリエンタルの墓地とは違う様式の均整のとれた墓地。

ふと窓の外を見れば彼が立ち上がる姿が見えた。

ややあって踵を返しこちらに向かってくる。

彼は両親に何を話したのだろう。

「おかえり」

「お待たせしました」

それ以上は何も言わずに車を出す。
ミスターマーベリックに代わり、去年から墓地に彼を送り届けるのは私の役目になった。

「リツさん」

「ん?」

「今年もありがとうございました」


今年も、ウロボロスの手掛かりはなし。

ミスターマーベリックも酷なことをする。

「ここに来たいと思ったらいつでも言ってね、ブルックスJr」

来年彼はヒーローアカデミーに入る。

彼ならばきっと素晴らしいヒーローになれる。

そしていつか、養い親の思惑を知った時ーー「リツさん」

「なあに?」

「リツさんはこの後の予定は?」

「……家で書類片付けてゴロゴロするつもり」

違う。彼の言いたいことはそうではない。知っていても言わない、大人はずるい生き物なのだ。

「お邪魔したら迷惑ですか?」

「んーん。クリスマスになんのお構いも出来ませんが、それでも良ければ」


私が、あなたの養い親がウロボロスに関係していると知ったら、君はどんな顔をするんだろう。


「知ってる?オリエンタルではクリスマスにターキーではなくチキンを食べるんですよ」

「チキン?」

「ええ。だから私ターキーを食べたことないんです」

だから。

「食べるの、つきあってくれます?」

もちろん、と返す。
はにかんだ彼を私はまともに見ることができなかった。






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