▼ 大人の線引き3
出社してすぐCEOに呼び出された。
正直に自分の先輩の娘で、向こうがふざけているだけでそういう関係は一切ないときっぱり否定した。
「アントニオのいけずー」
「知らんさっさと帰れ」
トレーニングセンターでも質問攻めの憂き目にあい、家に帰ればドアの前にしゃがみこむリツ がいた。
寒い寒いと震えるリツをつい家にあげてしまったが、心を鬼にして追い返すべきだったと思う。
「あのね、アントニオ。私は本気だよ?」
「無理だ諦めて帰れ」
「えー。じゃあ結婚してくれたら諦めて帰る」
「なんでもしてやるから帰……ん?」
「ありがとうアントニオ!」
ぱっと表情が明るくなりソファに座る俺に抱きついてきた。
「ちょっとまて今のは」
「ーーすきよ、アントニオ」
「!」
頬に柔らかい感触。
一瞬触れて、首にしがみついてきた。
意識が頬に行っていたせいで、俺はあっさり押し倒されてしまった。
の髪がくすぐったい。
「リツ、どきなさい」
「どかない。ねえ、知ってる?」
リツは俺の頬をなでると。妖しく笑った。
「押してダメなら押し倒せ」
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