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▼ 大人の線引き2


「イメージキャラクター?」

手渡された企画書に嫌な予感がした。

人気モデルとクロノスフーズのタイアップ。

履歴書にも似た様式の顔写真の欄にはリツの顔があった。










「おはようございますリツです!よろしくお願いします!」


元気よく挨拶をしながらリツがスタジオに入ってきた。

「ロックバイソンさん!よろしくお願いします!」

ニコリと笑い、ペコリとお辞儀をする。

声を出せばバレかねないので、俺は会釈をするだけにとどめた。


撮影は順調に進み、無事に終わった。

「ありがとうございました!」

リツはいつもこんなふうに仕事をこなしているのだろうか。

拗ねたりワガママをいうことなく、終始笑顔のままこなしていた。

なんだか自分の知るリツではないようで、本当にリツなのだろうか、とつい見てしまう。

「!」


「キャー!!」

スタッフから悲鳴が上がった。

リツめがけてセットが倒れてきた。

リツも気づき逃げようとするが、機材のコードに足を取られ倒れ込んでしまった。

とっさに体が動いた。

能力を発動させ体を硬化する。

リツに覆いかぶさるようにして落下物から守る。

「大丈夫か?」

ぎゅっと目をつぶっていたリツは恐る恐る目を開けた。

「だい……じょうぶです……」

じっとヘルメット越しに見つめ合う。向こうからこちらは見えていないはずなのに、目が合っている気がする。

「ありがと、アントニオ」

「!」

しまった。つい声をかけてしまった。

リツは隙間からスルリと外へ出て しまった。








『おい!お前これどういうことだよ!』

リツにバレてしまった。質問攻めにされるかと思いきや、リツからは何もコンタクトはなかった。

「なんだ?なんのことだ虎徹」


PDAの呼出音に応えれば、虎徹がなにやら雑誌のようなものを写した。

『おまえ、リツちゃんとデキてんの!?』

《男性のタイプはロックバイソンみたいな人。結婚するならロックバイソンがいい》

そう大きく見出しがあり、写真は等身大のヒーロースーツのパネルにキスをしてウインクしているリツが写っていた。

「はあ!?」

『お前ってロリコン?』

「ちがう!どういう事だこれは!」

通信を切れば間髪入れずにネイサンシーモアから通信が入った。

応えずに切ってスマホを操作しリツにかけた。


『あ、アントニオ!ニュース見てくれた?』

「虎徹から知らされた。あれはいったい」

『だってー、アントニオのこと好きなんだもん。これで少しは意識してくれるかなって』


「馬鹿か」

『ひどっ!』

「大人をからかうんじゃない」

『からかってないよ、本気だもん。』

「あのな、いったい何歳離れていると思って……」

『アントニオ、年の差なんていつまでたっても縮まらないの。どうしようもないことを理由にされても困るもん!』

思わずこめかみを抑えた。

「ヒーローとの熱愛報道ごっこをやりたいだけなら他あたれ」

『え?ちょっとアントニオ何言ってるの』

「切るぞ」

『ちょっとまってよバカ!』


なにか言っていたが構わず俺は電話を切った。

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