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▼ Once again with you...


「愛しているよリツ」


何度も口にした言葉を、またもう一度紡ぐ。
いつもは私の愛の言葉は何も無い、ただ何も無い空間に吸い込まれて消えていくのみ。
しかし今日だけはまぼろしだろうか、目の前で笑う君がしかと受け取ってくれた気がするんだ。

「リツ、」

君は変わらないね。
ごらん、私はもうすっかりしわくちゃだ。

「愛してるよリツ」

笑う君の頬に手を伸ばすけれど、私の手は君に届かない。

立ち上がれば届く距離

君に触れたいのに、笑ってくれていいよ、私の足はすっかり萎えてしまったんだ。

今じゃ車椅子に頼りきりさ。


「リツ、今日は天気がいいね」

最近ずっと雨続きだった。
秋の長雨という言葉は君が教えてくれたんだったね。

「こんな空なら、またとべる気がするよ」

君を腕に抱えた飛んだ夜空を今も覚えているよ。
君と一緒に見るシュテルンビルトの夜景はいっそう輝いて見えて、億の宝石にだって負けないくらいきれいだった。

君と最後に飛んだ晴れたあの日は、君が倒れた日だった。

雲ひとつない晴天、私はヒーロースーツのまま君を病院に運んだんだ。

年をとって細くなったこの腕ではきっと、君を抱き上げることはできないね。

「私はとても幸せだったよ。 リツ、君がいないのは、とても……そう、寂しかった」

ああ、そんな顔をしないでくれ。そんな意味で言ったんじゃないんだ。

「寂しかった。 けれども、君との思い出が私を生かしてくれた」

私の顔は、手はもうしわしわだ。
君とお揃いで作ったあのリングも、歳をとって節くれだった指にははまらなくなってしまった。

「君のところに行くのなら、そうだ、そうだね、今日の様な青空の日がいい」

目の前のふわりと笑う君はまぼろしだろうか。
ちっとも変わらない君を連れて、またもう一度空を飛べたのならどんなに良いことだろう。

「リツ、手を貸してくれるのかい」

君は何も言わずに白い手を差しのべる。
そっとしわくちゃの手をのばせば、

「はは、そうか、そうか。 ……ありがとうリツ」

ああ、懐かしい。
吸い付くような君の肌。
何十年ぶりだろう、君に触れるのは。

「愛しているよリツ」


これから私は、ずっと君といられるんだね。





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