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▼ 公園での短い逢瀬

私の好きな人は、とにかく人がいい。
いつも爽やかで人当たりの良いあの人は良く道を聞かれたり、親とはぐれて泣いている子供の世話を焼いたり。
この前なんかは強盗にタックルをくらわせて撃退していた。

ニコニコとしていて、太陽のように眩しくて、善意の塊のような人。

私は彼に会いたくて、噴水のある公園にしょっちゅう遊びに行くの。

あの人は大きな犬を連れて朝晩散歩をしている。
ジョンという名のゴールデンレトリバーはご主人の静止の声なんて耳に届かないようで、よく私に飛びついてはじゃれてくる。

ホントは犬は好きじゃないけれど、ジョンにもみくちゃにされている私をあの人が助けてくれるから好き。

好きなの。

「やあ猫くん。今日もおさんぽかい?」

「にゃあ」

首輪についた鈴をチリンと鳴らして返事をする。

「ジョン、猫は小さいのだから全力で飛びついてはいけないと……ああこらジョン!!」

息の荒い湿った鼻をおなかにくっつけられゴロンと地面に転がされてしまった。
むき出しになったお腹を鼻でくすぐられ、体をよじれは背中に首に頬をベロンと舐められた。

「にゃっ!」

やめなさいよデカ犬!
ああ……犬くさい……


彼に会えるから丁寧に丁寧に毛づくろいをしたのに。
毛並みはぐしゃぐしゃだ。

しっぽをブンブン振り回すジョンから逃げ彼の後ろに隠れる。

「いつもすまない……」

困ったような顔で彼は私の頭をなでてくれた。
耳の付け根、あごの下。
さかさかと大きな手で撫でられると気持ちいい。

すり、と彼の手に頭を押し付ける。

いいにおい。どきどきする。もっと触って欲しいな。

「君の飼い主はどこだい?」

「にゃーあ」

いないわよ。あなたが飼い主になってくれるなら大歓迎。

……ああ、しっぽのあたりがチリチリするわ。もう時間切れ、また明日。

「にゃあん」

ゆらりとしっぽを揺らして彼の足に体を擦り付ける。
さよなら、また明日、愛しいひと。

「もう行ってしまうのかい?」

「にゃあ」

そうよ、時間切れだもの。
私が人間で、猫のフリをするネクストだと知ったら、きっと貴方はなでてくれないのでしょうね。

ああまずい、変身が解けてしまいそう。

急いで急いで帰らなくちゃ。
また明日、楽しみにしてるわ。


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