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他のヒーローが帰った後、彼女はロッカールームに消え、帰るのかと思うとツナギ姿で出てきた。
「なにか修理するものが?」
彼女は腰につけたポーチの中身を数えると、ぱちん、とスナップを閉じた。
「先ほどトップマグから連絡が来まして、モノレールのレールの修理を依頼されました。今から行ってきます」
外はすっかり暗い。
「現場まで送ろう!これからパトロールもあるしね」
ヒーロースーツに着替え、彼女を
抱えて飛ぶ。
「いつもすみません」
「気にしないでくれ!パトロールのついでなのだから!」
ちぎれてぐにゃぐにゃにされたレールの上で下ろす。
「ありがとうございました。帰りは一人で大丈夫なので。」
私は腕を直角に曲げて、それでは、としばしの別れを告げる。
終わる頃、また迎えに行こう。
夜のシュテルンビルトはかなり明るい。
夜の闇を打ち消すように煌々と明かりが灯り、その明かりの数だけ人が居る。
人種の坩堝のこのメダイユ地区は軽犯罪から重大な犯罪まで実に様々なことが起こる。
夜は特に闇にまぎれて人けのない店舗などが狙われやすいし、酒に酔った者が小競り合いを起こすうちカッとなって、ということもある。
ヒーローになってこの方、夜のパトロールを欠かしたことはない。
くるりと反転する。
遠くで青い光を放ち、リツがレールを直しているのが遠目に見えた。
午前0時をリセットにして1日3回まで彼女は能力を使える。
私も何度世話になったことか。
ーーヒミツですよ?
彼女は人差し指を唇に当てていたずらっぽく笑い、日付が変わる頃余った能力を私に分けてくれるのだ。
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