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彼女は陰のヒーローだ。

彼女のおかげで私たちヒーローが多少街を壊してもなんとかなっている。

修繕のネクスト能力をもつ彼女は、チョークを片手にヒーローTVが終わったあと街を駆け回る。


私は彼女に言いたい。

ありがとう!そして、ありがとう!と。









「なあーたのむよリツ!」

「無理です」

「じゃあ半分!半分でいいから!」

「モノレールについてはトップマグとポセイドンラインで話をつけることになっています。私が半分直したところであなたが破壊したという事実は消えません」

「どーしてもダメ?」

「はい。両者話し合いの後工事請負業者が見積もった金額と私の金額を比較した上私の方が安ければ私の出番です」

「ち、ちなみにおいくらで……」

リツはサラサラとメモにペンを走らせワイルドタイガーくんに手渡した。

読んだ彼は短く声を上げ固まってしまった。

「私は主に緊急性のある時のみ出動するように言われています。今回のタイガーさんの破壊したモノレールに関しては隣接して複数本モノレールがあり、利用客の混雑が予想されるものの緊急性はないという判断なので私の出番はありません」


にこやかに、キッパリはっきりとものを言う彼女はカッコイイ。

ふんわりとした見た目に反して、シャキシャキした性格は好感が持てる。


「やあリツ、今日もご苦労さま!そしてお疲れ様だね!」


ぺこり、と彼女は会釈をする。


「キングオブヒーローおめでとうございます」

「ありがとう!今日はトレーニングしていくのかい?」

「ええ、器具の点検も兼ねて。摩耗しているものは早めにどうにかしないと危険ですから」

とくに、と言いかけてワイルドタイガー君の方を見る。

彼の二つ名は壊し屋、だ。


「だっ! 俺はそんなに壊さねえよ!?」

「そう言ってタイガーさんランニングマシン壊したじゃないですか」

「能力発動してた訳じゃねえし、不可抗力だ!」

ワイルドタイガーくんの泣き真似を一瞥し、リツはバタフライ、ベンチプレスと器具を試し黙々と点検していた。

「手伝うよ」

「ありがとうございます、スカイハイ」

にこりと笑う彼女は今日も素敵だ。

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