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▼ 高所お断り

「いや! いい! ひとりで帰れる!!おろしてぇーっ!!」

リツはバタバタと足を動かし逃れようとするが、反面両腕はしっかりと首に回され離す気配はない。
「たまにはいいじゃないか」
「無理無理無理無理無理!!!!」

私はリツを抱えたまま飛ぶ。
深夜、ヒーローTVの中継が終わり社へ戻ろうとしたところにリツを見つけた。
こんな時間に女性が一人歩いていては危なかろうと彼女の元へ降り立ち送ろうと申し出れば冒頭の言葉である。






「こんな時でないと君と飛べないのだから良いじゃないか」
「私は飛びたくないのおおおおおっ!! 無理ぃいいいいいっ!!」

「私はリツと一緒に飛んでみたいとずっと思っていたんだ」
リツを抱く腕に力を込めネクスト能力を発動する。
「よし、一回落ち着こうキっスカイハイ。 私は遠慮すると言っておりましてですね、」
「さあ送るよ」
「話を聞いてぇええええええっ!!」

ふわりと体を浮かせばリツはより一層力を込めてしがみついてくる。普段自分からくっついてくることのないだけに、思わず口元が緩む。

ジェットパックの出力を上げ空高く舞い上がれば眼下には煌々と灯るシュテルンビルトの夜景。
帰る前に一周して見るのもいいかもしれない。
いつもパトロールをして見慣れた景色ではあるが、リツとともに見るこの人工的な星の輝きはまた一段と美しく見える。
いつかリツにも見せたいと常常思っていたのだ。

「……リツ?」

あんなに文句を言っていたリツが急に静かになった。
どうしたものかと彼女の顔を見れば目は虚ろで、景色を見るどころか斜め上の空を見ていた。

「ふふっ……ふふふふ……早く帰ろうか……」

「?」

「よく、聞いてね、スカイハイ。 私、高いとこ、無理。」

「えっ」

「はやく、帰ろう。」

なんということだ。知らなかった。

確かに、今思えばリツはステージ移動のエレベーターではいつもスマートホンを凝視しており外を一切見ようとしなかった。

商業施設の展望台ではずっと私の腕にしがみついていた。いつもの倍の力で。

「そうだったのか、すまないリツ。では最大速で帰ろう」

長々と彼女を連れ回すわけには行かない。ジェットパックの出力を最大にして早く帰ろう。

「え、ちょっ、ちがっ! おろしてほしっいぎゃああああああっ!!!!」

そうだ、お詫びに今度ワイルド君とバーナビー君が素敵だと言っていたオープンしたてのフォートレスタワービルのバーでも誘ってみようか。
















※フォートレスタワービルのバーはバーナビーが爆弾を蹴りあげて天井爆破してぶち破った「高層」の夜景が素晴らしいところです。
頑張れリツ。




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