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「そう、もっとお二人近付いてください。肩を少し後ろに引いてーーはいありがとうございます!」


スポンサーのロゴを背景にスカイハイとともにフラッシュを浴びる。
上からも下からも強烈なライトが二人を照らしている。

「次は肩くんでみましょうか」
カメラマンの言葉にスカイハイはステルスリッターの肩に手を回し、ステルスリッターはスカイハイの背に手を当てた。

雑誌の撮影

顔出しのヒーローと違い表情に気をつけなくても良い分楽かもしれないがステルスリッターの真っ黒なヒーロースーツは熱を持ち始め、ポーズを取るだけなのに汗が吹き出る。


「大丈夫かい、リッター君」

「ブルーローズが恋しいです。暑い……」

「終わったら風で冷やしてあげよう」

「よろしくお願いします……」


取材と撮影を終え、控え室に戻れば、バーナビーブルックスJr.がいた。

「お疲れ様です、リッターさん、スカイハイさん」

お疲れ様ですと返し、椅子に座って机にもたれる。この際行儀とか気にしていられない。


撮影では黒馬を出せと言われたり、フラッシュで消えてしまうので何度もやり直したりとネクストを酷使した。
ヒーロースーツは重いし暑いしでもうへとへとだ。

「リッター君、首元失礼するよ」

キースがリツのヒーロースーツの襟元を緩め、隙間を開けた。
ピタリと一分の隙もなく肌を覆うこのヒーロースーツはすこぶる通気性が悪い。
夏場は多分死ぬんじゃなかろうかとリツは思う。遊園地の着ぐるみのようにファンを取り付けて欲しい。
社に帰ったら要望を出してみようかとスカイハイにスーツをいじられながら考えた。

「さあいくぞ!」
スカイハイの声とともにくつろげた襟元からヘルメットと体に風が入ってきた。

「あーーーきもちーーーいーーすずしーーーーいーーー」

脱いであおぐわけにもいかないので、キースの心遣いがとても嬉しかった。
汗でうなじに張り付いていた髪がヒンヤリとしてとても気持ち良い。

リツは風の能力もいいよなぁと独り言ちた。











ステルスリッターのヒーロースーツは10キロ以上ある

以前そうトレーニングルームで言っていたのをバーナビー・ブルックスJr.は小耳に挟んだ。
それでも、落下してきたステルスリッターを受け止めた時己のバディよりもかなり軽かった。

170センチほど身長のある男が、そんなに軽いだろうか。

「なーに難しい顔しちゃってんのバニーちゃん」
「いえ……なんでもありませんよ」

「せっかくの綺麗なお顔が……ってなに、どうしたんだよ」

ワイルドタイガーの体を矯めつ眇めつバーナビーは体重の差を計算する。

彼ほど身長と筋肉がないにしても、やはり軽い気がする。

ふと、控え室で盗み見たステルスリッターのうなじを思い出す。

白いうなじに黒い髪の毛が張り付いていた。
髪は自分と同じくらいなのかもしれない。
肌の色は白人のものではなかったし、ワイルドタイガーと同じオリエンタル系なのかもしれない。

「え゛なに笑ってんのバニーちゃん……」

「いえ、なんでもありません」

以前容姿はそんなに気にしないようなことを言っておきながらあれこれ想像している自分がいる。
こんなにも他人に興味が湧くなんて初めてかもしれない。

ステルスリッターの素顔はどんな感じだろうか。

スカイハイはコンビだけあって知っているようだった。

スカイハイがステルスリッターの襟元をはだけさせ風を送り込むところを思い出してしまい、思わず赤面する。

あの会話はまるで……


頬に熱が集まるのを感じて、バーナビーは気を紛らわすために席を立った。
















おまけ


「んっ、キース、もうちょい下……もっと強く……」

「こうかい?」

「んん……気持ちいぃ……です……」

「ちゃんと届いてるかい?」

「この体勢だとちょっと」

「じゃあ立って(風を)入れてみようか?」

「でも……(疲労で)力入らな……」

「支えてあげるから、ほら……奥まで届くだろう?」


バーナビーは目をそらし、顔を隠すように雑誌をもちあげた。




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