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「大丈夫かリツちゃん」
タイガーさんの言葉にほかのヒーローまで私に視線を向けた。
「わ、私は大丈夫、ですけど……え?」

「……だってアンタ、ねぇ。」

ねえ、とファイヤーエンブレムがブルーローズと顔を見合わせる。
「え?」

嫌な予感がする
「ショックでしょう、だってアンタスカイハイのこと「ストーーップ!! え!? 何!? 何事ですかこれは!! 」

パオリンちゃんだけが、え、なになに、と状況を把握できずにいた。
つまり、ほかの人たちは今のファイヤーエンブレムさんの言った意味がわかったというわけで……

「まさか……タイガーさん…」
「ちっ! ちがうって!! 誤解だ!! バラしてなんか……あ」

タイガーさんは口を抑えた。

「病院行って看病してあげなさいよォ。そうすりゃ男なんてイチコロよ」
「わわっファイヤーさん!?」

うそだ。みんな知っていたなんて!













次の対戦相手に選ばれたのはロックバイソンさん。
けれども、ジェイク・マルチネスにまるで歯が立たずに終わってしまった。

次はタイガーさん、そしてバーナビー・ブルックスJr.

折紙くんの意識が戻り、パワードスーツを操るぬいぐるみの謎もとけた。
電波をジャミングすればパワードスーツへの指示を止めることができるというのでジャミングシステムを配備することとなった。

しかしその配備が整うのは明朝。それまでジェイクに潰されずに持たこたえなくてはならない。

正直、スカイハイの時は最初のうちはからかわれていた。
そのからかいがなくなったロックバイソンさんはあっという間に蹂躙されてしまった。

のこり五人……しかもうち二人(三人?)は女性。朝まで持たせるのは難しい気がする

なんとか活路を見いだせないものか。


タイガーさんはジェイクと対峙するとすぐに能力を発動させた。力押しが聞かないのならばスピードで勝負という事だろう。
いくら防御に長けているバリアでも攻撃のスピードについていけなければ意味が無い。そう考えてのことだったのだろうが、

『遅ェ遅ェ!!』

ことごとく攻撃は見切られダメージを与えられない。
そしてバリアにはじかれスタジアムの客席につっこんでしまった。
ふらふらと立ち上がりジェイクに食ってかかるが次から次へと繰り出されるバリアに吹き飛ばされ叩きつけられてしまう。

「タイガーのことが心配?」
「いえ。情報収集していただけです。 次の戦いに備えて」
「それってタイガーが負けると思ってるってこと?」

バーナビー・ブルックスjr.に対しブルーローズが苛立たしげに言う。
そうだ、バディなのだからそんな冷たいことを言わなくてもいいのに。

見ていられなくて廊下に出た。
ヒーローはみんな強くてかっこよくて。
もちろんヒーローだって一人の人間なのだからヒーローとして切りとられた部分だけを見て語るつもりは無いけれど、
それでも正義のヒーローがなぶられるのを見るのは辛かった。

自動販売機にコインを入れボタンを押す。
スカイハイ、大丈夫かな。
ビルから吊るされた映像を見た時は叫びそうになった。
今頃病院にいるだろう。

出てきたジュースに口をつける。

「リツ、大丈夫ですか」
「!」

「失礼とは思いながら位置情報を見まして」
「また職権乱用して……」
ユーリさんはため息をついた。
「全く。ずいぶんと重装備ですね……何をするつもりだったのだか……
無事に戻って来て良かった」
「ごめんなさい」

ぽん、と頭の上に手が置かれた。
なでてくれるのかと思いきやそのまま握力に任せてぎりぎりと締め付けられた。

「いだだだっ! ユーリさん!?」
「狙われているかもしれない自覚もなくチョロチョロと……しかもあなたが耐えられる限界を超えて使用するつもりでしたね。ジュベール女史から聞きましたよ本当に貴方という人はーー!」
静かに低い声で叱られる。長身と目つきも相まって怖さ百倍だ。

「は、反省はしてるけど後悔はしないよ! それにこれからだってまだどうなるかわからないしっ! 出来ることは限界までやるの!」

頭を締め付ける力がふっと緩められた。

「……貴女まで失ったら私はどうしていいかわかりません。リツ、危険なことはしないでください」

ぐい、と頭を引き寄せられた。
「心配なんですよ。…………兄として。」

ユーリさんのスーツのグレーが眼前に広がる。
はあ、とユーリさんはため息をついた。
子供扱いされてため息をつきたいのはこっちなのに。

「これ、折紙サイクロンなどヒーローが収容された病院です。スカイハイもここにいますよ」

ジャケットの内ポケットから紙を取り出した。
走り書きの病院の名前と場所。

「いいの?」
「……お見舞いを許さないほど非情な兄ではないですよ」

その言葉の外にある意味に思わず笑みがこぼれた。
「ありがとう。ユーリさん」

「ではこれは情報料ということで」

ユーリさんは私のジュースを奪うと踵を返した。

「お気を付けて」

「はい!いってきます!」




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