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「っき……スカイハイ!」

ジャスティスタワーに入ればキースさんがいた。
幸いパワードスーツやウロボロスの人間にかち合わずにジャスティスタワーに戻って来れた。
「ああリツ、おかえり。教えてくれれば迎えに行ったのに」
「あ、ありがとうございます。でも流石に今は目立つので……」
ヒーロースーツのヘルメットがあるせいで彼の表情はわからない。
「さっき、ジェイクの一人目の対戦相手に選ばれてね」
「え?」
「行ってくるよ。早く終わらせて、全部終わったら、また一緒にどこかに行かないかい?」
また一緒に。
「はい。楽しみにしてます!絶対勝ってくださいね!」
「もちろんだとも!」

では、とキースさんは片腕を上げて行ってしまった。
後ろ姿が見えなくなるまでその場に立ちつくした。
大丈夫、スカイハイは強いのだから。





トレーニングセンターのラウンジにはほかのヒーローが集まっていた。
「リツ!もどったのね。さっきスカイハイが」
ブルーローズの手招きに応じて隣にすわる。
「うん、さっきあったよ」
「ジェイクの能力はビームらしいの」
「それスカイハイは……」
「聞いてるよ、だからすぐに終わらせちゃうわよ」

バーナビー・ブルックスJr.の表情はかたい。本当は自分が行きたいのだろう。

ぐるりと待機している面々をみて気がつく。

「あれ?折紙サイクロンは……?」
折紙サイクロンの姿がない。

「ああそっか、リツいなかったもんね」
ブルーローズはうつむき気味のまま言った。

「ジェイクのアジトの場所を知るために潜入して……
ジェイクにばれて……」
思わず口を抑えた。潜入した者がバレるということは……その結末を想像して血の気が引いた。

「バーナビーとタイガーが……連れ帰って、まだ意識が戻らないの」
「そんなに重症なの……?」
「私は医者じゃないから……」

PDAを操作してまたアニエスさんを呼び出す。
『ダメよ』
繋がるなり開口一番拒否された。
「まだなにも言ってません」
『せめて日付が変わってからにしなさい』
「最後の発動から十二時間以上経ってます! なんとかなります! 折紙さんの病院教えてください!」
『これからどうなるかわからないのよ、温存しなさい』
「お願いします! 意識がない状態で救出されたのなら!折紙さんが何か情報を持っているかもしれないじゃないですか!
意識が回復できる程度なら大丈夫です!お願いします!」
『……無茶ばっかり。お兄さんにチクるわよ』
「なっ……今は兄は関係ありません!」

アニエスさんは半眼になる。
『アタシが睨まれるのよ。ごく個人的なことでもね、多少は仕事に差し支えんのよ特にあなたのお兄さんは怖いのよいろんな意味でーースカイハイが到着したわ』

その言葉に皆が一斉にモニターを見る。

『とにかく、スカイハイがジェイクをやっつけて終わりなんだからちょっと待ってなさい』

そう言って一方的に通信を切られてしまった。

「なんなのよ!あの余裕な感じ!」
スカイハイの登場を歯牙にもかけないジェイクにファイヤーエンブレムが悔しがる。

『シュテルンビルトの平和を脅かす』

「繰り返したわね」
「やり直した……」
ファイヤーエンブレムとパオリンが同時につぶやいた。
そのセリフ大事だったのかなキースさん……

『ゴタクはいいからさっさと来いよ』
『よかろう!! 気をつけろよ!! 今日の私は最大風速計測不能!!』

スカイハイはぴし、と敬礼し、スタジアムの上空から風の刃を作り出しジェイクへと放つ。

『ぐうっ……』

『ああっ ヒコーキちゃん、先制!! 連続攻撃でたたみかけてきますわぁっ!』

次から次へと風の刃がジェイクを襲う。煙と暴風でカメラはジェイクの姿がとらえられずどうなっているのかわからない。

『攻撃の暇を与えず倒してみせる!』
『ジェイク様、早くもピーンチ!!』

『スカーーーイ……』

スカイハイの頭上で凶暴な風の塊が膨らんでゆく。

『ハーーイ!!』

掛け声とともにその風の塊をジェイクに投げつけた。

『ああっ! ジェイク様がやられてしまいましたっごほっ』

土煙に女がむせた。

「うっし!」
「いいぞ!」

ロックバイソンさんとタイガーさんが喜ぶが、バーナビー・ブルックスJr.はひとり複雑な顔をしている。

やがて土煙が晴れ、大きなクレーターの中央にジェイクが倒れているのが見えた。

『相手が悪かったのだ。 さあ、おとなしく降参しろ』

『…………シビレルねぇキング』
ジェイクは片目を開いた。

『!?』

ジェイクは指を鳴らしそこからビームが放たれた。
『ぐああああっ!!』
スカイハイの体は弾かれ、バウンドしながらたたきつけられた。
マスクのフィンが折れ地面に刺さった。

「!」
皆一様に息をのむ。

「スカイ…ハイ……」
思わず口を手で抑えた。
うそだ。そんなはずない。スカイハイが負けるわけがない。

スカイハイのヘルメットのランプが点滅している。
『何故……あれだけの攻撃を受けてたっていられる』
『はあ?一つも攻撃なんか食らってねえんだよ!』

スカイハイは苦しげに身体を起こすと小さな空気のボールを作りだした。

それを撃つとジェイクには当たらずはじけた。

『くっ、』
『チェックメイト』

『…………ジェイクの能力はビームじゃない。バリアだ』

「え!?」
「バリアだと」

能力が違った。防御であるバリアを攻撃に転用するなんて。

『ヒィーーハァーーッ!!』
ジェイクは更にバリアを発射しスカイハイをなぶる。ついにはフェンスに激突しスカイハイは起き上がらなかった。



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