▼ 谷間にポイ
「これ!もしかして!」
トレーニングセンターでの休憩中、新聞を裂いて暇を潰していた。
ふと何か折ってみようかと気の向くまま折線をつけて折っていた。
「鶴とやっこさん、ツノ箱にカブト。これが星で、風船に手裏剣」
「手裏剣!」
和マニアな彼はいとも簡単に釣られた。
目をキラキラさせて前のめりに説明を聞く様はまるで小さな子供を相手にしているようで微笑ましい。
「あとはねー、紙飛行機と……」
ワクワクとしている彼の目の前に三角の折り紙を振り上げた。
「鉄砲!」
パン!!
勢い良く振り下ろすと小気味よい音と共に新聞が開いた。
「あれ、イワン?」
彼の姿がない。
「き、危険でござる……」
テーブルの上からか細い声がした。
よくよく見れば手裏剣が一つ増えている。
英字の手裏剣をつまむと、なんだかしっとりとしていた。
「いや、音が鳴るだけだから、アレ」
「折紙とは可憐なだけではなく恐ろしいものでござった……」
「いやいやいや、子供の遊びだから」
新聞をたたみ、また振り下ろす。パンパンと何度か繰り返すうち、折り紙の鉄砲は破けてしまった。
「おーい、イワーン戻りなよー」
手裏剣から戻ろうとしないイワンにふと悪戯ごころがムクムクと膨らんだ。
「戻らないなら、ぽーい」
胸の谷間に手裏剣を滑り込ませた。
とたん
「ちょっ!リツどのっ!待つでござるー!」
青い光とともに変身を解いたが一歩遅く、彼は私のTシャツに頭を突っ込んだ状態で私は床に押し潰されてしまった。
「はぁい、ってあら?お取り込み中?」
「あ、おはよーファイアーエンブレム」
彼の下から手を挙げて挨拶すれば、にやりと笑った彼女(彼?)は
ごゆっくり〜と出て行ってしまった。
「……イワン?」
うんともすんとも言わなくなってしまった彼の下から這い出ると、
顔を真っ赤にして目を回していた。
「ありゃ」
ちょっとからかいすぎたな、と反省する。
ごめんねイワン。
でも、こんないたずらするのはイワンにだけだよ。
とりあえず彼の情けなくも可愛い姿をスマートホンのカメラにパシャリとおさめた。
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