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▼ 失恋未遂

「リツ、恋とか、その……恋人はいるのかい?」

ファイアーエムブレムに背中を押され、ついに彼女に問いかけた。


「恋人?今はいないけど」

よし!心の中でガッツポーズをする。

彼女を目で追うようになり、彼女の好きなもの、嫌いなもの、趣味やプライベートなことが知りたいと思うようになった。

彼女に触れたいしそれ以上のあれやこれをしたい欲求に苛まれ、
ついに夢の中で……これ以上思い出すのは宜しくない。
こんなことを考えるのは彼女に失礼だし、ついに頭がおかしくなってしまったのだと悩みに悩み、ファイアーエムブレムに相談したところ、

この状態はいたって健康、普通の男そのもの、

そしてこれが『恋』なのだと診断された。

まずは第一歩。

恋を実らせるためには彼女に恋人がいるかどうかを探らねばならない。

「そうか!では恋をしているかい?」

「え?恋かあー。うーん……」

彼女は考え込んでしまった。

「たぶん、してる、かな……?」

首をひねりながら返された答えに愕然とした。

「こ、恋してるのかい?」

「うん、たぶんね」

なんと!リツの気持ちが他人に向いていてはどうしようもない!
私はいったいどうすれば……


「珍しいね、キースが恋バナなんて」

くすりと彼女は笑った。

珍しいだろうとも。こんな気持ちになったのはリツが初めてなのだから。

「キースは恋してるの?」

「!」

どう答えるべきだろう。いる、と本人を目の前にして言うのか、この恋を諦めていない、と言ってしまおうか。

「もー、そんな顔しないでよ」

眉間に彼女の指が当てられた。グリグリと刺激される。

自分は意気地無しだ。きっとこの機会を逃したら、彼女とこういう会話をすることはないだろう。

意を決して口を開く。

「わ、私も恋をしている!リツが好きだ!」

彼女はきょとんとしていた。

やっぱり、無理があったか……

やがて彼女は笑いだし、私の頭をぐしゃりとなでた。

「もー、キースったら。そういうのはデートとかしてもっと距離が近くなってから!」

でも、とリツは、付け足した。

「私もキースのこと好きだよ、ありがと」

真っ赤な顔で微笑む彼女。

多分わたしの顔も赤くなっているだろう。


「ねえ、次のオフの日、一緒にどこか行こうか」

そう言いながらはお互いの指を絡めた。


彼女には一生敵わない。




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